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大城時風

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謝罪

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一ヶ月間安静にした後に徐々に歩くリハビリを開始することになり、何度目かのリハビリを無事に終えて病室に戻ると二度と見たくもない程…いや、殺してしまいたいほどに憎たらしい顔があった。
看護師に戻ってくるまで部屋の中でいていいと許可をもらってここにいると話していたが、心底どうでもいい。
転校することで鳴りを潜めていた復讐心を必死に抑え込む。

「…何の用だよ」

俺が車いすからやっとの思いでベッドへ移り、倒れこみながら眼前の渡辺剛志を睨みつける。
しかも、どうやってここに俺が入院しているという情報を手に入れたんだよ。
…こんな脚じゃ、何かされても抵抗も出来やしない。
俺が脚を擦っていると、渡辺が俺に向かって深々と頭を下げた。

「…何のつもり」

何か企んでいるのかと、俺は渡辺の下げられた頭上に向かって声をかけた。

「…ごめん」
「脚のことはお前関係ないけど」

脚のことを言っているわけではないのは容易にわかった。
の話を謝罪していることはわかるが、何故今このタイミングなんだ。
俺は一度真由美さんに話した通り、渡辺に復讐を仕掛けた。
あの時は1ミリも反省の欠片も見えなかったし、謝罪されたとしても俺が今後こいつを許すことはない。

「なんで俺が入院してるって知ってんの?」
「田村先生と…偶然会って、聞いた」

…また田村だ。
あいつはどこまで俺を苦しめれば気が済むんだ。

「許されないってわかってる。けど、謝りたかった。ずっと、謝りたかったんだ」
「お前、2年前全然反省の色見せてなかったじゃん」

俺は横目でちらりと渡辺を見た。
頭を下げたまま動こうとしない。

「…頭上げろよ」
「いやだ」
「いいから上げろ!」

なおも頭を上げようとしないこいつに苛立って声が荒れる。
俺は今更頭を下げて「ごめん」なんて言われても何も響かない。
何も感じやしない、ただこいつへの憎悪が増すだけだ。

「俺の罪は、頭を下げる程度じゃ許されない。それくらいわかってるんだ…。とんでもないことをしてしまったって」
「どうでもいい。今更そんなこと言われたって何も思わない。"はい、ごめんなさい"なんて言葉都合いいにもほどがあるんだよ」

まあ、お前が謝ってきたのは予想外ではあったけど。
最近まで少し平和ボケしていたが、俺はこいつらへの復讐をやめたわけじゃない。
のほほんと暮らすこいつらを陰で追い詰めてあわよくば自殺なんてしてくれればいいなとずっと思っていた。
物理的に距離を開けたところで俺の心が癒えることなんてない。
こいつらへ復讐をやり遂げてそれが癒えるのかと言われたら、それはNoかもしれないが、そのまま何もしないよりはずっといい。

「お前らがいなければ…俺はこうならなかったのに…」

俺がぼそりと呟いた言葉が届いたのか、渡辺はピクリと反応した。

「帰ってくれ」

俺の声を聞いて渡辺は漸く頭を上げた。
手が少し震えている。

「…わかった。今日は帰る。これだけ言わせてくれ。からの伝言。"学校に戻ってきてほしい"って」

冬斗というのは、俺の引っ越す前の地元の幼馴染だ。
斎藤冬斗《さいとうふゆと》といって俺が中学を転校するまではずっと一緒に行動していた。
小学生の頃は…、クラスが別々なことと俺が隠していたこともあっていじめに気付けず「どうして言わなかったのか」と相当怒られたのを思い出した。
転校と同時に当時の連絡先は全て削除したために俺との連絡手段がなくてこいつに伝言を頼んだんだろう。

「戻ってきてほしいか…」

しかし、俺が転校した理由には冬斗も関係していた。
そして、…。

「渡辺、俺は戻らない…。もう、戻らない」

そういうと渡辺は目を細めて頷いた。
俺はもう大切な人が俺のせいで傷つくところは見たくない。
俺がいないことであいつらが平穏に過ごせるなら、俺は喜んで身を引く。
例えそのせいで復讐がしにくくなったとしても。

「わかった。伝えとく。…なあ、綾瀬」
「なんだよ」
「怪我、早く治るといいな」

冷たい風が俺と渡辺の髪を揺らす。
真夏だと思っていた季節はいつの間にか幾分か過ごしやすい季節になっていた。
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