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第2話
英雄の称号4
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ルシアンが怒りの形相で風を蹴り、空を駆け上がってくる。俺は繁茂させた蔓植物にリチェル姫をあずけ、遠ざけた。
彼女を包んだ植物の球に向かって火炎を放とうとするのを、大量の水をぶつけ、無効化する。
奴は恐ろしいほどに本気だった。手加減がない。
「ルシアン、やめろ! 殺す気か」
俺は次に備えて意識を引き絞った。けれどルシアンは急に悪戯に笑って、それにあっけにとられているうちに、どんどん近付いてきて、ぶつかるように俺に抱きついてきた。
「逃がさないよ、ブラッド」
頬にルシアンの髪があたる。背中にがっつりと腕をまわされる。
それで俺は、はっと正気に返った。
しまった!!!
見回せば、王宮から出てきた人々が、鈴生りになってこちらを見物している。その多さに、消えてなくなりたくなった。
あれほど。あ・れ・ほ・ど、苦手ながら、俺は人前では、火と風の魔法しか使わないようにしていた。ルシアンにも、二人だけの時以外は、水、木、土の魔法しか使わないようにさせてきた。苦手を克服する練習だとか言い聞かせて。
そうでもしなければ、父親(前世の俺)そっくりの容姿で名前まで受け継いだ俺は、そのまま次の守護魔法使いとしてまつりあげられただろうし、その父親と共に死んだ劫火の魔人と同じ能力を持つルシアンには、黒い噂がついてまわったことだろう。
だから、努力に努力を重ねて、忍耐に忍耐も重ねて、やり過ごしてきたというのに。
この惨状をどうしてくれよう。今までの苦労が、全部水の泡だ。
俺たちが、それぞれ一人で使った魔法は、ケタ外れのものだった。庭園がほぼ半壊している。ごまかそうにも、ごまかしようがない。
「リチェル姫もグルか」
俺は呻きながら尋ねた。
「違うよ。あの女が兄さんを探しているって聞いたから、追いかけてきただけ」
「ほー、そうか。おまえたち、阿吽の呼吸だな」
イヤミったらしく言ってやると、ルシアンはちょっと離れて俺を見た。
「妬いてる?」
「まさか。呆れてんだよ」
そして、腹立たしいんだよ!
おまえも、あの姫も、なによりまぬけな、この俺のことが一番な!!
俺は、いつまでたっても慣れぬ風の魔法を使って、どんっとルシアンを押しやった。
「おまえとは口も利きたくない」
「やだ、ブラッド!」
目尻を下げて、情けない顔をする弟を睨みつける。
「おまえの力で、この庭園を元に戻せ。それができたら、言い訳ぐらいは聞いてやる」
「えっ、ええっ!?」
大変だろうよ。なにしろ、適性低い魔法をてんこ盛りで使わなきゃならないしな。
「それまでは、声、かけんなよ」
言い捨てて、背をひるがえした。それから、下から土を盛り上げて階段を作りだす。もちろん嫌がらせだ。
いつもなら、ブラッドとか兄さんとか許してとかもうしないとか、わあわあ騒ぐのを聞き流すところだが、激怒状態で声をかけるなと言いわたしたので、ルシアンは言いつけを守って無言だった。
あわあわしている気配は背後に感じたが、知るか。くそ、これからどうするんだよ。
『英雄』なんて、これ以上、お断りなのに。
憤ろしくてしかたなかった。だけど、その分、足が軽く感じて、俺は足元の土を蹴散らかして下りた。
ちくしょー。仕切りなおしだ。
俺はくるりと振り向いて、
「ルシアン! リチェル姫!」
それぞれの名を呼びながら、一人一人に指をつきつけてやった。
「ただじゃすまさないからな! 覚悟しろよ!」
ふん、と息を吐いて、足音荒く庭園を後にする。
未来は再び不確実な混沌に戻ってしまった。
それでも、昨日までよりはいくぶんましな明日を、探すことができる気がした。
彼女を包んだ植物の球に向かって火炎を放とうとするのを、大量の水をぶつけ、無効化する。
奴は恐ろしいほどに本気だった。手加減がない。
「ルシアン、やめろ! 殺す気か」
俺は次に備えて意識を引き絞った。けれどルシアンは急に悪戯に笑って、それにあっけにとられているうちに、どんどん近付いてきて、ぶつかるように俺に抱きついてきた。
「逃がさないよ、ブラッド」
頬にルシアンの髪があたる。背中にがっつりと腕をまわされる。
それで俺は、はっと正気に返った。
しまった!!!
見回せば、王宮から出てきた人々が、鈴生りになってこちらを見物している。その多さに、消えてなくなりたくなった。
あれほど。あ・れ・ほ・ど、苦手ながら、俺は人前では、火と風の魔法しか使わないようにしていた。ルシアンにも、二人だけの時以外は、水、木、土の魔法しか使わないようにさせてきた。苦手を克服する練習だとか言い聞かせて。
そうでもしなければ、父親(前世の俺)そっくりの容姿で名前まで受け継いだ俺は、そのまま次の守護魔法使いとしてまつりあげられただろうし、その父親と共に死んだ劫火の魔人と同じ能力を持つルシアンには、黒い噂がついてまわったことだろう。
だから、努力に努力を重ねて、忍耐に忍耐も重ねて、やり過ごしてきたというのに。
この惨状をどうしてくれよう。今までの苦労が、全部水の泡だ。
俺たちが、それぞれ一人で使った魔法は、ケタ外れのものだった。庭園がほぼ半壊している。ごまかそうにも、ごまかしようがない。
「リチェル姫もグルか」
俺は呻きながら尋ねた。
「違うよ。あの女が兄さんを探しているって聞いたから、追いかけてきただけ」
「ほー、そうか。おまえたち、阿吽の呼吸だな」
イヤミったらしく言ってやると、ルシアンはちょっと離れて俺を見た。
「妬いてる?」
「まさか。呆れてんだよ」
そして、腹立たしいんだよ!
おまえも、あの姫も、なによりまぬけな、この俺のことが一番な!!
俺は、いつまでたっても慣れぬ風の魔法を使って、どんっとルシアンを押しやった。
「おまえとは口も利きたくない」
「やだ、ブラッド!」
目尻を下げて、情けない顔をする弟を睨みつける。
「おまえの力で、この庭園を元に戻せ。それができたら、言い訳ぐらいは聞いてやる」
「えっ、ええっ!?」
大変だろうよ。なにしろ、適性低い魔法をてんこ盛りで使わなきゃならないしな。
「それまでは、声、かけんなよ」
言い捨てて、背をひるがえした。それから、下から土を盛り上げて階段を作りだす。もちろん嫌がらせだ。
いつもなら、ブラッドとか兄さんとか許してとかもうしないとか、わあわあ騒ぐのを聞き流すところだが、激怒状態で声をかけるなと言いわたしたので、ルシアンは言いつけを守って無言だった。
あわあわしている気配は背後に感じたが、知るか。くそ、これからどうするんだよ。
『英雄』なんて、これ以上、お断りなのに。
憤ろしくてしかたなかった。だけど、その分、足が軽く感じて、俺は足元の土を蹴散らかして下りた。
ちくしょー。仕切りなおしだ。
俺はくるりと振り向いて、
「ルシアン! リチェル姫!」
それぞれの名を呼びながら、一人一人に指をつきつけてやった。
「ただじゃすまさないからな! 覚悟しろよ!」
ふん、と息を吐いて、足音荒く庭園を後にする。
未来は再び不確実な混沌に戻ってしまった。
それでも、昨日までよりはいくぶんましな明日を、探すことができる気がした。
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