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3 あなたのギター
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「......あ、そうだ」
視線がぶつかると、唯は慌ててわたしから離れてギターケースに手をかけた。
唯の顔が少しだけ赤い気がする。
わたしの顔もきっとそうだ。
「ギター弾いてもいい? はるかちゃんを想って作った曲があるよ......いや、ごめん。やっぱり弾くのやめようかな。なんか変に緊張するわ」
唯はギターのボディを手のひらでタン、タンとたたきながら迷っているみたいだ。
「聞いてみたいな」
「うーん。でも、はるかちゃん感動してまた泣くんじゃないかなー?」
ふふっと冗談っぽく笑う唯の肩をたたいて、
「へぇー? 自分でハードルあげますねぇ。それじゃ、お願いします!」
唯の冗談にのって大げさに拍手するわたし。
参ったなぁと頭をかいていた唯のやわらかな笑顔が、ふぅ、と息を吐くと同時に真剣に変わった。
静かな音色で始まったギターの音が、わたしの胸をキュッと締め付けた。
一瞬で心を奪われるなんて経験、今まで知らなかった。
息をするのも忘れてわたしの耳も目もすべてが唯に釘付けになる。
ひとつひとつの音がしとしと降る雨みたいに、わたしの心に滲んでいく。
切なく雨のようだった音色がだんだんと、あたたかな春のような音色へ変わって、あのときと同じ爽やかな風が心に吹いた。
体育館裏の非常階段で現代の浅井くんの顔を初めて見たときと同じ風。
フワッと心地よくて、わたしの心を愛で満たした。
大きな愛が優しく、でも強くわたしを包み込んでいる気がした。
すーっと空気に溶けるように終わった曲に、いつのまにか、わたしの目から涙がこぼれていた。
「……聞いてくれてありがとう」
伏し目がちな唯の熱い瞳の奥でも光が揺れていた。
愛しさと悲しみが入り交じったような表情の唯は、
「ほら、やっぱり泣いた」
そう言ってすぐにいつものふにゃりとした笑顔に戻ってしまったけれど、あの音色と表情はわたしの胸に焼きついて離れそうになかった。
「だ、だって......」
言葉が続かないわたしの頭を唯が撫でてくれて、また顔が赤くなってしまいそうと思ったとき、
「ぐす、ぐす......」
「ん?」
「ん?」
明らかにわたしではない派手に鼻をすする音が聞こえた。
部屋の外の廊下からだ。
急いでドアを開けてみると、お母さんが廊下の壁に手をついてすすり泣いていた。
「ごめんなさいね、キッチンでお茶を淹れようとしたらギターのきれいな音色が聞こえてきたものだから。吸い寄せられるように聞き入ってしまって。自然と涙が」
「ぷぷぷ、お母さんったら泣きすぎだよ!」
感動覚め止まない様子で、瞳をうるうるさせているお母さんに、わたしも唯も吹き出して笑ってしまった。
「ふふ、じゃあ俺......僕はこれで失礼します。突然お邪魔してすみませんでした」
「あら、何のお構いもできなくて。お茶だけでも飲んでいかないかしら」
お母さんは残念そうに引き留めたけれど、またの機会にと唯はペコリとお辞儀をして、わたしには、じゃあまた学校でなと早口で言って軽く手をふった。
まだ唯のギターの余韻が残っていて夢の中にいるような気分だったわたしには、玄関のドアがガチャンと音をたてたのだけ分かった。
呆然と玄関のドアを見つめて動けないでいると、
「とてもいい子そうな彼氏ね。すごくはるかのことを大切に思っているのが分かったわ」
お母さんがわたしに優しく声をかけた。
「うん......。って、彼氏なんかじゃないよ! でもわたし、さっきお礼言いそびれちゃったから……」
「そうね。今だったら追いつけるわよ」
お母さんの言葉に背中を押されて、唯を追いかけ玄関を出た。
視線がぶつかると、唯は慌ててわたしから離れてギターケースに手をかけた。
唯の顔が少しだけ赤い気がする。
わたしの顔もきっとそうだ。
「ギター弾いてもいい? はるかちゃんを想って作った曲があるよ......いや、ごめん。やっぱり弾くのやめようかな。なんか変に緊張するわ」
唯はギターのボディを手のひらでタン、タンとたたきながら迷っているみたいだ。
「聞いてみたいな」
「うーん。でも、はるかちゃん感動してまた泣くんじゃないかなー?」
ふふっと冗談っぽく笑う唯の肩をたたいて、
「へぇー? 自分でハードルあげますねぇ。それじゃ、お願いします!」
唯の冗談にのって大げさに拍手するわたし。
参ったなぁと頭をかいていた唯のやわらかな笑顔が、ふぅ、と息を吐くと同時に真剣に変わった。
静かな音色で始まったギターの音が、わたしの胸をキュッと締め付けた。
一瞬で心を奪われるなんて経験、今まで知らなかった。
息をするのも忘れてわたしの耳も目もすべてが唯に釘付けになる。
ひとつひとつの音がしとしと降る雨みたいに、わたしの心に滲んでいく。
切なく雨のようだった音色がだんだんと、あたたかな春のような音色へ変わって、あのときと同じ爽やかな風が心に吹いた。
体育館裏の非常階段で現代の浅井くんの顔を初めて見たときと同じ風。
フワッと心地よくて、わたしの心を愛で満たした。
大きな愛が優しく、でも強くわたしを包み込んでいる気がした。
すーっと空気に溶けるように終わった曲に、いつのまにか、わたしの目から涙がこぼれていた。
「……聞いてくれてありがとう」
伏し目がちな唯の熱い瞳の奥でも光が揺れていた。
愛しさと悲しみが入り交じったような表情の唯は、
「ほら、やっぱり泣いた」
そう言ってすぐにいつものふにゃりとした笑顔に戻ってしまったけれど、あの音色と表情はわたしの胸に焼きついて離れそうになかった。
「だ、だって......」
言葉が続かないわたしの頭を唯が撫でてくれて、また顔が赤くなってしまいそうと思ったとき、
「ぐす、ぐす......」
「ん?」
「ん?」
明らかにわたしではない派手に鼻をすする音が聞こえた。
部屋の外の廊下からだ。
急いでドアを開けてみると、お母さんが廊下の壁に手をついてすすり泣いていた。
「ごめんなさいね、キッチンでお茶を淹れようとしたらギターのきれいな音色が聞こえてきたものだから。吸い寄せられるように聞き入ってしまって。自然と涙が」
「ぷぷぷ、お母さんったら泣きすぎだよ!」
感動覚め止まない様子で、瞳をうるうるさせているお母さんに、わたしも唯も吹き出して笑ってしまった。
「ふふ、じゃあ俺......僕はこれで失礼します。突然お邪魔してすみませんでした」
「あら、何のお構いもできなくて。お茶だけでも飲んでいかないかしら」
お母さんは残念そうに引き留めたけれど、またの機会にと唯はペコリとお辞儀をして、わたしには、じゃあまた学校でなと早口で言って軽く手をふった。
まだ唯のギターの余韻が残っていて夢の中にいるような気分だったわたしには、玄関のドアがガチャンと音をたてたのだけ分かった。
呆然と玄関のドアを見つめて動けないでいると、
「とてもいい子そうな彼氏ね。すごくはるかのことを大切に思っているのが分かったわ」
お母さんがわたしに優しく声をかけた。
「うん......。って、彼氏なんかじゃないよ! でもわたし、さっきお礼言いそびれちゃったから……」
「そうね。今だったら追いつけるわよ」
お母さんの言葉に背中を押されて、唯を追いかけ玄関を出た。
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