冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ

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第3章 俺たちの楽園

5 温泉街への第一歩

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「ふう、気持ちよかった」

 俺が温泉から上がると、まだノエルたちは戻ってきていなかった。
 女性陣で温泉を楽しんでいるんだろう。

「なるほど、温泉ですか」

 やって来たのは、天使アグエルだった。

「ああ、スキルで作ったんだ。よかったら、お前も入っていってくれ」
「いいですね」
「リフレッシュできたよ。もっといろんな種類を作ってもいいかもしれない」
「ふふ、わたくしが『いいですね』といったのは、あなたのスキルの使い方ですよ」

 と、アグエル。

「えっ? その力でモンスターを狩り、冒険者として栄華を極める──そんな使い方もできるでしょう? あるいは金儲けに使えば、あなたはあっという間に大富豪です。あるいは大勢の女性をはべらせ、男としての欲望を思う存分に満たす……そんな使い方もあるかもしれません」
「欲まみれだな」

 俺は思わず苦笑した。

「別に俺は聖人君子じゃない。人並みの欲望はあるよ」
「そうですか」
「ただ、村に来ていきなり邪神の手下と戦ったり、そのまま成り行きで村に居ついて、ここを守るためにできることをやって──夢中で動いていたからな。自分自身の欲を満たすためにスキルを使う、って余裕もなかったんだ」

 そう、夢中だった。
 何よりも、村の人たちが喜んでくれる顔が嬉しかった。

 単純にそれだけだ。

「あなたに神が万物創生スキルを与えた、その理由が少し分かった気がします」

 アグエルがつぶやいた。

「えっ」
「いえ、独り言ですよ」

 首をかしげた俺に、アグエルはいつものアルカイックスマイルを浮かべる。
 と、

「お待たせしました、カイル様。アグエルさんも、こんにちはー」

 ノエルが歩いてきた。

 いつもはツインテールにしている赤い髪を、今は下ろしていた。
 ロングヘアも可愛らしい。

 しかも湯上りで肌が薄桃色に火照っていて、ほのかな色香まで漂っていた。
 ついドキッとしてしまう。

 普段はあんまり女を意識せず、相棒とか友だちみたいな感覚で接してるんだけど、こうして見ると、やっぱり女の子だよな──。

「カイル様?」
「っ……! い、いや、なんでもないっ」

 俺は慌てて両手を振った。

「微笑ましいですね、ふふ」

 アグエルがそんな俺を見て笑っていた。

「良い湯」
「いや、温泉はいいな。私は毎日でも通うぞ」
「うん、さっぱりしたね!」

 マキナ、クラウディア、サーシャもやって来た。

「これで湯上がりに冷たいものでも飲めたら最高なんだけどなー」

 と、サーシャ。

「冷たいもの、か」
「私はマッサージかな?」

 これはクラウディアの意見。

「んー、あたしは軽く体を動かして遊びたいです」

 ノエルが微笑んだ。

「修業」
「それは却下だ」

 マキナの意見は悪いけど、多数の需要がなさそうなので……。

「むー」

 拗ねたような顔をするマキナ。

「悪いな。その辺はまた考えてみるよ」

 俺は軽く彼女に謝りつつ、

「温泉施設に隣接して、飲み物だったり、マッサージだったり、遊びだったり──そういうのを提供できる施設もあるといいかもな」



 温泉は村の内外で日に日に評判を高めていた。

 村人の何人かは、温泉の近くに移住を始めた。
 彼らは肉や野菜を売ったり、中には土産物屋を始める者もいた。
 他の町から温泉に来る人も増えているし、一商売を始めようという感じらしい。

 その中には、俺の近所に住む農家の父娘もいる。
 栽培しているニンジンを、村名物の『ジュデッカニンジン』として売り出すらしい。
 急ごしらえの看板には、おどろおどろしい怪物のマークが描かれていた。

「これは?」
「邪神の顔だ」

 と、農家のおじさん。

「邪神ってこんな顔してたのか」
「あたしの想像で描いたのよ。『呪われた村』のニンジンってイメージ」

 笑いながら説明したのは娘さんだ。

「かえって観光客が遠のくような……」

 と思ったら、案外ここのニンジンは人気らしい。
 俺も食べさせてもらったことがあるけど、本当に美味しいからな。

 ……看板の趣味はともかく。



「温泉街って感じになってきたな」

 俺は温泉周辺を見回しながらつぶやいた。
 村はずれに温泉だけを作るつもりだったけど、いつの間にか、ここも村の中みたいな感じに変わってきていた。

「もっと村の中心近くに温泉を作ったほうがよかったかな?」
「いや、これから先、観光客が大勢訪れるようになるなら、居住区とある程度離しておいたほうがいいだろう」

 クラウディアがやって来た。
 彼女も温泉を見に来たんだろうか。

「観光でにぎわうと、騒がしくなるからな。村で静かに暮らしたい人も少なからずいるだろうから」
「なるほど」
「食事ができるような店も、温泉街の中に入れてしまえば、もっと観光でにぎわうかもしれんな」
「ああ、それもいいな」

 クラウディアの意見に俺はうなずいた。

 ジュデッカランドに温泉街。
 村は、観光名所への道を歩み始めているのかもしれない。

 後は、邪神の脅威がなくなってくれれば言うことなしなんだけど──。
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