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第7話
ただいま2
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エンに、タダ飯食わせる余裕はないから、手下どもの有効利用方法を考えて、近日中に奏上しろと宿題を出され、とりあえず、奴らは軍の預かりになった。
ついでに適当に武芸も仕込んでおいてくれと、軍の担当者に頼んでおく。
手下どもには、金品は駄目だが、技術と情報は盗めるだけ盗んでこいとはっぱをかけておいた。それらを身につけておいて損はないことを、奴らも理解しているから、励むはずだ。
王都詰めの精鋭軍をだし抜けるようになれば、まあ、どこへ行っても生き抜いていけるだろう。
ちなみに、賭けで兵士から金を巻き上げるのは良しとしておいた。小遣い稼ぎは自分でやってほしい。借金はこりごりだった。
そんな感じで手下どもの衣食住の始末をつけ、俺は真理の塔へ向かった。
昼日中のせいか、誰とも会わないままに、五か月ぶりに入った自分の部屋は、相変わらず綺麗に掃除され、風を通すために窓も開け放たれていた。
履きっぱなしで少々臭うブーツを蹴り飛ばし、埃っぽい衣服を脱ぎ捨て、湯を浴びに行くのが面倒で、その場で水の魔法を使って適当に体の汚れを落とす。それから気楽な服装に着替え、部屋に届けられていた荷物から土産をあさって、部屋を出た。
ジジイの研究室を覗いて誰もいないことを確認した。部屋はきれいに修理されていた。ありがたい。これでいきなり、完徹で原状回復しろとか、ジジイに叱られないですむ。
俺はそこに土産の大半を置き、ロズニスをあずけたランジエの研究室へ行った。
すこぶる常識的に扉をノックし、ブラッドだと名乗る。しかし、それからいっこうに取次ぎが出てこない。
ていうか、誰が出るかで揉めている声が外まで聞こえてるんデスが。失礼極まりねーな。
だからどうして、襲撃に来たって話になってるのか、そっちの説明のが欲しいデス。俺に喧嘩を売られるようなこと、何かしたのかって気になるだろうが?
慌てて黙るように叱る声がして、ランジエ自身が迎え入れに出向いてきた。
一通り挨拶を交わし、中に入るように誘われるが、こんな中に入っていくのは面倒くさい。
敷居を跨ぐことなく、ロカンで手に入れた珍しい鉱物を含んだ石を渡し、ロズニスをあずかってくれた礼を言った。
「で、ロズニスは? 連れて帰りたいんだが」
「はい。おります。あそこで、魔法陣の作成を」
ランジエが扉を大きく開き、右手の奥の方を指し示す。そこには、椅子から立ち上がったロズニスが、両手を胸元できつく握り合わせ、暗い思いつめた表情で俺を見ていた。
いつもの、螺子が全部ゆるんでるような能天気さが欠片もない。
「あいつ、どこか具合でも悪いのか」
俺は思わずランジエに聞いた。
「いえ、さきほどのお茶の時間には、人の三倍食べておりましたが。どうしたんでしょうか」
ランジエもいぶかしげにして、どうぞこちらへ、と俺を呼び、一緒にロズニスへと近付いた。
「ロズニス」
呼びかけると、ロズ二スは、一歩、二歩と後退った。でも、
「お帰りなさいー、ブラッド様」
ちゃんと挨拶はしてくれる。
「どうしたんだ、おまえ。腹の具合でも悪いんじゃないのか」
「そんなんじゃー、ありません~」
むうっとして、恨みがましい目つきになる。それに俺は、ほっとした。さっきよりは、よっぽどいつものロズニスらしい。
「じゃあ、帰るぞ。お世話になった方々に、挨拶しろ」
「嫌です。リュスノー先生と帰ります」
ロズニスは本格的に拗ねた顔になって、ぷいと横を向いた。
「師匠は、後始末で明日までかかりきりだ。これ以上人様に迷惑はかけられん」
「迷惑なんかー、かけてないですもん」
俺はランジエに視線を向けた。本当か?
「ええ、ずっとおとなしく魔法陣の作成をしていましたよ」
わずかな苦笑とともに、テーブルの上の大ぶりな箱を取り、中を見せてくれた。
「五ヶ月かかって彼女がつくったものです」
大小取り混ぜてじゃらじゃらみっちり入っているそれに仰天する。
「おまえ、これ、本当に一人でやったのか!?」
「やりましたよー。他のことするなってー、ブラッド様がー言ったんじゃーないですかー」
ああ、これか。こんなの五ヶ月も毎日毎日やっていたら、そりゃあ拗ねたくもなるよな。
「悪かったよ。こんなに長くかかると思わなくて。これは頑張ったな」
ロズニスにとっては、とんでもない苦業だっただろう。きっと毎日、目のまわりをインクで真黒にしていたに違いない。
顔を洗ってこいと叱りつけていた頃の彼女の顔が思い浮かび、俺は笑いがこみあげてくるのを噛み殺した。
女を笑ってはいけない。たとえどんなに幼くてもだ。それで前世で何度、くやしがった妹に容赦ない報復をくらったことか。
「そのかわり、土産はたくさん買ってきたぞ。さあ、帰ろう」
ついでに適当に武芸も仕込んでおいてくれと、軍の担当者に頼んでおく。
手下どもには、金品は駄目だが、技術と情報は盗めるだけ盗んでこいとはっぱをかけておいた。それらを身につけておいて損はないことを、奴らも理解しているから、励むはずだ。
王都詰めの精鋭軍をだし抜けるようになれば、まあ、どこへ行っても生き抜いていけるだろう。
ちなみに、賭けで兵士から金を巻き上げるのは良しとしておいた。小遣い稼ぎは自分でやってほしい。借金はこりごりだった。
そんな感じで手下どもの衣食住の始末をつけ、俺は真理の塔へ向かった。
昼日中のせいか、誰とも会わないままに、五か月ぶりに入った自分の部屋は、相変わらず綺麗に掃除され、風を通すために窓も開け放たれていた。
履きっぱなしで少々臭うブーツを蹴り飛ばし、埃っぽい衣服を脱ぎ捨て、湯を浴びに行くのが面倒で、その場で水の魔法を使って適当に体の汚れを落とす。それから気楽な服装に着替え、部屋に届けられていた荷物から土産をあさって、部屋を出た。
ジジイの研究室を覗いて誰もいないことを確認した。部屋はきれいに修理されていた。ありがたい。これでいきなり、完徹で原状回復しろとか、ジジイに叱られないですむ。
俺はそこに土産の大半を置き、ロズニスをあずけたランジエの研究室へ行った。
すこぶる常識的に扉をノックし、ブラッドだと名乗る。しかし、それからいっこうに取次ぎが出てこない。
ていうか、誰が出るかで揉めている声が外まで聞こえてるんデスが。失礼極まりねーな。
だからどうして、襲撃に来たって話になってるのか、そっちの説明のが欲しいデス。俺に喧嘩を売られるようなこと、何かしたのかって気になるだろうが?
慌てて黙るように叱る声がして、ランジエ自身が迎え入れに出向いてきた。
一通り挨拶を交わし、中に入るように誘われるが、こんな中に入っていくのは面倒くさい。
敷居を跨ぐことなく、ロカンで手に入れた珍しい鉱物を含んだ石を渡し、ロズニスをあずかってくれた礼を言った。
「で、ロズニスは? 連れて帰りたいんだが」
「はい。おります。あそこで、魔法陣の作成を」
ランジエが扉を大きく開き、右手の奥の方を指し示す。そこには、椅子から立ち上がったロズニスが、両手を胸元できつく握り合わせ、暗い思いつめた表情で俺を見ていた。
いつもの、螺子が全部ゆるんでるような能天気さが欠片もない。
「あいつ、どこか具合でも悪いのか」
俺は思わずランジエに聞いた。
「いえ、さきほどのお茶の時間には、人の三倍食べておりましたが。どうしたんでしょうか」
ランジエもいぶかしげにして、どうぞこちらへ、と俺を呼び、一緒にロズニスへと近付いた。
「ロズニス」
呼びかけると、ロズ二スは、一歩、二歩と後退った。でも、
「お帰りなさいー、ブラッド様」
ちゃんと挨拶はしてくれる。
「どうしたんだ、おまえ。腹の具合でも悪いんじゃないのか」
「そんなんじゃー、ありません~」
むうっとして、恨みがましい目つきになる。それに俺は、ほっとした。さっきよりは、よっぽどいつものロズニスらしい。
「じゃあ、帰るぞ。お世話になった方々に、挨拶しろ」
「嫌です。リュスノー先生と帰ります」
ロズニスは本格的に拗ねた顔になって、ぷいと横を向いた。
「師匠は、後始末で明日までかかりきりだ。これ以上人様に迷惑はかけられん」
「迷惑なんかー、かけてないですもん」
俺はランジエに視線を向けた。本当か?
「ええ、ずっとおとなしく魔法陣の作成をしていましたよ」
わずかな苦笑とともに、テーブルの上の大ぶりな箱を取り、中を見せてくれた。
「五ヶ月かかって彼女がつくったものです」
大小取り混ぜてじゃらじゃらみっちり入っているそれに仰天する。
「おまえ、これ、本当に一人でやったのか!?」
「やりましたよー。他のことするなってー、ブラッド様がー言ったんじゃーないですかー」
ああ、これか。こんなの五ヶ月も毎日毎日やっていたら、そりゃあ拗ねたくもなるよな。
「悪かったよ。こんなに長くかかると思わなくて。これは頑張ったな」
ロズニスにとっては、とんでもない苦業だっただろう。きっと毎日、目のまわりをインクで真黒にしていたに違いない。
顔を洗ってこいと叱りつけていた頃の彼女の顔が思い浮かび、俺は笑いがこみあげてくるのを噛み殺した。
女を笑ってはいけない。たとえどんなに幼くてもだ。それで前世で何度、くやしがった妹に容赦ない報復をくらったことか。
「そのかわり、土産はたくさん買ってきたぞ。さあ、帰ろう」
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