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第7章 勇者の意志
6 引き続き探索
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「ここ……ですか?」
凪沙さんのダウジングに従って俺たちがやって来たのは、町はずれの森林公園だった。
「確かにここ。でも木しかない。不思議」
首をかしげる凪沙さん。
「確かに遺跡のビジョンが見えたのに」
「んー、ダウジング失敗しちゃったとか?」
「分からない……」
月子の問いに、凪沙さんも歯切れの悪い答えを返す。
「まあ、何もなかったなら、それはそれで──みんなでピクニックに来たとでも思って、気持ちを切り替えましょう~」
と、雫。
「私、お菓子を持ってきましたよ」
ああ、週末に買ってきてくれたお菓子か。
用意がいいな、雫。
「みんなで食べませんか~」
「雫、偉い」
「わーい、雫ちゃんありがとう」
たちまち目を輝かせる凪沙さんと月子。
「完全にピクニックのノリだな」
俺は思わず苦笑した。
ダウジングは失敗したけど、こうやってみんなでピクニック気分で遊べるのは、それはそれでいいか。
鍵の遺跡は、また地道に探そう──。
ずぶりっ……!
突然、地面が沈んだ。
「えっ……!?」
まさか、これは──落とし穴!
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
雫たちが悲鳴を上げる。
俺たちは数メートル下まで落下していく。
「くっ……月子!」
俺は月子に呼びかけつつ、空中で体勢を整えた。
「りょーかいっ」
月子もまた、常人離れした身体能力を活かし、空中で一回転。
俺が空中で雫を、月子が凪沙さんをそれぞれ抱き止め、なんとか着地できた。
下が柔らかめの土でクッション代わりになってくれたことも幸いし、全員怪我はないようだ。
「落とし穴までダウジングできなかった……遺跡も見つけられなかったし、今日は本当に不覚」
凪沙さんは、むー、と口を尖らせている。
「みんなを危険にさらした……」
珍しく落ちこんでいるらしい。
「まあ、怪我はなかったんだし」
なだめる月子。
「そうですよ、凪沙さん。あ、えっと……ありがとうございました、彼方くん」
俺に抱きかかえられている雫も凪沙さんを慰め、それから俺に向かって微笑んだ。
「ただ、その……この格好はちょっと恥ずかしくて、えっと」
急に顔を赤らめる雫。
「あ、悪い」
俺は慌てて彼女を下ろした。
「せっかくのチャンスだし、もっと抱いてもらえばいい」
凪沙さんが横からボソリと言った。
「いや、チャンスって……」
「はっ、確かに──痛恨です」
思わず苦笑した俺の横で、雫がショックを受けた顔をしている。
えっと……どういう意味だ?
「いいなー、ボクも先輩に抱きかかえられたかった……」
月子までポツリとつぶやいてるし。
と──、
「これは……!」
周囲を見回し、俺はあるものを発見した。
土の中に、明らかに人工物と分かる石板状のものが見える。
もしかして、これは──。
「扉……か」
鍵の遺跡に続いているんだろうか。
それとも──。
取っ手を握り、ゆっくりと開く。
ギギィ、と軋んだ音とともに、石の扉が開いた。
その向こうには、石造りの通路が続いている。
「遺跡……?」
首をかしげる雫。
「ダウジング通り。わたしは最初から確信していた」
いきなり勝ち誇る凪沙さん。
いや、さっきあなた『不覚』とか言ってましたよね?
……まあ、ここを見つけられたのは凪沙さんのおかげだから文句はないんだけど。
「すごーい。向こうに何があるんだろ」
目をキラキラさせる月子。
「行ってみる」
俺は彼女たちにそう言った。
「行くって、この中に……ですか?」
「だ、大丈夫、先輩? 崩れちゃうんじゃない?」
「危険かもしれないから、まず俺一人で行ってみる」
雫と月子に答える俺。
「駄目ですよ、彼方くん。危ないことしちゃ」
雫がたしなめた。
その瞳が問いかけている。
この間のことに関係がある遺跡なんですか、と。
俺は静かにうなずいた。
「大丈夫、ちょっと見てみるだけだし。すぐ戻るから」
俺はにっこり笑って通路に入った。
鍵の遺跡と思しき内部。
そこで俺を待ち受けるのはなんなのか──。
凪沙さんのダウジングに従って俺たちがやって来たのは、町はずれの森林公園だった。
「確かにここ。でも木しかない。不思議」
首をかしげる凪沙さん。
「確かに遺跡のビジョンが見えたのに」
「んー、ダウジング失敗しちゃったとか?」
「分からない……」
月子の問いに、凪沙さんも歯切れの悪い答えを返す。
「まあ、何もなかったなら、それはそれで──みんなでピクニックに来たとでも思って、気持ちを切り替えましょう~」
と、雫。
「私、お菓子を持ってきましたよ」
ああ、週末に買ってきてくれたお菓子か。
用意がいいな、雫。
「みんなで食べませんか~」
「雫、偉い」
「わーい、雫ちゃんありがとう」
たちまち目を輝かせる凪沙さんと月子。
「完全にピクニックのノリだな」
俺は思わず苦笑した。
ダウジングは失敗したけど、こうやってみんなでピクニック気分で遊べるのは、それはそれでいいか。
鍵の遺跡は、また地道に探そう──。
ずぶりっ……!
突然、地面が沈んだ。
「えっ……!?」
まさか、これは──落とし穴!
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
雫たちが悲鳴を上げる。
俺たちは数メートル下まで落下していく。
「くっ……月子!」
俺は月子に呼びかけつつ、空中で体勢を整えた。
「りょーかいっ」
月子もまた、常人離れした身体能力を活かし、空中で一回転。
俺が空中で雫を、月子が凪沙さんをそれぞれ抱き止め、なんとか着地できた。
下が柔らかめの土でクッション代わりになってくれたことも幸いし、全員怪我はないようだ。
「落とし穴までダウジングできなかった……遺跡も見つけられなかったし、今日は本当に不覚」
凪沙さんは、むー、と口を尖らせている。
「みんなを危険にさらした……」
珍しく落ちこんでいるらしい。
「まあ、怪我はなかったんだし」
なだめる月子。
「そうですよ、凪沙さん。あ、えっと……ありがとうございました、彼方くん」
俺に抱きかかえられている雫も凪沙さんを慰め、それから俺に向かって微笑んだ。
「ただ、その……この格好はちょっと恥ずかしくて、えっと」
急に顔を赤らめる雫。
「あ、悪い」
俺は慌てて彼女を下ろした。
「せっかくのチャンスだし、もっと抱いてもらえばいい」
凪沙さんが横からボソリと言った。
「いや、チャンスって……」
「はっ、確かに──痛恨です」
思わず苦笑した俺の横で、雫がショックを受けた顔をしている。
えっと……どういう意味だ?
「いいなー、ボクも先輩に抱きかかえられたかった……」
月子までポツリとつぶやいてるし。
と──、
「これは……!」
周囲を見回し、俺はあるものを発見した。
土の中に、明らかに人工物と分かる石板状のものが見える。
もしかして、これは──。
「扉……か」
鍵の遺跡に続いているんだろうか。
それとも──。
取っ手を握り、ゆっくりと開く。
ギギィ、と軋んだ音とともに、石の扉が開いた。
その向こうには、石造りの通路が続いている。
「遺跡……?」
首をかしげる雫。
「ダウジング通り。わたしは最初から確信していた」
いきなり勝ち誇る凪沙さん。
いや、さっきあなた『不覚』とか言ってましたよね?
……まあ、ここを見つけられたのは凪沙さんのおかげだから文句はないんだけど。
「すごーい。向こうに何があるんだろ」
目をキラキラさせる月子。
「行ってみる」
俺は彼女たちにそう言った。
「行くって、この中に……ですか?」
「だ、大丈夫、先輩? 崩れちゃうんじゃない?」
「危険かもしれないから、まず俺一人で行ってみる」
雫と月子に答える俺。
「駄目ですよ、彼方くん。危ないことしちゃ」
雫がたしなめた。
その瞳が問いかけている。
この間のことに関係がある遺跡なんですか、と。
俺は静かにうなずいた。
「大丈夫、ちょっと見てみるだけだし。すぐ戻るから」
俺はにっこり笑って通路に入った。
鍵の遺跡と思しき内部。
そこで俺を待ち受けるのはなんなのか──。
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