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第7章 勇者の意志
10 武闘家ナダレ
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「貴殿が夏瀬彼方か。お初にお目にかかる。私はナダレと申す者」
ナダレは俺に向かって丁寧に一礼した。
己に厳しく、他人に優しく、礼をわきまえ──非の打ちどころのない紳士的な雰囲気。
実際、ナダレは実力と仁徳を兼ね備え、多くの人から慕われていた。
だけど、俺は知っている。
奴の本性は、強烈な戦闘マニアである。
その闘争本能は、妄執と呼んでも差し支えのないもの。
『一周目』の人生では、自分より強くなってしまった俺に嫉妬し、襲いかかってきた。
さすがに強敵だった。
苦戦の末に、俺はナダレを打ち倒した。
だが、それは勇者がかつての仲間を乱心によって殺した──というふうに広まり(ベルク辺りが広めたようだ)、俺は追われる身となった。
とはいえ、今はまだそんな関係には至っていない。
ナダレも紳士的な態度を崩さない。
「なんの用だ、ナダレ」
俺は警戒態勢のまま、たずねた。
『一周目』で初めて会ったとき、確かナダレのレベルは70から80くらいだったはず。
今の俺の敵じゃない。
だけど、ベルクにしろ、フィーラにしろ、『一周目』よりも強くなっている。
今の時間軸では、まだ身に着けていないはずのスキルを使い、レベルもずっと高い。
だとすれば、現時点のナダレも『一周目』のときより高レベルであることは、十分予想できた。
それが、どの程度なのか。
こいつは、俺と戦いに来たんだろうか?
俺はすでに異世界人のベルクとフィーラを殺している。
その敵討ちや制裁のために現れたのか。
それとも──?
「質問があって来た」
ナダレが言った。
飄々とした態度に敵意は見られない。
「貴殿はなぜ勇者になることを拒否した?」
「──見ず知らずのお前たちのために、命を懸ける義理はない。そう考えただけだ」
「嘘だな」
即答された。
「なんの根拠があって言うんだ、ナダレ」
「目を見れば分かる。貴殿は──他者のために命を懸けられる人種だ。人を想い、人を守り、剣を振る──真の勇者の資質を備えし者。だからこそ選ばれたのだろうが、な」
「買いかぶりすぎだ。俺はそんな正義感は持ってないし、もっと利己主義だよ」
「私は貴殿の上っ面ではなく、魂の部分を見て、言っている。感じるのだ、勇者の資質を」
と、ナダレ。
随分と俺を買ってくれているようだ。
そういえば、『一周目』でも俺のことを一番評価してくれていたのは、ベルクでもフィーラでもアリアンでもなく──ナダレだった。
「……勇者の資質、ね」
「その貴殿が、我らが世界ファルセリアを見捨てるとは思えない。他に理由があるのだろう?」
深い光をたたえた黒瞳が俺を見据える。
俺の心の底まで見透かすような眼光──。
理由なら、あるさ。
俺は『一周目』の人生で、魔王退治の後にさんざん異世界人たちから迫害されたんだからな。
だけど、それを『二周目』のナダレに言っても仕方がない。
俺にとっては地続きの人生経験でも、ナダレにとっては未知の話でしかない。
「理由なら言ったとおりだ。見ず知らずのお前たちのために、命を懸ける義理はない」
「答えるつもりはない、ということか」
ナダレがわずかに眉を寄せた。
──戦う気か?
フィーラのように、俺を殺して、新たな勇者候補を出現させようとするのか。
ベルクのように、感情のままに俺を殺そうとするのか。
あるいは──。
「なら、そのことはいい。本題に入ろう」
と、ナダレ。
ん、本題?
今までのは、単なる前振りだったということか?
だけど、俺が勇者になるか、ならないか、というファルセリアにとっては重大な事項が前振りになるとしたら──。
ナダレの本題っていうのは、なんだ。
「私はこの世界──『第十五世界』に来る際、誤って別の時代に迷いこんでしまった。貴殿たちの歴史で言うと『戦国時代』というやつだな」
語り始めるナダレ。
「そこで数年を過ごした。まあ、いくつかの事件に巻きこまれたが、その辺はどうでもよい。この時代になんとかたどり着けないかと方策を探している最中、私はある存在に出会った」
「ある……存在?」
「運命の、女神だ」
ナダレが厳かに告げた。
ナダレは俺に向かって丁寧に一礼した。
己に厳しく、他人に優しく、礼をわきまえ──非の打ちどころのない紳士的な雰囲気。
実際、ナダレは実力と仁徳を兼ね備え、多くの人から慕われていた。
だけど、俺は知っている。
奴の本性は、強烈な戦闘マニアである。
その闘争本能は、妄執と呼んでも差し支えのないもの。
『一周目』の人生では、自分より強くなってしまった俺に嫉妬し、襲いかかってきた。
さすがに強敵だった。
苦戦の末に、俺はナダレを打ち倒した。
だが、それは勇者がかつての仲間を乱心によって殺した──というふうに広まり(ベルク辺りが広めたようだ)、俺は追われる身となった。
とはいえ、今はまだそんな関係には至っていない。
ナダレも紳士的な態度を崩さない。
「なんの用だ、ナダレ」
俺は警戒態勢のまま、たずねた。
『一周目』で初めて会ったとき、確かナダレのレベルは70から80くらいだったはず。
今の俺の敵じゃない。
だけど、ベルクにしろ、フィーラにしろ、『一周目』よりも強くなっている。
今の時間軸では、まだ身に着けていないはずのスキルを使い、レベルもずっと高い。
だとすれば、現時点のナダレも『一周目』のときより高レベルであることは、十分予想できた。
それが、どの程度なのか。
こいつは、俺と戦いに来たんだろうか?
俺はすでに異世界人のベルクとフィーラを殺している。
その敵討ちや制裁のために現れたのか。
それとも──?
「質問があって来た」
ナダレが言った。
飄々とした態度に敵意は見られない。
「貴殿はなぜ勇者になることを拒否した?」
「──見ず知らずのお前たちのために、命を懸ける義理はない。そう考えただけだ」
「嘘だな」
即答された。
「なんの根拠があって言うんだ、ナダレ」
「目を見れば分かる。貴殿は──他者のために命を懸けられる人種だ。人を想い、人を守り、剣を振る──真の勇者の資質を備えし者。だからこそ選ばれたのだろうが、な」
「買いかぶりすぎだ。俺はそんな正義感は持ってないし、もっと利己主義だよ」
「私は貴殿の上っ面ではなく、魂の部分を見て、言っている。感じるのだ、勇者の資質を」
と、ナダレ。
随分と俺を買ってくれているようだ。
そういえば、『一周目』でも俺のことを一番評価してくれていたのは、ベルクでもフィーラでもアリアンでもなく──ナダレだった。
「……勇者の資質、ね」
「その貴殿が、我らが世界ファルセリアを見捨てるとは思えない。他に理由があるのだろう?」
深い光をたたえた黒瞳が俺を見据える。
俺の心の底まで見透かすような眼光──。
理由なら、あるさ。
俺は『一周目』の人生で、魔王退治の後にさんざん異世界人たちから迫害されたんだからな。
だけど、それを『二周目』のナダレに言っても仕方がない。
俺にとっては地続きの人生経験でも、ナダレにとっては未知の話でしかない。
「理由なら言ったとおりだ。見ず知らずのお前たちのために、命を懸ける義理はない」
「答えるつもりはない、ということか」
ナダレがわずかに眉を寄せた。
──戦う気か?
フィーラのように、俺を殺して、新たな勇者候補を出現させようとするのか。
ベルクのように、感情のままに俺を殺そうとするのか。
あるいは──。
「なら、そのことはいい。本題に入ろう」
と、ナダレ。
ん、本題?
今までのは、単なる前振りだったということか?
だけど、俺が勇者になるか、ならないか、というファルセリアにとっては重大な事項が前振りになるとしたら──。
ナダレの本題っていうのは、なんだ。
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ナダレが厳かに告げた。
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