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第1章 呪われた村
17 燐光一閃1
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血のように赤い甲冑を身につけた騎士だった。
右手には馬上槍を、左手には円形の盾を構えている。
またがっている馬も炎のような赤毛だ。
「逃げて……そいつは『煉獄騎士』……SSSランク相当の、化け物……」
マキナが苦しげにつぶやく。
「逃げて、って言われても──」
目の前で倒れてる彼女やジェイムズたちを放っておくわけにもいかない。
──こういうところが『甘い』とか『正義感ぶってる』とか言われて、前のパーティから追放されたんだよな。
「だからって……やっぱり、逃げたくない」
ぐっと拳を握りしめる。
「……ノエル、お前は逃げろ」
「でも、カイル様──」
「こいつは、俺がなんとかする」
言いながら、声が少し震えてしまった。
初めて出会う、SSSランクの魔物──。
こうして向き合っているだけで、すさまじいプレッシャーを感じる。
「貴様も俺に刃向うか……? 邪神の高位配下たる、この俺に」
煉獄騎士がつぶやいた。
ごうっ!
ぼそぼそとした小さな声が、物理的な衝撃波さえ伴って吹き荒れる。
「脆弱な人間よ……滅ぶべし」
馬上から俺に向かってランスを突きつけた。
全身が凍るようなプレッシャーに息が止まる。
確かに、とんでもない化け物みたいだ。
「お前たちは……邪神の手下は、どうしてこの村を襲うんだ」
俺は煉獄騎士をまっすぐに見据えた。
──気圧されるな。
自分自身に言い聞かせる。
ちょっとでも気を抜くと、その場に崩れ落ちてしまいそうだ。
「この村は邪神様を封じる要となっている……破壊すれば、あの方はふたたび自由に人間界へ行くことができる……ゆえに」
煉獄騎士が告げた。
「この村を滅ぼす。それが邪神様が我らに下された使命」
「邪神を、自由にするために……」
「いかにも。定期的に生じる結界の綻びより、我らはこの世界に赴くのだ」
と、煉獄騎士。
なるほど、欲望とか破壊衝動とかじゃなく、目的意志をもって村を襲っているわけか。
……今後の村の防衛の参考にさせてもらう。
「カイル様、及ばずながらあたしも戦います!」
隣でノエルが剣を抜いた。
「この前のヘルギガントとはけた違いの敵みたいだし、危険だぞ」
「じゃあ、カイル様はたった一人で立ち向かうつもりですか? そんなの、嫌です」
首を振るノエル。
言いつつも、その体は震えている。
やっぱり怖いんだろう。
それでもノエルはまっすぐ俺を見つめ、
「あたしだって村を守りたい──カイル様の、役に立ちたい。戦力にもなれないなんて嫌です」
「もしかして、自分のことを役立たずとでも思ってるのか?」
「……かなり」
「ノエルは十分に俺を助けてくれてるよ。村での生活のこととか」
何よりも、素直な感謝の気持ちが俺の心を癒してくれた。
パーティから追い出されて、ささくれ立った気持ちを──前向きにさせてくれた。
「お前には、とっくに助けてもらってるし、役立ってもらってる。だから」
俺は一歩前に出た。
「ここからは、俺がやる番だ」
右手には馬上槍を、左手には円形の盾を構えている。
またがっている馬も炎のような赤毛だ。
「逃げて……そいつは『煉獄騎士』……SSSランク相当の、化け物……」
マキナが苦しげにつぶやく。
「逃げて、って言われても──」
目の前で倒れてる彼女やジェイムズたちを放っておくわけにもいかない。
──こういうところが『甘い』とか『正義感ぶってる』とか言われて、前のパーティから追放されたんだよな。
「だからって……やっぱり、逃げたくない」
ぐっと拳を握りしめる。
「……ノエル、お前は逃げろ」
「でも、カイル様──」
「こいつは、俺がなんとかする」
言いながら、声が少し震えてしまった。
初めて出会う、SSSランクの魔物──。
こうして向き合っているだけで、すさまじいプレッシャーを感じる。
「貴様も俺に刃向うか……? 邪神の高位配下たる、この俺に」
煉獄騎士がつぶやいた。
ごうっ!
ぼそぼそとした小さな声が、物理的な衝撃波さえ伴って吹き荒れる。
「脆弱な人間よ……滅ぶべし」
馬上から俺に向かってランスを突きつけた。
全身が凍るようなプレッシャーに息が止まる。
確かに、とんでもない化け物みたいだ。
「お前たちは……邪神の手下は、どうしてこの村を襲うんだ」
俺は煉獄騎士をまっすぐに見据えた。
──気圧されるな。
自分自身に言い聞かせる。
ちょっとでも気を抜くと、その場に崩れ落ちてしまいそうだ。
「この村は邪神様を封じる要となっている……破壊すれば、あの方はふたたび自由に人間界へ行くことができる……ゆえに」
煉獄騎士が告げた。
「この村を滅ぼす。それが邪神様が我らに下された使命」
「邪神を、自由にするために……」
「いかにも。定期的に生じる結界の綻びより、我らはこの世界に赴くのだ」
と、煉獄騎士。
なるほど、欲望とか破壊衝動とかじゃなく、目的意志をもって村を襲っているわけか。
……今後の村の防衛の参考にさせてもらう。
「カイル様、及ばずながらあたしも戦います!」
隣でノエルが剣を抜いた。
「この前のヘルギガントとはけた違いの敵みたいだし、危険だぞ」
「じゃあ、カイル様はたった一人で立ち向かうつもりですか? そんなの、嫌です」
首を振るノエル。
言いつつも、その体は震えている。
やっぱり怖いんだろう。
それでもノエルはまっすぐ俺を見つめ、
「あたしだって村を守りたい──カイル様の、役に立ちたい。戦力にもなれないなんて嫌です」
「もしかして、自分のことを役立たずとでも思ってるのか?」
「……かなり」
「ノエルは十分に俺を助けてくれてるよ。村での生活のこととか」
何よりも、素直な感謝の気持ちが俺の心を癒してくれた。
パーティから追い出されて、ささくれ立った気持ちを──前向きにさせてくれた。
「お前には、とっくに助けてもらってるし、役立ってもらってる。だから」
俺は一歩前に出た。
「ここからは、俺がやる番だ」
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