不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

文字の大きさ
109 / 135
第6章 勇者の戦い

7 聖なる想い

しおりを挟む
 俺はベルクと対峙していた。
 奴に一撃入れたとはいえ、まだまだ油断はできない。

「彼方くん……?」

 突然、声がした。

「えっ……!?」

 ギクリとして振り返る。

 そこに立っていたのは、おとなしげな容貌の美しい少女──。
 雫だ。

「なんで、ここに……!?」

 俺は苦い声でうめいた。

「ごめんなさい。彼方くんが心配になって、つい……」

 巻き添えを避けるために戦場を離したっていうのに、追いかけてきたのか──。
 いや、彼女の性格を考えれば、予想すべきだったか。

「ふん、その女はお前の想い人だったな。弱点発見だ!」

 ベルクが笑った。
 凄絶な笑みだった。

「罪もない者を手にかけるのは辛いが、これも勝利のため──ひいては、世界を守るためだ。まず、そいつから斬る──」
「させるかぁっ!」

 ベルクの斬撃が雫を襲う。

 俺はその攻撃軌道上に体を投げ出した。

「ぐあっ……」

 直後、右肩に焼けるような痛みが走る。
 雫を守ることを優先したから、奴の剣技を受け止めきれなかったのだ。

「彼方くん!」

 雫が悲痛な絶叫を上げる。

 左肩に焼けるような痛みが走った。
 吹き出す血が、地面に赤い斑点を作る。

 俺は【近接格闘】のスキルで、前蹴りを繰り出した。

「ちっ……」

 バックステップでそれを避けるベルク。

 俺は剣を振り回し、牽制しながら、なんとか距離を取る。
 片腕に雫を抱いて。

「大丈夫か、雫」
「私より、彼方くんが……」

 雫は真っ青な顔をしていた。

「血が、いっぱい……」

 涙声でうめく。

「これくらい、大丈夫だ。雫はここから離れろ」

 痛みをこらえ、無理やり笑顔を作る俺。

「彼方くん……」
「あいつは危険だ。雫を襲うかもしれない。俺が食い止めるから、早く逃げてくれ」
「でも──」
「逃がすと思うか?」

 ベルクが俺をにらみつけた。

「この俺の顔に傷をつけた罰だ。その女を、お前の目の前でむごたらしく殺してやる」
「ベルク──」
「いや、その前にたっぷりと犯してやろうか? くくく」
「お前……!」

 何が世界の平和のためだ。

 こいつはどこまでも自分本位だ。
 顔に傷をつけた俺への恨みを晴らすために、雫にひどいことをしようとしている。

 絶対に──させない!
 雫には【加護】のスキルをかけてあるけど、さすがにベルクの実力なら簡単に突破してくるだろう。

 彼女を守るためには、俺が戦うしかない。

「雫、俺が守る……絶対に離れるな!」
「……はい」
「巻きこんですまない」
「私が勝手についてきたんです。謝るのは私の方です……」

 雫は目に涙を浮かべ、うめく。

「私が馬鹿なことをして、彼方くんが……」
「違う、馬鹿なのは異世界人こいつらだ。自分本位で他人の犠牲なんて、なんとも思わない。俺は──」

 夜天を構える。

「俺の剣は──そんな奴らから罪なき人を守るための剣だ」

 勇者であろうとなかろうと。
 それは変わらない。

「だから、力を貸せ──夜天!」
「お前の、志のままに」

 夜天の刀身がまばゆい輝きを放つ。

「さあ、決着の時だ……ベルク!」

 俺は聖剣を手に突進する。
 ベルクもまた突進してきた。

 シンプルな、力のぶつかり合いだ。
 俺たちの斬撃が衝撃波を生み出し、互いの中間地点で衝突した。

 ごおおおおんっ!

 大気が震える、轟音。
 強大なエネルギー同士がぶつかり合った余波で、周囲に激しい突風が吹き荒れる。

「きゃあっ……!」

 その風に雫が吹き飛ばされる。

「雫!」
「大丈夫です、彼方くん……」

 倒れながらも、彼女は俺を見ていた。
 懸命に、応援してくれている。

「う、おおおおおおっ!」

 俺は聖剣に力を込める。
 その意志に呼応し、刀身がさらに輝きを増した。

「勇者の聖なる力か!? だが、俺だって──クラスチェンジして得た力がある!」

 ベルクの剣からも強烈な輝きがあふれる。

「消えろ、下賤げせんな者!」

 嘲笑とともに、ベルクの斬撃の圧力が一気に増した。

「くっ……うううううっ……!」

 さっき切り裂かれた左肩から、血が噴き出した。
 激痛で、剣を持つ手がしびれてくる。

 力が、入らない。
 このままじゃ押しこまれる……っ!

「彼方くん!」

 雫の声が聞こえた。

「負けないで!」
「雫……!」
「私、信じてますから! 絶対に──」

 そのとたん、聖剣の輝きが増した。

「なんだ──!?」

 いや、聖剣だけじゃない。
 俺の体からも、光があふれている。
 痛みが薄れていく。

 まるで雫の声に──祈りに、力をもらっているかのように。

「出力が上がっている……彼方、今なら!」

 夜天の声にうなずき、俺は聖剣を掲げた。
 刀身にすさまじいエネルギーが集中しているのが分かる。

 今なら、撃てる。
 理屈ではなく本能で悟った。

 最強のEXスキルの一つ、【退魔雷撃剣たいまらいげきけん】を。

「ひっ、その技は──」

 ベルクの顔に驚愕の表情が浮かんだ。

「おおおおおっ!」

 気合とともに振り下ろした俺の聖剣から、虹色の斬撃エネルギーと黄金の雷撃が同時に飛ぶ。

「が……ぁぁぁっ……」

 胸元を深々と切り裂かれ、全身を雷に打ち据えられ、ベルクは倒れ伏した。
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...