自殺系サイト

大城時風

文字の大きさ
5 / 18

赤い液-2-

しおりを挟む
翌日 某所

朝日はとっくに昇りきっているのに、カーテンが閉まったままの部屋はまだ薄暗く、少年はベッドの上ですやすやとリズムのいい寝息を立てていた。
しかし、ドアをぶち破る勢いで部屋に乱入してきた兄によってそれを妨害される。
少年は眠たそうに眼を擦り身体を起こしながら、開いた扉の方へ視線を向けた。

「ごめん、まだ寝てたんだな」

謝罪はしたものの、あまり悪びれている様子のない兄に少年は小さく舌打ちをする。

「謝るなら起こすなよ」

兄によって睡眠を妨害されてしまったことで少年は酷く不機嫌になったが、「でも、もう10時過ぎてるぞ」と言われてしまえば少年とて返す言葉はない。
黙り込んでしまった弟のベッドに歩み寄りながら、兄は静かに微笑んだ。

「なあ、隆志はって知ってるか」

少年は眉頭をピクリと動かした。

「知らない」

少年の言葉に兄は少し疑り深い目をしていたが、弟を信じることにしたのか「そうか」と言った。

「色々学校で噂が飛び交ってるんだ。そのサイトの掲示板に何か書いたら殺されるとか。だから、中学でも何か噂されてるかと思って」

少年は馬鹿らしいと笑った。
そのサイトは少年自身が作ったものなのだ。
悪戯で書き込んだとしても殺されることなんてあるはずがない。
時々、暇つぶしの為に少年自らが志願者に会いに行くとしても、その後どうこうなるということは一切なかった。
殺人はもちろんのこと、本当に命を絶つ者さえもいなかったのだ。
そもそも、検索ワードにすぐに引っかかってしまう自殺サイトなんてただのお飾りということはならわかっているはずだ。

「そこの管理人のこととか知ってんの?」

少年の質問に、兄は首を横に振る。
流石に自分の兄にバレて気持ちのいいものでもない。
表情には現さないものの、少年はホッと胸をなで下ろした。

「けど、不思議なもんだな。こんなサイトとかみんなどっから引っ張ってくるんだろう」

兄が少年のベッドに腰を下ろしながらポツリと言った。

「知らねーよ…」

眉間に皺を寄せながら目を細めて睨んでくる弟に、兄は肩を落とした。

「お前、今日は一段と機嫌が悪いのな」
「あのなあ、休みの日に無理矢理起こされて機嫌が悪くならないヤツがどこにいるんだよ」
「あーあ、お前も生意気になったもんだな。小さい頃は『お兄ちゃんお兄ちゃん』で可愛かったのに」

4,5歳の頃、兄が手を引っ張って歩いてくれた思い出が脳裏を過る。
あの頃は、泣き虫でいつも兄に着いて回ってばかりだったなと、少年は目を細めた。

「この歳になってそんな呼び方してたらキモイだろ…」

少年は頭を掻きながら、ベッドから立ち上がる。

「いいじゃんか。仲がいい兄弟だと思われて」
「ブラコンか。弟大好きか」
「否定はしない」
「いや…、否定しろよ」

心底蔑んだ顔を向けてくる弟の背中をポンポンと撫でると、兄もベッドから立ち上がる。
目線を見る限り弟との身長差は5センチ程になっており、既に身長が止まってしまっている兄は複雑な思いで苦笑を浮かべた。

「あ、そうそう、お前に食ってほしいものがあんだけど」

思い出したように兄が言うと、少年は首を傾げた。

「…真っ赤な料理」

兄は不敵に笑いながらそう言うと、部屋を出て行った。

「真っ赤な料理…ねえ」

兄がをキムチの汁だとか言っていたことを思い出して、少年は失笑した―――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

怪異の忘れ物

木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。 さて、Webコンテンツより出版申請いただいた 「怪異の忘れ物」につきまして、 審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。 ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。 さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、 出版化は難しいという結論に至りました。 私どもはこのような結論となりましたが、 当然、出版社により見解は異なります。 是非、他の出版社などに挑戦され、 「怪異の忘れ物」の出版化を 実現されることをお祈りしております。 以上ご連絡申し上げます。 アルファポリス編集部 というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。 www.youtube.com/@sinzikimata 私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。 いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

奇談

hyui
ホラー
真相はわからないけれど、よく考えると怖い話…。 そんな話を、体験談も含めて気ままに投稿するホラー短編集。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...