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第7章 勇者の意志
8 遺跡内部2
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魔獣を倒し、俺はさらに進んでいた。
外には雫たち三人を待たせているから、あまり長居はできない。
早いところ、内部の様子を探って、みんなの元に戻らないとな。
本格的な探索は、その後ですればいい。
「ここにも魔獣が出るんだな……」
「この遺跡も異世界からこの世界に転移してきたものだろう。二つの世界間の通路が遺跡内部のどこかにあるはずだ」
と、夜天。
「魔獣はそこから出てきたものと推測される。どの程度の規模の通路かにもよるが、場合によっては中位や高位の魔族が出てこないとも限らない。気をつけろ」
「……高位魔族が出てくると、厄介だな」
前に中位魔族のギシュリを退けることはできたけれど、高位魔族となると別格だ。
以前、それと同等の力を持つとされる災禍級魔獣を打ち破ったことはある。
だけど絶対確実に勝てるってわけじゃない。
何よりも、俺が望むのは闘争じゃない。
そんなものは一周目の人生だけで十分だ。
今の俺が欲するのは、平穏な生活。
雫たちと過ごす、穏やかで、優しい時間──。
それを確保するために、絶対に封印を成功させたい。
俺はさらに進んだ。
「人間の匂い……なぜだ、こんな場所に……」
突然、背後に気配が現れた。
俺は反射的に前方に身を投げ出す。
一瞬前まで俺がいた場所を光る何かが薙いでいく。
「お前は──」
振り返ると、そこには異形の影がたたずんでいる。
細い腕は地面に届くほどに長い。
刃のような爪は一メートル以上はあるだろうか。
先ほど攻撃してきたのも、この爪によるものだろう。
足は全部で六本。
昆虫のような節足型だ。
魔族──か。
「ヅァレムだ。食らってやるぞ、人間……」
名乗った魔族の口が耳元まで開いた。
その姿が消えうせる。
気配を感じず、一瞬で俺の背後に回りこむヅァレム。
これは──スキル【気配遮断】か。
「死ね!」
「お前が──な」
奴の爪撃は空を切った。
「ど、どこだ……!?」
「【気配遮断】を使えるのはお前だけじゃない」
奴と同じスキル【気配遮断】を発動し、俺は一瞬でヅァレムの背後に回りこんでいた。
「じゃあな」
振るった夜天でその首を刎ねる。
「中位魔族はもはや問題なく倒せるようだな」
夜天が満足げに言った。
「……たぶん前に戦ったギシュリと同レベルの相手だと思うけど、大して手ごわさを感じなかったな」
俺は刀身についた青い返り血を払い、つぶやいた。
やはりレベルが上がったおかげだろう。
しかも、今の三連戦でさらに経験値を得ることができた。
──その後も、道中で何体かの魔族に遭遇した。
いずれも中位魔族だが、すでにレベル150を超えた俺の敵じゃない。
問題なく倒し、さらにレベルアップ。
遺跡の最奥にたどり着くころにはレベル170になっていた。
「まあ、一周目の俺はレベル700を超えていたし、まだまだ届かないけど」
「……おかしい」
「夜天?」
「中級とはいえ、魔族がそう簡単にこの世界まで来られるとは思えない。一体ならともかく、ここまで五体だぞ」
「確かに、な」
俺も少し気になっていた。
「扉の遺跡よりも巨大な異空間通路が、この遺跡に開いている……とか?」
「むう……異空間通路もそう簡単に作り出せるものではないし、一体──」
俺の問いに、夜天は腑に落ちない様子の答えを返す。
「もっと大きな力が働いている、のか……」
と、ひとりごちた。
「どういう意味だ、夜天?」
俺が聞き返した、そのときだった。
「……なるほど、確かに猛者のようだ。中位魔族を立て続けに倒すとは。勇者候補に選ばれるだけのことはある」
かつ、かつ、と足音が近づいてきた。
場に、すさまじい威圧感が膨れ上がる。
「っ……!」
俺は息を飲んだ。
この、声は──。
「ベルク殿やフィーラ殿を倒したというのも、うなずける」
現れたのは、長い黒髪の美丈夫。
がつん、と胸の前で拳を合わせ、俺を見据える。
その瞳に強い闘志の光が浮かんでいる。
「ナダレ……!」
かつて勇者パーティの一員だった世界最強の武闘家の姿が、そこにあった。
外には雫たち三人を待たせているから、あまり長居はできない。
早いところ、内部の様子を探って、みんなの元に戻らないとな。
本格的な探索は、その後ですればいい。
「ここにも魔獣が出るんだな……」
「この遺跡も異世界からこの世界に転移してきたものだろう。二つの世界間の通路が遺跡内部のどこかにあるはずだ」
と、夜天。
「魔獣はそこから出てきたものと推測される。どの程度の規模の通路かにもよるが、場合によっては中位や高位の魔族が出てこないとも限らない。気をつけろ」
「……高位魔族が出てくると、厄介だな」
前に中位魔族のギシュリを退けることはできたけれど、高位魔族となると別格だ。
以前、それと同等の力を持つとされる災禍級魔獣を打ち破ったことはある。
だけど絶対確実に勝てるってわけじゃない。
何よりも、俺が望むのは闘争じゃない。
そんなものは一周目の人生だけで十分だ。
今の俺が欲するのは、平穏な生活。
雫たちと過ごす、穏やかで、優しい時間──。
それを確保するために、絶対に封印を成功させたい。
俺はさらに進んだ。
「人間の匂い……なぜだ、こんな場所に……」
突然、背後に気配が現れた。
俺は反射的に前方に身を投げ出す。
一瞬前まで俺がいた場所を光る何かが薙いでいく。
「お前は──」
振り返ると、そこには異形の影がたたずんでいる。
細い腕は地面に届くほどに長い。
刃のような爪は一メートル以上はあるだろうか。
先ほど攻撃してきたのも、この爪によるものだろう。
足は全部で六本。
昆虫のような節足型だ。
魔族──か。
「ヅァレムだ。食らってやるぞ、人間……」
名乗った魔族の口が耳元まで開いた。
その姿が消えうせる。
気配を感じず、一瞬で俺の背後に回りこむヅァレム。
これは──スキル【気配遮断】か。
「死ね!」
「お前が──な」
奴の爪撃は空を切った。
「ど、どこだ……!?」
「【気配遮断】を使えるのはお前だけじゃない」
奴と同じスキル【気配遮断】を発動し、俺は一瞬でヅァレムの背後に回りこんでいた。
「じゃあな」
振るった夜天でその首を刎ねる。
「中位魔族はもはや問題なく倒せるようだな」
夜天が満足げに言った。
「……たぶん前に戦ったギシュリと同レベルの相手だと思うけど、大して手ごわさを感じなかったな」
俺は刀身についた青い返り血を払い、つぶやいた。
やはりレベルが上がったおかげだろう。
しかも、今の三連戦でさらに経験値を得ることができた。
──その後も、道中で何体かの魔族に遭遇した。
いずれも中位魔族だが、すでにレベル150を超えた俺の敵じゃない。
問題なく倒し、さらにレベルアップ。
遺跡の最奥にたどり着くころにはレベル170になっていた。
「まあ、一周目の俺はレベル700を超えていたし、まだまだ届かないけど」
「……おかしい」
「夜天?」
「中級とはいえ、魔族がそう簡単にこの世界まで来られるとは思えない。一体ならともかく、ここまで五体だぞ」
「確かに、な」
俺も少し気になっていた。
「扉の遺跡よりも巨大な異空間通路が、この遺跡に開いている……とか?」
「むう……異空間通路もそう簡単に作り出せるものではないし、一体──」
俺の問いに、夜天は腑に落ちない様子の答えを返す。
「もっと大きな力が働いている、のか……」
と、ひとりごちた。
「どういう意味だ、夜天?」
俺が聞き返した、そのときだった。
「……なるほど、確かに猛者のようだ。中位魔族を立て続けに倒すとは。勇者候補に選ばれるだけのことはある」
かつ、かつ、と足音が近づいてきた。
場に、すさまじい威圧感が膨れ上がる。
「っ……!」
俺は息を飲んだ。
この、声は──。
「ベルク殿やフィーラ殿を倒したというのも、うなずける」
現れたのは、長い黒髪の美丈夫。
がつん、と胸の前で拳を合わせ、俺を見据える。
その瞳に強い闘志の光が浮かんでいる。
「ナダレ……!」
かつて勇者パーティの一員だった世界最強の武闘家の姿が、そこにあった。
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