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5 デートのあなた
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観覧車を降りたら唯は今日は楽しかった、ありがとうと、いつもどおり笑った。
夢でも見ていたのかもと錯覚する。
でも胸の痛みが夢ではなかったと気づかせて余計に胸が痛くなる。
「ごめんね、はるかちゃん。みっともないとこ見せて」
なんとなく気まずいままバスで帰ってくると、暗い夜道をわたしの家まで歩きながら唯が静かに言った。
観覧車に乗る前は当たり前のように繋いでくれた手を、もう今は繋いでくれない。
「ねぇ、唯いなくなったりしないよね......」
突然、そんな不安が頭をよぎった。
ずっと唯がそばにいてくれるのが当たり前になりつつあったけれど、この状況はずっと続くの?
いつか唯は未来に帰ってしまうと心の隅で思ってはいたものの、気づかないふりをしてきた。
でも、その別れが迫っている。むしろ今日なのではないかという予感がした。
途端に体が震えそうなほど、どうしようもなく悲しくて不安で、
「んー。どうだかね」
「やだ」
とぼけるように首をかしげる唯に、わたしはしがみついていた。
ずっとこのぬくもりに触れていたい。
離れたくない。
立ち止まった唯がわたしの両肩を持ってゆっくり引き離して、身をかがめてわたしと同じ目線になった。
「遅かれ早かれ俺は消える運命なんだよ。ずっとはこの時間にいられないし、この時間の浅井唯は俺がきて過去を変えたことで心もはるかちゃんとの関係も変わった。もう未来で俺とは繋がらないんだ。俺の時間はどこにもない」
「......消えるってなに? いやだよ、ずっとそばにいて。お願い」
何を言っているのか分からない。
消える運命なんて急に言われても理解できるわけがなかった。
消えてどこに行ってしまうの?
まさか存在が消えてしまうってこと?
霧のように消えてしまうということ?
頭の中でたくさんの疑問が雪崩のように押し寄せた。
「大丈夫。現代の俺がいるから。落ち着いて、はるかちゃん」
なおもすがりつくわたしの頭を唯は優しく撫でた。
その顔はわたしよりずっと辛そうに笑っていたから、心がどうにかなってしまいそうなのにそれ以上引き留めることなんてできなくて、わたしはそっと唯から離れた。
わたしたちは、またゆっくりと家まで歩いた。
唯との思い出が頭をめぐる。
初めて唯が現れたのが遠い過去のことみたい。
あのときは怪しくて、まさかこんなにかけがえのない人になるとは思っていなかった。
「送ってくれてありがとう。ほんと、今日は楽しかった。今日だけじゃなくて今までもずっと。唯のおかげで楽しくて。思い出をたくさんありがとう」
うまく笑えていたか分からないけど、唯がほっとしたように微笑んだ。
「俺の方こそ思い出をたくさんありがとう」
「うん」
家に着いてしまうと、唯は何も言わずに手をふると背中を向けた。
追いかけて引き留めたい気持ちを堪えて、目に焼きつけるように見えなくなるまで見送った。
これでお別れなんだ。
こんなにも急に。
必死に涙を我慢していたはずなのに、いざ一人になったら涙は出なくて、きっと心の中で泣きつかれたのかもしれない。
「大丈夫。浅井くんがいる」
言い聞かせるようにつぶやいても、あなたはあなたのはずなのに、頭で分かっていてもどうしても心には唯との思い出があふれていた。
夢でも見ていたのかもと錯覚する。
でも胸の痛みが夢ではなかったと気づかせて余計に胸が痛くなる。
「ごめんね、はるかちゃん。みっともないとこ見せて」
なんとなく気まずいままバスで帰ってくると、暗い夜道をわたしの家まで歩きながら唯が静かに言った。
観覧車に乗る前は当たり前のように繋いでくれた手を、もう今は繋いでくれない。
「ねぇ、唯いなくなったりしないよね......」
突然、そんな不安が頭をよぎった。
ずっと唯がそばにいてくれるのが当たり前になりつつあったけれど、この状況はずっと続くの?
いつか唯は未来に帰ってしまうと心の隅で思ってはいたものの、気づかないふりをしてきた。
でも、その別れが迫っている。むしろ今日なのではないかという予感がした。
途端に体が震えそうなほど、どうしようもなく悲しくて不安で、
「んー。どうだかね」
「やだ」
とぼけるように首をかしげる唯に、わたしはしがみついていた。
ずっとこのぬくもりに触れていたい。
離れたくない。
立ち止まった唯がわたしの両肩を持ってゆっくり引き離して、身をかがめてわたしと同じ目線になった。
「遅かれ早かれ俺は消える運命なんだよ。ずっとはこの時間にいられないし、この時間の浅井唯は俺がきて過去を変えたことで心もはるかちゃんとの関係も変わった。もう未来で俺とは繋がらないんだ。俺の時間はどこにもない」
「......消えるってなに? いやだよ、ずっとそばにいて。お願い」
何を言っているのか分からない。
消える運命なんて急に言われても理解できるわけがなかった。
消えてどこに行ってしまうの?
まさか存在が消えてしまうってこと?
霧のように消えてしまうということ?
頭の中でたくさんの疑問が雪崩のように押し寄せた。
「大丈夫。現代の俺がいるから。落ち着いて、はるかちゃん」
なおもすがりつくわたしの頭を唯は優しく撫でた。
その顔はわたしよりずっと辛そうに笑っていたから、心がどうにかなってしまいそうなのにそれ以上引き留めることなんてできなくて、わたしはそっと唯から離れた。
わたしたちは、またゆっくりと家まで歩いた。
唯との思い出が頭をめぐる。
初めて唯が現れたのが遠い過去のことみたい。
あのときは怪しくて、まさかこんなにかけがえのない人になるとは思っていなかった。
「送ってくれてありがとう。ほんと、今日は楽しかった。今日だけじゃなくて今までもずっと。唯のおかげで楽しくて。思い出をたくさんありがとう」
うまく笑えていたか分からないけど、唯がほっとしたように微笑んだ。
「俺の方こそ思い出をたくさんありがとう」
「うん」
家に着いてしまうと、唯は何も言わずに手をふると背中を向けた。
追いかけて引き留めたい気持ちを堪えて、目に焼きつけるように見えなくなるまで見送った。
これでお別れなんだ。
こんなにも急に。
必死に涙を我慢していたはずなのに、いざ一人になったら涙は出なくて、きっと心の中で泣きつかれたのかもしれない。
「大丈夫。浅井くんがいる」
言い聞かせるようにつぶやいても、あなたはあなたのはずなのに、頭で分かっていてもどうしても心には唯との思い出があふれていた。
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