召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~

紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ

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24.目指せ優しい国づくり!

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「絶対にいや! そんな事いうんだったら『ぷー王国』にするわよ」

 自分の名前を国名にするとか、どんだけナルシストなのよ。つい口をついて出た『ぷー王国』という名称に、それまでぽけーっと成り行きを見守ってたグリが指をさして笑い出す。

「あはははは、すっげーまぬけ」
「っせぇ! 無表情で笑うなって言ってんだろ死神!」

 ガバッと起き上がったラスプは牙を剥く。無表情とは言わないけど、死んだ魚のような目の彼に口だけで笑われると確かにバカにされてるように感じなくもない……。

「だいたい、そんな事いうんだったら、お前こそ何か案だせよな」

 そう言われたグリは、ん~?と、いつものゆるい雰囲気のまま天井に目を向ける。もしかして目を開けたまま寝てるんじゃないかと思うくらい間が開いた後、彼は一つの名を出した。

「ハーツイーズ」

「はーつ?」
「この辺りの昔の地名だよ。今となっては覚えてる人は少ないだろうけど」

 しばらくその名を口の中で転がしていた私は、次第にニヤけて来るのを止められなかった。ハーツイーズ、ハーツイーズ国かぁ、うん!

「いいじゃない! 覚えやすいし、何だか平和そう!」

 両手をパンと合わせて推せば、残りの人たちも賛同してくれた。

「まぁ、無難だな」
「わぁい、ハーツイーズハーツイーズ~」
「紅き血……」
「じゃあ『みんなの』同意も得られたところで」
「スルーですか」

 約一名ブツクサ言ってたけど、もう決定!

「今、この瞬間から、ハーツイーズ国を樹立します!」

 バッと右こぶしを天に突き上げた私は、やる気十分に叫んだ。

「目指せ優しい国づくり! ということで、最初の仕事なんだけど――」


 ***


「おい」

 たくさんのガラクタを詰めた木箱を運んでいた私は、背後から恨めしそうに響く声を無視する。

「おいってば」

 えーっと、これは明らかにゴミ。こっちの置時計は骨董品として売れるかな?

「アキラ」

 再三呼びかけられて私はようやく振り向く。三角巾にエプロン姿の狼男は、手にしたモップの柄に額をつけるようにして呻いていた。

「どうしたの?」
「どうもこうも……幹部と国王として最初の仕事が掃除っておかしいだろ……」


 私が国王としてまず最初に命じたこと、それはこのハーツイーズ城の大掃除だった。いや、言いたいことは分かる。こんな緊迫した状況で掃除なんかしてる場合か!って(実際ラスプにツッコミ入れられたし)

 だけど『健全な国家は清く美しい住まいから!』の信念で、今日だけは割り切って午後いっぱい使って片付けることにしたのだ。……と言うか、正直なところ汚すぎて目もあてられないっていうのがホンネだったりする。暗黒城としてなら百点満点かもしれないけど、さすがに三歩歩くたびにクモの巣に頭から突っ込むお城になんて住みたくない。あと、使えそうな掘り出し物だったり、売り払えそうなお宝とかも目当てかな。

「オレはこんな事をするために魔王軍に入ったわけじゃ……」
「文句言わない、また手首ちゃんにドヤされるよ」
「げっ!」

 ハタキを浮かせてトペトペトペッと廊下を駆けていく彼女の姿が見えたのか、ラスプは慌ててモップを動かす。掃除と聞いたからにはメイドの中のメイド手首ちゃんが黙っているわけもなく、やたらと張り切って先ほどから走り回って指示を出していたりする。そんな彼女のテキパキとした指導のおかげもあり、お城の一階部分はだいぶ片付いてきた。最初は足も踏み入れられないほどガラクタまみれだった部屋がいくつも出現して、改めてこの城の大きさに驚いているところだ。ゴミの分別を続けながら、私は今後の城の運営方法について自分でも整理するため口にしてみる。

「私たちが住んでる上層部だけ残して、一階部分は一般市民に広く開放しようと思ってるの」
「誰でも出入り自由ってことか?」

 驚いたように振り返るラスプに見えるよう、無造作に机に放ってあった古い本を振ってみせた。

「うん、例えばこの部屋なんかは、お城中の使ってない本をかき集めて誰でも自由に閲覧できる図書室にしようかなって」
「城門を常に開け放っておくのはまずいだろ」

 警備隊長を任されてる彼はさすがに難色を示す。確かに執務室とか私達の部屋まで気軽に来れちゃうのは防犯上、危ない。ちなみに現段階で判明してるハーツイーズ城の構造なんだけど、

 一階はエントランスホール(ラスプと会った場所ね)と、今片付けているようないくつもの無数の部屋。
 二階はダンスでも出来そうなほど広い玉座と厨房(オーク達と話したベランダもここ)
 三階は執務室とルカたち幹部の部屋。
 そして一番上の四階は贅沢にも私一人の部屋となっている。

 ルカがガバセキュリティと揶揄する通り、意外と抜け道があったりして戦いの為の籠城とは言いづらい。もしかしたら魔王なんていない時代は、平和な領主の住まいとして使われていたのかもしれない。

「二階と三階への階段に、頑丈な扉をつけておけば良いんじゃないかと思ったんだけど……まずいかな?」
「とは言ってもなぁ。いや、でも待てよ」

 何か良いアイデアでもあるのか、ラスプは「考えておく」と、前向きに検討してくれる。

「それで、その図書室ってヤツは金は取らないのか?」
「無料開放。有益な知識はみんなで共有した方が国として発展するでしょ、どうせ埃かぶってるだけなんだからどんどん見てもらおうよ」

 実は知識の共有化の他にも狙いがある。気軽にお城に遊びに来てもらうことで、魔王――というか国王を身近に感じてもらおうっていう魂胆だ。人が集まるところっていうのは自然と情報が集まる。魔族と人間サイドの認識の違いから学んだのだけど、物事を一面からだけしか見ないのはマズい。だからなるべく色んな人たちと接することで、自分自身の視点も広げていかなくちゃ。あ、そうだ、目安箱とか置いてみたらどうだろう。そう提案してみると、ラスプは少しだけ見直したかのような目つきで私を見やる。

「お前、すげぇな。よくもまぁそんなアイディアをポンポン出せるもんだ」
「アハハ、違うよ。私が元居た世界のシステムを真似てるだけ」

◇◆◇

【手首ちゃんの一言コーナー】
皆さまご機嫌よう、手首です。厳しい冬の合間にほんの少しだけ寒さが和らぐ日があるとホッとしますよね。春が待ち遠しい今日この頃です。
先ほど掃除が終わった際、ご主人様に紙とペンを用意するよう頼まれましたの。どなたかにお手紙でも書くつもりでしょうか…?
さて、ぱんだ様から再びお便りを頂きました
「手首ちゃんは、ラスプ、ルカ、グリ、ライムのなかで誰が一番かっこいいと思う?私は…ルカかなっ!」
そうですね、どの殿方もそれぞれ魅力のある本当に素敵な方達だと思いますわ。
ルカ様のスラッと長い指先…
ラスプ様の骨ばった手の甲…
グリ様の魅惑的な爪…
ライム様の手全体のバランス…
あぁっ、わたくしにはとても選ぶ事なんて出来ません!
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