1 / 27
1 未来のあなた
1
しおりを挟む
外は暑いでしょう。かわいそうに。
あ、でも、あなたたちはもっともっと暑い日がくるのを待っているのよね。
逆に冷房のガンガン効いた、この狭い教室に閉じ込められてるわたしの方がかわいそうなのかな。
わたし、森咲はるか。高校一年生。
帰りのホームルーム中、わたしは教室の窓から外を眺めながら、夏本番に向けて発声練習を始めたセミたちの声に耳を傾けていた。
この前の席替えで窓際の一番後ろの席になって以来、
しょっちゅう窓の外を眺めてしまう。
わたしの教室は二階だから眺めがよくて、正門の外を通る人が見えれば、おしゃれして今からどちらにお出かけですか?なんて考えちゃったり。
木を上から眺めては木太郎、木一郎と名前もつけたりした。
木太郎、木一郎はわたしの子分で、学校が終わるまでわたしを待っていて……。危ない、危ない。
これ以上の妄想、完全に変人だよね。
「もうすぐ夏休みだからって浮かれるなよー! 期末テストが赤点だったやつは再テストだってあるんだからな」
担任の先生がどこか浮き足だってざわつく教室に渇を入れた。
わたしが窓の外に現実逃避しているわけ。
それは夏休みまで一ヶ月を切り、クラスの雰囲気がソワソワしているから。
わたしの数学のテストが赤点だったことよりもずっとずっと、わたしの気持ちを憂鬱にさせている元凶だ。
海に行こうとか、花火大会とか、恋の季節とか。
高校生になって初めての夏休みという特別感も、みんなの期待に拍車をかけているみたいだ。
友達、恋人......なんてちっとも羨ましくなんてないもんね。
そんなの、ただ気疲れするだけ。
チラリと教室のみんなに目をやってため息をつくと、わたしはまた窓の外に視線を移した。
ん?
正門のそばに黒い人影を見つけて、思わず目を凝らした。
だって、この暑い時期に長袖の真っ黒なパーカーに、顔を隠すように目深にかぶったフード。
いかにも怪しげな人影は、ポケットに手をいれている立ち姿からみて、たぶん男の人だと思うけれど。
心なしか、こちらを見ているような目があっているような気がする。
まさか……セミの生まれ変わり?
わたしがあまりにもセミの気持ちに寄り添ったから、会いに来て……
「ぷぷっ」
思わず小さく笑い声がもれた。
現実逃避にもほどがある。わたしってほんとバカなことばかり考えてるな。
キーンコーンカーンコーン
時計に目をやると、五時半のチャイム。
わたしが正門に視線を戻したときには、もうその人影は消えていた。
あ、でも、あなたたちはもっともっと暑い日がくるのを待っているのよね。
逆に冷房のガンガン効いた、この狭い教室に閉じ込められてるわたしの方がかわいそうなのかな。
わたし、森咲はるか。高校一年生。
帰りのホームルーム中、わたしは教室の窓から外を眺めながら、夏本番に向けて発声練習を始めたセミたちの声に耳を傾けていた。
この前の席替えで窓際の一番後ろの席になって以来、
しょっちゅう窓の外を眺めてしまう。
わたしの教室は二階だから眺めがよくて、正門の外を通る人が見えれば、おしゃれして今からどちらにお出かけですか?なんて考えちゃったり。
木を上から眺めては木太郎、木一郎と名前もつけたりした。
木太郎、木一郎はわたしの子分で、学校が終わるまでわたしを待っていて……。危ない、危ない。
これ以上の妄想、完全に変人だよね。
「もうすぐ夏休みだからって浮かれるなよー! 期末テストが赤点だったやつは再テストだってあるんだからな」
担任の先生がどこか浮き足だってざわつく教室に渇を入れた。
わたしが窓の外に現実逃避しているわけ。
それは夏休みまで一ヶ月を切り、クラスの雰囲気がソワソワしているから。
わたしの数学のテストが赤点だったことよりもずっとずっと、わたしの気持ちを憂鬱にさせている元凶だ。
海に行こうとか、花火大会とか、恋の季節とか。
高校生になって初めての夏休みという特別感も、みんなの期待に拍車をかけているみたいだ。
友達、恋人......なんてちっとも羨ましくなんてないもんね。
そんなの、ただ気疲れするだけ。
チラリと教室のみんなに目をやってため息をつくと、わたしはまた窓の外に視線を移した。
ん?
正門のそばに黒い人影を見つけて、思わず目を凝らした。
だって、この暑い時期に長袖の真っ黒なパーカーに、顔を隠すように目深にかぶったフード。
いかにも怪しげな人影は、ポケットに手をいれている立ち姿からみて、たぶん男の人だと思うけれど。
心なしか、こちらを見ているような目があっているような気がする。
まさか……セミの生まれ変わり?
わたしがあまりにもセミの気持ちに寄り添ったから、会いに来て……
「ぷぷっ」
思わず小さく笑い声がもれた。
現実逃避にもほどがある。わたしってほんとバカなことばかり考えてるな。
キーンコーンカーンコーン
時計に目をやると、五時半のチャイム。
わたしが正門に視線を戻したときには、もうその人影は消えていた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
死にキャラに転生したけど、仲間たちに全力で守られて溺愛されています。
藤原遊
恋愛
「死ぬはずだった運命なんて、冒険者たちが全力で覆してくれる!」
街を守るために「死ぬ役目」を覚悟した私。
だけど、未来をやり直す彼らに溺愛されて、手放してくれません――!?
街を守り「死ぬ役目」に転生したスフィア。
彼女が覚悟を決めたその時――冒険者たちが全力で守り抜くと誓った!
未来を変えるため、スフィアを何度でも守る彼らの執着は止まらない!?
「君が笑っているだけでいい。それが、俺たちのすべてだ。」
運命に抗う冒険者たちが織り成す、異世界溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる