召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~

紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ

文字の大きさ
169 / 216

151.エロ同人誌みたいに!エロ同人誌みたいに!

しおりを挟む
「メルスランド側から『返せ』要請も特に来てないし、その程度の価値なんじゃない? お嬢さんって」
「あぁ、確かに」

 言葉を失うベルデモールに、新聞記者が追い打ちをかける。軽く腕を組んだリカルドは、丁寧な口調でせせら笑った。

「そういえば小耳に挟んだのですが、近頃あなたのお母様のご実家が破産して没落されたそうですね。それを機にカーミラ卿は前々から囲っていた愛人との関係を隠そうともしなくなったとか」
「なるほど、娘ともども切り捨てるつもりなんだ」

 相槌をうつグリと共に、新聞記者はベルデモールが置かれた状況を慇懃無礼に突き付ける。

「つまり捨て駒としてあなたは今回差し向けられたと、そういうわけですね」
「どうでもいいけど、それルカの真似?」
「いいなこの口調、煽りにピッタリだ」

 その情報がどこまで真実だったのかはわからない。だが、ベルデモールは真っ青な顔をして頭を小さく振り始めた。

「違う……そんなのうそよ……お父様がわたくしを」

 話題を切り替えるように、ダナエがパンパンと二度手を叩く。皆の視線を集めた彼女は、腰に手をあてて軽く言い放った。

「はいはい、むだ話はそこまで。いいかいベルデモール? うちの国は人質であろうがタダ飯をくわせる余裕はないんだ。アンタには奉仕刑をして貰うよ」

 ダナエが窓枠を二度叩いて合図すると、外で控えていたらしいゴブリンがわらわらと狭い牢屋に入ってきた。でっぷりと肥え太ったその姿に、ベルデモールはヒッと短く息を飲み震え出す。その脳裏には首都で密かに読んだ低俗な週刊誌の読み物が蘇っていた。

「ほ、奉仕って、わたくしに何をさせるつもりですの!? まさかっ」
「見られたくないだろうし、アタシたちは外に出てるから」
「待っ――」

 引き留めようとするのだが、無常にも彼らは出て行ってしまった。代わりに鼻息の荒いゴブリンたちが牢のカギを開け迫って来る。

「や、やだ、来ないでっ……わたくしに乱暴するつもりでしょう! 助けて、助けてサイードお兄様!!」

 貞操の危機にご令嬢は涙ぐむ。懇願むなしく、ついにその服に手がかけられた。

「いやぁーっ!!」


 ……


 数分後、ベルデモールは畑のど真ん中に立ち尽くしていた。

「……は?」

 そのいで立ちは白いチュニックにやや大きめのオーバーオール。麗しく光る金髪はざっくりと編み込まれ両肩から垂らされていた。大きな畑用ブーツをガッポガッポと踏み鳴らすと嗅いだことのないむわっとした匂いが鼻をくすぐる。

「まったく、着替えさせてやろっちゅうに、暴れるから手間取ってしまったでねぇか」

 先ほど服をひっぺがしたゴブリンたちが、やれやれと呟きながら農工具を運んでくる。令嬢の手にクワを押し付けると、前掛けを締め直した彼ら――いや、彼女たちはニィッと笑顔らしきものを浮かべた。

「なかなか似合ってるど、元から田舎っ子みてぇだ」
「んだんだ、さぁ始めっぺー」
「ちょっとお待ちなさい! 一体どういうことですのっ」

 理解が追い付かずベルデモールが叫ぶと、足を止めた彼女らは顔を見合わせゲラゲラと笑い出した。

「あんれまぁ、やだよこの子は、そんなカッコでダンスパーティーをするつもりらしい」
「畑仕事に決まってるべさ」
「ふざけるのも大概になさってっ、どうしてわたくしがそんな事!」

 激昂して拳を握りしめるも、ゴブリン婦人たちは冗談だと取り合ってくれない。その時、ベルデモールは視界の端のブルーグレーに意識を引かれた。二足歩行でやってきたケットシ―は、目の前にたつと一度ペコリと頭を下げた。見覚えのあるガラス玉のような透き通った目に、半年ほど前の事を思い出す。

「あなた……」
「お久しぶりですニャ、お嬢様」

 記憶の中よりも多少毛並みが良くなってはいたが間違いない。かつてカーミラ家で所有していた召し使いは立派な身なりをして彼女の目の前に立っていた。スッと前足を胸にあてた彼は口を開く。

「ニャアが監査役として付かせて貰うことになったニャ、さぁ始めるニャ」
「ちょ、ちょっと」

 着ていたシャツを腕まくりした猫は、かつてのご主人の手首を掴み歩き出した。


「そうそう、もっと本腰を入れてだなぁ」
「もっと柄を短く持って、小刻みに動かした方が疲れないよ、お姉ちゃん」

 気高い令嬢である自分が平民にまじって畑を耕している。ベルデモールはやみくもにクワを振り回すことでその受け入れがたい事実を何とか頭から追い出そうとしていた。隣で同じ作業をしていた女の子が口うるさく指示を挟んでくる。

「ほーらぁ、そんな全力でやってたら午後まで持たないよー」
「だぁーもうっ、わかってますわよ! 命令しないで頂けます!? まったくもう、わたくしを誰だと思って……」

 ブツクサと呟くと、頬を泥で汚した少女は腰に手をやりえっへんと胸を張った。

「少なくとも、ここではあなたよりも先輩よ。えらいんだから」
「はん! 何の身分もない平民がえらそーに」

 反論しようとしたその時、足元が波打つように揺れ地中から何かが突き出した。鼻先をかすめた攻撃にベルデモールは悲鳴を上げて尻もちをつく。

「キャアアアア!!!」
「あ、わーむ君。手伝ってくれるの? よかったねぇお姉ちゃん」

 飛び出したピンク色の太長い「何か」は、完全に固まっている令嬢の肩にちょん、と触れるとうねうねと地中に戻っていった。脳の処理が追い付かず、息をすることも忘れていたベルデモールはハッとする。

「も、漏……」
「え?」
「~~っ、なんでもありませんわ! ちょっとですわよ、ちょっと!!」

 顔を真っ赤にしていた令嬢だったが、ご自慢の金髪に泥がべったり付いている事に気が付き、顔を覆ってわっと泣き出した。

「もういやぁぁぁーっ、限界ですわ! なんでわたくしがこんな目に遭わなくてはならないの!?」

 本気ですすり泣く令嬢を見下ろしていた少女は、その肩にポンと手を置くと周囲にいた大人たちに呼びかけた。

「お姉ちゃんが限界だって、そろそろお昼にしようよ」
「は? いやちょっとお待ちなさい、限界ってそういう意味では」

 口ではどんなに虚勢を張っていても、腹の虫は正直だった。昨夜から何も入れて貰えない胃袋が切ない声を出して本体に抗議する。ベルデモールは半ばあきらめたように手を引かれ、道端の草むらへと腰を下ろした。

「芋の煮っころがし作ってきたから喰ってくんろ」
「森で摘んできた木いちごをジャムにしたのよ」
「はい、お姉ちゃんの分」

 すっかり世話焼き先輩と化した少女が、満面の笑みで木のプレートを差し出す。ジャムを挟んだサンドイッチにアキラ芋がゴロゴロと入った煮っころがし、すぐ隣の畑からもぎってきたのか、真っ赤に熟れたトヌトが各人の皿に放り込まれる。疲れ切っていたベルデモールはボーっとしながらそれを掴んで一口かじってみた。……。少しだけ顔をしかめ、二口、三口とむさぼるように口に収める。息つく間もなく他の料理も掻き込むように食べ始めた。

「おやおや、アキラ様みたいにいい食べっぷりだ」
「よく働いた後のメシはうまかろ?」
「……別に」

 そうは言いつつ、差し出されるおかわりも含めてペロリと平らげる。食後に貰ったレモン水のはじける泡を物珍しそうに眺めていると、そのグラスを通して遠くに移動する一団が目に入った。

「あら、ずいぶんと大荷物ね。引っ越しでもするのかしら」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...