錬金チート開拓記 ~国に捨てられた俺、前世の知識と万能の錬金術で自由気ままな辺境暮らしを楽しむ~

六志麻あさ

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2 俺は自分が転生者だと思い出す

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 俺は不思議な光景を見ていた。

 王国で過ごした日々とはまったく違う。

 コンクリートの建物が並ぶ街。

 行きかう大勢の人々、車やバイク。

 俺はスーツ姿で満員電車に揺られ、出勤する――。

「ああ、そうだ。これは」

 パワハラ上司に詰められ、顧客のクレームにさらされ、取引先におべっかを使う。

 へとへとに疲れて帰ると、後は眠るだけ。

 無味乾燥な日々。

「思い出した――」

 これは俺の前世だ。

 現代日本で、アラサーの社畜だった日々だ。

 もう前世の名前も、死因も、分からない。

 ただ、俺は異世界に転生し、ナッシュ・クラフトという名の錬金術師になった。

 けれど、ここでも俺は遣いつぶされ、死んだ。

 なんだったんだろう、俺の人生って。

 犠牲になり、消費されるだけの人生。

 俺はもっと自由に、気ままに。



 幸せに――生きたかった……っ!



 想いが、弾ける。

「っ……!」

 はっと意識が覚醒した。

 目に飛び込んできたのは、木々の緑と頭上から差し込む陽光だ。

「どこだ、ここは――」

 あたりを見回しても、見渡す限りの森が広がっているだけだった。

 エンシェントドラゴンと死闘を繰り広げた、あの殺風景な砦の前とはまったく景色が違う。

「そもそも、俺は死んだはず……」

 自分の胸に手を当てる。

 心臓が、確かに鼓動している。

 手足も、ちゃんと動く。

 痛みも、苦しみもない。

「奇跡的に生き残った、ってことか?」

 ――いや、そんなはずはない。

 俺が開発した【超魔導爆弾】は、使用者を中心にした半径50メートルの結界内を【ファイア】の数億倍もの超火力で焼き尽くす兵器だ。

 あの爆発の中心にいて、無事でいられるわけがない。

 骨の一本すら残らないはずだった。

「なら、また転生した……?」

 一度、現代日本から異世界への転生を経験したんだ。

 二度目の転生が起きても、不思議ではないのかもしれない。

 そう思って、俺はあらためて自分の体を見下ろした。

 着ているのは、王国軍から支給された兵士用の丈夫な服だった。

「俺はナッシュのまま……か?」

 この体は間違いなく、エンシェントドラゴンと対峙した時の俺自身のものだ。

 ならば――なぜ、俺はここにいるんだ?

「うーん……もしかしたら空間転移か、それに類する現象が起きたのかもしれないな」

 俺は立ち上がって土を払いながら、とりあえずの仮説を立ててみた。

 森の中を歩きながら、思考を巡らせる。

 あの【超魔導爆弾】の爆発は、凄まじいエネルギーを発生させたはずだ。

 その莫大なエネルギーが時空を歪ませ、爆発の直前に俺だけを別の場所に転移させた――。

 細かい理屈はともかくとして、あり得る可能性だとは思った。

「もし、本当に奇跡的に生き残れたのなら……これから、どうするかだよな」

 俺は立ち止まり、空を見上げた。

 最初に頭に浮かんだのは、もちろん『王国に戻る』という選択肢だ。

 俺はエンシェントドラゴンを討伐した。

 王に報告すれば、俺は人類を救った英雄として、みんなから称えられるのかもしれない。

「英雄としての人生か……」

 その言葉を口にしてみても、気持ちがまったく高揚しなかった。

 それどころか、勇者ブライの冷たい目や、魔法師団長の自分を駒としか見ていない顔が思い出されて、胸糞が悪くなるだけだ。

 英雄として祭り上げられ、また都合よく利用される未来が見えた。

「これからは……平穏に暮らしたい」

 代わりに心の中に湧いてきたのは、そんなささやかな願いだった。

 前世のように誰かにこき使われることもなく、ナッシュのように命を懸けて戦うこともない。

 ただ静かで、穏やかな毎日。

 そうだ、俺はずっとそれに憧れていたんだ。

 もう誰かのために自分を犠牲にするのはやめよう。

 これからは、自分のためだけに生きるんだ――。
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