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第7話
片割れ1
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さて。説教タイムだ。
言いつけたこともきちんとやらないで、こっそり後をついてきて、挙句の果てに他所様の庭を破壊するとは、どういう了見だ。こってり絞ってやらないと気がすまない。
俺は二人を引き連れて自分の部屋に入ったところで、ソファに直れ、と厳しい声で告げた。というのに、
「はいはいはいはい、わかったから、まずはベッドに入って」
肩を貸していてくれたルシアンは、ひょいっと俺を横に抱き上げて、すたすたとベッドへと向かった。
「この、ばか、なにっ、やめっ」
「はいはーい、危ないから、暴れないでねー、兄さん」
ルシアンはくすくす笑った。
「てめー、ちくしょー、全然危なくないだろ、魔法で俺を担ぎ上げてるくせに!!」
ロズニスが、ささっと動いて、ベッドの上掛けをめくりあげた。そこへ、ふわりと優しく降ろされる。
なんたる屈辱……!!!!
ロズニスがかいがいしく靴を脱がしてくれるのに任せながら、下からギロリとルシアンを睨み上げれば、ふふっと上機嫌で鼻先で蹴散らかされた。
屈辱感の上塗りっ!!!!
俺のことを思っての行動だってわかってても、男にお姫様抱っこされるとか、受け付けられねーっ。男の沽券に関わるんだーっ。
「次やったら、ただじゃすまさないからな」
苛立ちのまま凄めば、ルシアンの微笑みもキラキラしさを増した。
「次、無茶したら、公衆の面前で同じことするからね」
逆に弟に脅されて、俺は睨んだまま沈黙した。ぐうの音も出なかった。
うわーっ、ちくしょー、ちくしょー、ちくしょーっ。
俺は足元の上掛けを引っ掴み、頭の上まで一気に引き上げ、背中を向けてごろりと横になって、ふて寝を決めこんだ。
背後でルシアンがロズニスに指示を出しているのを聞く。
「すぐにおなかすいたってわめきだすから、兄さんに何か軽食をもらってきてもらえる?」
「はい、わかりました。行ってきます」
軽やかな足音が遠ざかっていって、扉を開けて出ていく音がした。
静寂が落ちてきた。上掛けの中で、自分の息遣いだけが聞こえる。それでもルシアンの気配は感じていて、怒っている俺には、それが鬱陶しかった。
「ねえ、兄さん」
俺は返事をしなかった。したくなかった。
「あんな状態で誰かに襲われたら、いくら兄さんでも助からないよ」
そんなもしもの話なんかに、乗るつもりはなかった。このあいだ、ジジイとルシアンの二人掛かりで説教されて、懲りた。
誰に何の話をしていると思っているんだ。自慢じゃないが、喧嘩なら負け知らずだ。
相手が複数なら、その内の一人だけに勝っても意味のないことくらいわかっている。やるなら、全部倒す。そのためには体力魔力の配分も考えるし、多少ずるかろうが汚かろうが手段も選ばない。
負ければそこでお終いなのだから。俺は勝つ。勝ち続ける。それで問題はないはずだ。
それに、もしも、と言うのなら、それは諦めてもらうしかない事態のはずだ。その時は、前世のように、絶対に誰かが犠牲にならなければならない災禍が起きた時に違いないのだから。
だとすれば、俺じゃなければルシアンか、そうでなければ、俺たちの力に匹敵するだけの力を集めるために、たくさんの魔法使いが死ぬことになるだろう。ジジイや、ロズニスも、きっとその中に含まれてしまう。
だったら俺は、それを人に譲る気はなかった。
それは、献身でも自己犠牲でも英雄的行いでもない。ただの俺の我儘だ。
誰も失いたくない。そんな世界で生きたくない。いや、生きていけない。それは、俺が生きていく上で絶対に譲れない、俺の弱さでしかない。
たぶん、それを暴露すればいいのはわかっている。
でも、そんな恥ずかしいこと、言いたくないだろ。言えないだろ。それこそ羞恥で、俺は死ねる!
「敵はどこかに隠れて、兄さんが弱るのを待っているかもしれない。いつも目の前にいる奴だけが相手とは限らないんだよ」
ああ、そうかよ。そんなこともあるかもしれないよな。もしもの話でしかないけどな。
「兄さん。……ブラッド、聞いて。俺の話を、ちゃんと聞いて」
ルシアンの声に、悲嘆と哀願の響きが混じった。俺はそれに、ぎくりとした。
したけれど、今さらどうすればいいのかわからずに、そのまま体を硬くした。
しばらく気まずい沈黙が過ぎた。
言いつけたこともきちんとやらないで、こっそり後をついてきて、挙句の果てに他所様の庭を破壊するとは、どういう了見だ。こってり絞ってやらないと気がすまない。
俺は二人を引き連れて自分の部屋に入ったところで、ソファに直れ、と厳しい声で告げた。というのに、
「はいはいはいはい、わかったから、まずはベッドに入って」
肩を貸していてくれたルシアンは、ひょいっと俺を横に抱き上げて、すたすたとベッドへと向かった。
「この、ばか、なにっ、やめっ」
「はいはーい、危ないから、暴れないでねー、兄さん」
ルシアンはくすくす笑った。
「てめー、ちくしょー、全然危なくないだろ、魔法で俺を担ぎ上げてるくせに!!」
ロズニスが、ささっと動いて、ベッドの上掛けをめくりあげた。そこへ、ふわりと優しく降ろされる。
なんたる屈辱……!!!!
ロズニスがかいがいしく靴を脱がしてくれるのに任せながら、下からギロリとルシアンを睨み上げれば、ふふっと上機嫌で鼻先で蹴散らかされた。
屈辱感の上塗りっ!!!!
俺のことを思っての行動だってわかってても、男にお姫様抱っこされるとか、受け付けられねーっ。男の沽券に関わるんだーっ。
「次やったら、ただじゃすまさないからな」
苛立ちのまま凄めば、ルシアンの微笑みもキラキラしさを増した。
「次、無茶したら、公衆の面前で同じことするからね」
逆に弟に脅されて、俺は睨んだまま沈黙した。ぐうの音も出なかった。
うわーっ、ちくしょー、ちくしょー、ちくしょーっ。
俺は足元の上掛けを引っ掴み、頭の上まで一気に引き上げ、背中を向けてごろりと横になって、ふて寝を決めこんだ。
背後でルシアンがロズニスに指示を出しているのを聞く。
「すぐにおなかすいたってわめきだすから、兄さんに何か軽食をもらってきてもらえる?」
「はい、わかりました。行ってきます」
軽やかな足音が遠ざかっていって、扉を開けて出ていく音がした。
静寂が落ちてきた。上掛けの中で、自分の息遣いだけが聞こえる。それでもルシアンの気配は感じていて、怒っている俺には、それが鬱陶しかった。
「ねえ、兄さん」
俺は返事をしなかった。したくなかった。
「あんな状態で誰かに襲われたら、いくら兄さんでも助からないよ」
そんなもしもの話なんかに、乗るつもりはなかった。このあいだ、ジジイとルシアンの二人掛かりで説教されて、懲りた。
誰に何の話をしていると思っているんだ。自慢じゃないが、喧嘩なら負け知らずだ。
相手が複数なら、その内の一人だけに勝っても意味のないことくらいわかっている。やるなら、全部倒す。そのためには体力魔力の配分も考えるし、多少ずるかろうが汚かろうが手段も選ばない。
負ければそこでお終いなのだから。俺は勝つ。勝ち続ける。それで問題はないはずだ。
それに、もしも、と言うのなら、それは諦めてもらうしかない事態のはずだ。その時は、前世のように、絶対に誰かが犠牲にならなければならない災禍が起きた時に違いないのだから。
だとすれば、俺じゃなければルシアンか、そうでなければ、俺たちの力に匹敵するだけの力を集めるために、たくさんの魔法使いが死ぬことになるだろう。ジジイや、ロズニスも、きっとその中に含まれてしまう。
だったら俺は、それを人に譲る気はなかった。
それは、献身でも自己犠牲でも英雄的行いでもない。ただの俺の我儘だ。
誰も失いたくない。そんな世界で生きたくない。いや、生きていけない。それは、俺が生きていく上で絶対に譲れない、俺の弱さでしかない。
たぶん、それを暴露すればいいのはわかっている。
でも、そんな恥ずかしいこと、言いたくないだろ。言えないだろ。それこそ羞恥で、俺は死ねる!
「敵はどこかに隠れて、兄さんが弱るのを待っているかもしれない。いつも目の前にいる奴だけが相手とは限らないんだよ」
ああ、そうかよ。そんなこともあるかもしれないよな。もしもの話でしかないけどな。
「兄さん。……ブラッド、聞いて。俺の話を、ちゃんと聞いて」
ルシアンの声に、悲嘆と哀願の響きが混じった。俺はそれに、ぎくりとした。
したけれど、今さらどうすればいいのかわからずに、そのまま体を硬くした。
しばらく気まずい沈黙が過ぎた。
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