しかたなく英雄的最後を迎えた魔法使いの受難

伊簑木サイ

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第7話

ただいま3

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 ロズ二スは顔をそむけたまま、横目で俺を見た。唇が尖っている。目つきも鋭い。まだ怒っているらしい。

「そ、そーやってー、もので釣ろうとしても、駄目ですー。私はー、ひっかかりませんからー」

 俺も少々むっとする。謝って、こっちから折れてるのに、ちっともなびく素振りが見られない。それに、もので釣ろうとは心外だ。

「約束したから、買ってきただけだ。行った町ごとに、おまえはどうしているかと心配しながら選んだものだ。そんなつもりで買ってきたんじゃない」

 俺は溜息をついた。

「わかった。気がすむまでここにいればいいだろう」

 そしてランジエに相談をもちかけた。

「すまないが、師匠の手があくまで、もうしばらく彼女を頼めるか」
「それはかまいませんが。……ロズニス、今日は朝からそわそわしていたじゃないか。何を意地を張っているんだい?」
「意地なんか、張ってないですー」

 かたくなな態度は崩れない。

「もういい。好きにしろ」

 俺は踵を返した。まったく、そこまで怒ることないだろう。
 根に持った女をどうこうするのは無理だ。こうなったら、放っておくしかない。

「ブ、ブラッド様が、いけないんですからねっ」

 背中に怒鳴りつけられて、何事かと振り返る。
 涙目で足を踏ん張って、ロズニスは俺を睨みつけていた。

「こ、この、男ったらしー!!! 不潔ですーっ!!!!」

 男ったらし!?
 驚きのあまりかたまって声も出ない俺の横を、猛烈な勢いで駆け抜けていく。扉がドバーンと開け放たれ、バタバタと廊下を走る音が遠のいていった。

「な……、何、なんだ?」

 呆然として周囲の人間に視線をめぐらせれば、なぜか、特に男が目を伏せてそっと後ろに下がっていった。ランジエさえも目を逸らしている。
 こいつら、いったい、何を知っている?

「ランジエ?」
「あー、あの、ロズニスを叱らないでやってください。おかしな噂が流れてまして。たぶん、それを真に受けてしまったのかと」

 嫌な予感に何も聞きたくなかったが、それでもこうなってしまえば、聞き出さないわけにもいかない。

「噂の内容は」
「は。あくまでも噂ですので」

 言いにくそうに渋る様子に、悪い予感がますますふくらんだ。

「いいから、言え」
「……ルシアン様のご婚約に傷心なさったブラッド様が、お」

 と言ったきり言い淀む。お、なんだ。
 あれか。あれなんだな。

「男か」
「……はい。それを、その、あさり、に、出かけられた、と」

 聞いたとたん、俺はその場でしゃがみこんだ。立っていられなかった。そのまま床にめり込んでしまいたかった。
 どこまで恐ろしい話になってんだ、ちくしょうめ。
 おう。なんか、目から汗が出てきやがったゼ。

 俺は困惑するランジエたちのど真ん中で、脱力のあまり、どうしても立てなかったのだった。
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