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第7章 勇者の意志
11 ナダレの提案
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戦国時代に迷いこんだナダレの元に、運命の女神が現れた──?
俺は驚いて彼を見つめる。
「その女神はラキシスと名乗った」
ナダレが告げた。
その言葉に、二度驚く。
俺の前に現れた女神さまは『アトロポス』という名前だった。
運命を司る女神っていうのは一柱じゃなかった、ってことか?
「運命の女神というのは、全部で三柱いるそうだ」
俺の内心の疑問を読み取ったかのように、ナダレが言った。
「アトロポス、ラキシス、クロト──彼女たちは、それぞれが三十三個の世界を管理している」
「三十三の、世界……?」
「世界というのは一つではない。隣り合い、あるいは重なり合いながら、複数存在しているそうだ」
ナダレが説明する。
「『マテリアノヴァ』と呼ばれるこの世界や、私が住む『ファルセリア』、他にも全部合わせて九十九の世界がある。その運行を──言い換えれば運命を、三女神が管理しているわけだ」
初めて聞く話ばかりだった。
「ラキシスは私に一つの使命を授けた。世界を魔族から救ってほしい、と」
ナダレが説明を続ける。
「アトロポスは『勇者』の力により、魔族の王を討つという手段を推奨した。だが、ラキシスの考えは違う。魔族が『ファルセリア』や『マテリアノヴァ』に来られないように、世界間通路そのものを塞ぐ──というものだった」
「世界間の通路を……できるのか、そんなことが?」
「簡単ではない。だが、不可能でもない」
俺の問いに答えるナダレ。
「それが成功すれば、この世界に魔族が来なくなる、ってことか」
「左様。今も言ったとおり、簡単なことではないが、私や貴殿の力があれば勝算はある。それにアリアンもいるしな」
と、ナダレ。
「勝算……か」
「戦闘になる」
ナダレが言った。
「戦闘……」
「『門番』と呼ばれる高位魔族との、な」
初めて聞く魔族の名前だ。
「奴は強い。かなり激しい戦闘になるだろう。ベルクやフィーラが死んでしまったのは惜しいが……私たち三人だけでも、なんとかできるだろう」
と、ナダレ。
「『門番』を倒せば、魔界の者がこの世界やファルセリアに侵入することはできなくなる。正確には、いくつかの手順を踏むことになるが……最大の難関は、その『門番』の撃破だな」
──本当、なのか。
ナダレの言っていることが真実なら、協力したいところだ。
もちろん、具体的な方法を聞いたうえでだけど。
この世界が魔族や魔獣の脅威にさらされなくなる。
雫たちが危険な目に遭う可能性もなくなる。
だけど、何かが引っかかる。
理屈じゃない。
本能の部分で、俺の中の何かが警鐘を鳴らしていた。
ナダレを信用していいのか?
もう一度、考えてみろ──と。
「すぐに言われても、貴殿も戸惑うばかりだろう。そうだな……一週間後に答えを教えてくれ。私はこの町の外れにある一軒家にいる」
言って、ナダレは背を向けた。
「良い返事を期待している」
そのまま去っていくナダレ。
「おい、待てよ──」
追いかけようとしたが、奴はあっという間に駆け去っていった。
高速移動スキル『疾駆』か。
俺の手持ちスキルじゃ、あのスピードには追いつけない。
まるで逃げるように去っていったナダレの態度が気になった。
「まったく……」
本当に『門番』とかいう奴を倒せば、魔族がこの世界やファルセリアに現れなくなるのか?
もっと詳しく話を聞きたかったのに──言いたいことだけ言って、さっさといなくなってしまった。
そういえば、『一周目』でもこういう奴だったな。
肝心なことは話したがらず。
こうと決めたら、誰に何を言われようとも、頑として考えを曲げない。
「……どう思う、夜天」
俺はため息まじりにたずねた。
「可能性としてはあり得る話だ」
答える夜天。
「奴の話に乗ったほうがいいかな?」
言いながら、胸の奥に昏い炎が燃え上がるのを感じた。
『一周目』のナダレの姿が脳裏にちらつく。
『お前さえ死ねば! この私こそが最強だ!』
『憎い……お前の強さが憎いぞ、彼方!』
『お前など、もう仲間ではない! 私より強い者が存在することは許されんのだ!』
『お前さえ消えれば──』
『消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ……』
怨嗟のこもった声、声、声。
結局はあいつも、俺を裏切った。
俺を、殺そうとした。
仲間だと信じていたのに──。
だけど、ナダレの話に乗れば、この世界を魔族や魔獣の脅威から救えるかもしれない。
雫たちが危険にさらされることもなくなる。
俺自身の個人的な思いやわだかまりは捨てて、ここは奴に協力すべきだろうか。
俺は驚いて彼を見つめる。
「その女神はラキシスと名乗った」
ナダレが告げた。
その言葉に、二度驚く。
俺の前に現れた女神さまは『アトロポス』という名前だった。
運命を司る女神っていうのは一柱じゃなかった、ってことか?
「運命の女神というのは、全部で三柱いるそうだ」
俺の内心の疑問を読み取ったかのように、ナダレが言った。
「アトロポス、ラキシス、クロト──彼女たちは、それぞれが三十三個の世界を管理している」
「三十三の、世界……?」
「世界というのは一つではない。隣り合い、あるいは重なり合いながら、複数存在しているそうだ」
ナダレが説明する。
「『マテリアノヴァ』と呼ばれるこの世界や、私が住む『ファルセリア』、他にも全部合わせて九十九の世界がある。その運行を──言い換えれば運命を、三女神が管理しているわけだ」
初めて聞く話ばかりだった。
「ラキシスは私に一つの使命を授けた。世界を魔族から救ってほしい、と」
ナダレが説明を続ける。
「アトロポスは『勇者』の力により、魔族の王を討つという手段を推奨した。だが、ラキシスの考えは違う。魔族が『ファルセリア』や『マテリアノヴァ』に来られないように、世界間通路そのものを塞ぐ──というものだった」
「世界間の通路を……できるのか、そんなことが?」
「簡単ではない。だが、不可能でもない」
俺の問いに答えるナダレ。
「それが成功すれば、この世界に魔族が来なくなる、ってことか」
「左様。今も言ったとおり、簡単なことではないが、私や貴殿の力があれば勝算はある。それにアリアンもいるしな」
と、ナダレ。
「勝算……か」
「戦闘になる」
ナダレが言った。
「戦闘……」
「『門番』と呼ばれる高位魔族との、な」
初めて聞く魔族の名前だ。
「奴は強い。かなり激しい戦闘になるだろう。ベルクやフィーラが死んでしまったのは惜しいが……私たち三人だけでも、なんとかできるだろう」
と、ナダレ。
「『門番』を倒せば、魔界の者がこの世界やファルセリアに侵入することはできなくなる。正確には、いくつかの手順を踏むことになるが……最大の難関は、その『門番』の撃破だな」
──本当、なのか。
ナダレの言っていることが真実なら、協力したいところだ。
もちろん、具体的な方法を聞いたうえでだけど。
この世界が魔族や魔獣の脅威にさらされなくなる。
雫たちが危険な目に遭う可能性もなくなる。
だけど、何かが引っかかる。
理屈じゃない。
本能の部分で、俺の中の何かが警鐘を鳴らしていた。
ナダレを信用していいのか?
もう一度、考えてみろ──と。
「すぐに言われても、貴殿も戸惑うばかりだろう。そうだな……一週間後に答えを教えてくれ。私はこの町の外れにある一軒家にいる」
言って、ナダレは背を向けた。
「良い返事を期待している」
そのまま去っていくナダレ。
「おい、待てよ──」
追いかけようとしたが、奴はあっという間に駆け去っていった。
高速移動スキル『疾駆』か。
俺の手持ちスキルじゃ、あのスピードには追いつけない。
まるで逃げるように去っていったナダレの態度が気になった。
「まったく……」
本当に『門番』とかいう奴を倒せば、魔族がこの世界やファルセリアに現れなくなるのか?
もっと詳しく話を聞きたかったのに──言いたいことだけ言って、さっさといなくなってしまった。
そういえば、『一周目』でもこういう奴だったな。
肝心なことは話したがらず。
こうと決めたら、誰に何を言われようとも、頑として考えを曲げない。
「……どう思う、夜天」
俺はため息まじりにたずねた。
「可能性としてはあり得る話だ」
答える夜天。
「奴の話に乗ったほうがいいかな?」
言いながら、胸の奥に昏い炎が燃え上がるのを感じた。
『一周目』のナダレの姿が脳裏にちらつく。
『お前さえ死ねば! この私こそが最強だ!』
『憎い……お前の強さが憎いぞ、彼方!』
『お前など、もう仲間ではない! 私より強い者が存在することは許されんのだ!』
『お前さえ消えれば──』
『消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ……』
怨嗟のこもった声、声、声。
結局はあいつも、俺を裏切った。
俺を、殺そうとした。
仲間だと信じていたのに──。
だけど、ナダレの話に乗れば、この世界を魔族や魔獣の脅威から救えるかもしれない。
雫たちが危険にさらされることもなくなる。
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