14 / 18
謝罪
しおりを挟む
一ヶ月間安静にした後に徐々に歩くリハビリを開始することになり、何度目かのリハビリを無事に終えて病室に戻ると二度と見たくもない程…いや、殺してしまいたいほどに憎たらしい顔があった。
看護師に戻ってくるまで部屋の中でいていいと許可をもらってここにいると話していたが、心底どうでもいい。
転校することで鳴りを潜めていた復讐心を必死に抑え込む。
「…何の用だよ」
俺が車いすからやっとの思いでベッドへ移り、倒れこみながら眼前の渡辺剛志を睨みつける。
しかも、どうやってここに俺が入院しているという情報を手に入れたんだよ。
…こんな脚じゃ、何かされても抵抗も出来やしない。
俺が脚を擦っていると、渡辺が俺に向かって深々と頭を下げた。
「…何のつもり」
何か企んでいるのかと、俺は渡辺の下げられた頭上に向かって声をかけた。
「…ごめん」
「脚のことはお前関係ないけど」
脚のことを言っているわけではないのは容易にわかった。
過去の話を謝罪していることはわかるが、何故今このタイミングなんだ。
俺は一度真由美さんに話した通り、渡辺に復讐を仕掛けた。
あの時は1ミリも反省の欠片も見えなかったし、謝罪されたとしても俺が今後こいつを許すことはない。
「なんで俺が入院してるって知ってんの?」
「田村先生と…偶然会って、聞いた」
…また田村だ。
あいつはどこまで俺を苦しめれば気が済むんだ。
「許されないってわかってる。けど、謝りたかった。ずっと、謝りたかったんだ」
「お前、2年前全然反省の色見せてなかったじゃん」
俺は横目でちらりと渡辺を見た。
頭を下げたまま動こうとしない。
「…頭上げろよ」
「いやだ」
「いいから上げろ!」
なおも頭を上げようとしないこいつに苛立って声が荒れる。
俺は今更頭を下げて「ごめん」なんて言われても何も響かない。
何も感じやしない、ただこいつへの憎悪が増すだけだ。
「俺の罪は、頭を下げる程度じゃ許されない。それくらいわかってるんだ…。とんでもないことをしてしまったって」
「どうでもいい。今更そんなこと言われたって何も思わない。"はい、ごめんなさい"なんて言葉都合いいにもほどがあるんだよ」
まあ、お前が謝ってきたのは予想外ではあったけど。
最近まで少し平和ボケしていたが、俺はこいつらへの復讐をやめたわけじゃない。
のほほんと暮らすこいつらを陰で追い詰めてあわよくば自殺なんてしてくれればいいなとずっと思っていた。
物理的に距離を開けたところで俺の心が癒えることなんてない。
こいつらへ復讐をやり遂げてそれが癒えるのかと言われたら、それはNoかもしれないが、そのまま何もしないよりはずっといい。
「お前らがいなければ…俺はこうならなかったのに…」
俺がぼそりと呟いた言葉が届いたのか、渡辺はピクリと反応した。
「帰ってくれ」
俺の声を聞いて渡辺は漸く頭を上げた。
手が少し震えている。
「…わかった。今日は帰る。これだけ言わせてくれ。冬斗からの伝言。"学校に戻ってきてほしい"って」
冬斗というのは、俺の引っ越す前の地元の幼馴染だ。
斎藤冬斗《さいとうふゆと》といって俺が中学を転校するまではずっと一緒に行動していた。
小学生の頃は…、クラスが別々なことと俺が隠していたこともあっていじめに気付けず「どうして言わなかったのか」と相当怒られたのを思い出した。
転校と同時に当時の連絡先は全て削除したために俺との連絡手段がなくてこいつに伝言を頼んだんだろう。
「戻ってきてほしいか…」
しかし、俺が転校した理由には冬斗も関係していた。
そして、もう1人…。
「渡辺、俺は戻らない…。もう、戻らない」
そういうと渡辺は目を細めて頷いた。
俺はもう大切な人が俺のせいで傷つくところは見たくない。
俺がいないことであいつらが平穏に過ごせるなら、俺は喜んで身を引く。
例えそのせいで復讐がしにくくなったとしても。
「わかった。伝えとく。…なあ、綾瀬」
「なんだよ」
「怪我、早く治るといいな」
冷たい風が俺と渡辺の髪を揺らす。
真夏だと思っていた季節はいつの間にか幾分か過ごしやすい季節になっていた。
看護師に戻ってくるまで部屋の中でいていいと許可をもらってここにいると話していたが、心底どうでもいい。
転校することで鳴りを潜めていた復讐心を必死に抑え込む。
「…何の用だよ」
俺が車いすからやっとの思いでベッドへ移り、倒れこみながら眼前の渡辺剛志を睨みつける。
しかも、どうやってここに俺が入院しているという情報を手に入れたんだよ。
…こんな脚じゃ、何かされても抵抗も出来やしない。
俺が脚を擦っていると、渡辺が俺に向かって深々と頭を下げた。
「…何のつもり」
何か企んでいるのかと、俺は渡辺の下げられた頭上に向かって声をかけた。
「…ごめん」
「脚のことはお前関係ないけど」
脚のことを言っているわけではないのは容易にわかった。
過去の話を謝罪していることはわかるが、何故今このタイミングなんだ。
俺は一度真由美さんに話した通り、渡辺に復讐を仕掛けた。
あの時は1ミリも反省の欠片も見えなかったし、謝罪されたとしても俺が今後こいつを許すことはない。
「なんで俺が入院してるって知ってんの?」
「田村先生と…偶然会って、聞いた」
…また田村だ。
あいつはどこまで俺を苦しめれば気が済むんだ。
「許されないってわかってる。けど、謝りたかった。ずっと、謝りたかったんだ」
「お前、2年前全然反省の色見せてなかったじゃん」
俺は横目でちらりと渡辺を見た。
頭を下げたまま動こうとしない。
「…頭上げろよ」
「いやだ」
「いいから上げろ!」
なおも頭を上げようとしないこいつに苛立って声が荒れる。
俺は今更頭を下げて「ごめん」なんて言われても何も響かない。
何も感じやしない、ただこいつへの憎悪が増すだけだ。
「俺の罪は、頭を下げる程度じゃ許されない。それくらいわかってるんだ…。とんでもないことをしてしまったって」
「どうでもいい。今更そんなこと言われたって何も思わない。"はい、ごめんなさい"なんて言葉都合いいにもほどがあるんだよ」
まあ、お前が謝ってきたのは予想外ではあったけど。
最近まで少し平和ボケしていたが、俺はこいつらへの復讐をやめたわけじゃない。
のほほんと暮らすこいつらを陰で追い詰めてあわよくば自殺なんてしてくれればいいなとずっと思っていた。
物理的に距離を開けたところで俺の心が癒えることなんてない。
こいつらへ復讐をやり遂げてそれが癒えるのかと言われたら、それはNoかもしれないが、そのまま何もしないよりはずっといい。
「お前らがいなければ…俺はこうならなかったのに…」
俺がぼそりと呟いた言葉が届いたのか、渡辺はピクリと反応した。
「帰ってくれ」
俺の声を聞いて渡辺は漸く頭を上げた。
手が少し震えている。
「…わかった。今日は帰る。これだけ言わせてくれ。冬斗からの伝言。"学校に戻ってきてほしい"って」
冬斗というのは、俺の引っ越す前の地元の幼馴染だ。
斎藤冬斗《さいとうふゆと》といって俺が中学を転校するまではずっと一緒に行動していた。
小学生の頃は…、クラスが別々なことと俺が隠していたこともあっていじめに気付けず「どうして言わなかったのか」と相当怒られたのを思い出した。
転校と同時に当時の連絡先は全て削除したために俺との連絡手段がなくてこいつに伝言を頼んだんだろう。
「戻ってきてほしいか…」
しかし、俺が転校した理由には冬斗も関係していた。
そして、もう1人…。
「渡辺、俺は戻らない…。もう、戻らない」
そういうと渡辺は目を細めて頷いた。
俺はもう大切な人が俺のせいで傷つくところは見たくない。
俺がいないことであいつらが平穏に過ごせるなら、俺は喜んで身を引く。
例えそのせいで復讐がしにくくなったとしても。
「わかった。伝えとく。…なあ、綾瀬」
「なんだよ」
「怪我、早く治るといいな」
冷たい風が俺と渡辺の髪を揺らす。
真夏だと思っていた季節はいつの間にか幾分か過ごしやすい季節になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる