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陰謀編 領地経営④
領主、備蓄したいと申し出る
東西リグーリとついでに南リグーリの不満解消のメドも立ったし、コホンと咳払いをしてここから俺の本題である。ちょっと南リグーリで育てている果樹の種類と飼っている牛とヤギでチーズとか乳製品を作っているのか、めちゃくちゃ気になるけど、今は我慢だ。あとでちゃんと聞きだしておこう。
「クラークたちにも話してはいなかったが、リグーリに作ってほしいものがある。いや、作ると決めたものがある」
「なんですか?」
なんだかんだ言って、俺が作り出すものがオールポート領に潤いを齎していると確信しているクラークは、軽い調子で返してきた。うぅ~ん、絶対に必要なものだけど、この世界の人の意識は薄いみたいなんだよなぁ。
「麦の倉庫だ」
シーン……。やだ、沈黙が俺の心をチクチクするよ? お願い、誰か反応してちょうだい。
「セシル様、む、麦の倉庫って……麦を入れるので?」
やや青い顔をして西リグーリの村長が訊いてくる。俺はコクリと頷いて具体的な話を進めた。つまりどれぐらいの大きさの倉庫をどことどこに建てて、誰かどのように管理するのか、ってこと。管理するのはチャールズ。つまりリグーリの役所のトップが管理する。倉庫は常時鍵を厳重にかけ、その鍵はオールポート伯爵とリグーリ役所のトップしか持たない。クラークにも預けない。毎年一定量ずつ倉庫に納め、古い麦は安値で売る。
この倉庫の目的は……って、三人の村長の顔色がドドメ色なんですけど? え、いまの話のどこにそんな顔色になる要素があった? 俺が口を閉じマシンガントークを止め、コテンと首を傾げると、クラークが神妙な顔で問い質してきた。
「セシル様……それはリグーリの税を……実質増やすということですか?」
「は?」
なんで、そうなるの?
「納めている税分の麦とは別に倉庫に納める麦……。なんだよ。税は元に戻すって話だってのに、結局は増税か。役所や騎士の詰所も、払い鈍る農家から、麦をぶん取るつもりで建てたんだっ」
涙目で悔しそうにそう吐き捨てたのは南リグーリの村長で、東リグーリの村長は痛みを堪えるような表情でグッと拳を強く握りしめている。
「なに誤解している? 倉庫に入れる麦は税として納められた麦の一部だ。お前たちが払う税は変わらない」
当たり前でしょ? 俺がしたいのは農産物が不作、飢饉、水害などの災害時に配る非常食用の備蓄です! 農家だけに負担させることじゃないし、行政が請け負うものだから、これは納められた麦とオールポート伯爵家の私財で賄うの。なんて酷い誤解をしてやがる。コーディ一味たちのやらかしから、まだ完全に立ちなっていないのに、増税なんてしたら領民に恨まれるでしょ? 次代伯爵のシャーロットちゃんにキレイで豊かな領地を渡すつもりだから、反乱とか一揆とかやめてよね。
「不作? 飢饉? 伯爵様、リグーリはそんなことありませんけど?」
「……これからもないとは言い切れないだろう? あと、オールポート領だけでなく、他領や王都、他国まで援助することを考えろ」
自分のところだけ永遠に豊作祭りなんてあり得ないから。自分だけよければいいって考え方も改めなさい。オールポート領だけ腹いっぱい食べてたら、不作に喘ぐ領地から恨まれるでしょうが? そこから内乱、内戦に発展したらどうする? 俺は呑気な平和主義に育てられた異世界産の魂だから、そんな物騒な状況はイヤだね。だから、周りも腹いっぱい食べれる世界を作りたいのさ。
「他の領地……」
「王都……」
「他国まで……」
呆然とした顔で呟く三人の村長たち。はあああぁっ、もう、しょうがないな。
「嬉しくないのか? 自分たちが育てた麦で作ったパンを、美味い美味いと他の領の者が他国の者が口にするのを。知らず知らず王宮での料理に使われて高貴な者たちが口にする。お前たちが汗水垂らして作った麦で、やんごとない方々の体ができる。命を作る。これ以上ない誉だと思う。そして、何かがあったときに、差し出されるのもお前たちが育てた麦だ。命を分け与える慈悲と言ってもいいだろう」
俺の言葉が耳に入り頭で理解し心に沁みて、だんだんと顔色が明るく輝いていく。実際、農家の皆さんには頭が上がらないよ。口にして体を作り命を育むのは農産物なんだから。
同じ意味で漁業や畜産業などの第一産業の皆さま、ありがとうございます。
「わかってくれたかな?」
もちろん、三人の村長たちは大きな声でいい返事をしてくれた。チャールズとクラークまでぺっかぺかの笑顔で返事しなくていいから。
「あ、あともう一つ」
村長さんたちとの話で気になったことがありました。
「リグーリって教会はあるのかな? 孤児院は?」
三人の村長たちは互いに顔を見合わせ、代表して東リグーリの村長が答える。
「教会つっても、老いぼれた爺さんがいるだけで、特には……。東の畑の端にありますが……。孤児はそれぞれ農家の下働きとして住み込みで働いています」
……なにそれ。教会は朽ちかけのオンボロ小屋に爺さん一人。たぶんこの爺さんは神官だろう。神官だよね? 自称じゃないよね? そして、孤児は保護される前に働き手として搾取される。乳飲み子だった場合はどうするの? その場合は村長の家で育てられ、五歳になると水汲みや草取りなどして働きだすという。
「とりあえず……備蓄倉庫のほかに孤児院付きの教会を中央に建てようか……」
東西南のリグーリが今後、積極的に交流を持つように中央に広場を作ることが決定した。異論反論は認めません!
「クラークたちにも話してはいなかったが、リグーリに作ってほしいものがある。いや、作ると決めたものがある」
「なんですか?」
なんだかんだ言って、俺が作り出すものがオールポート領に潤いを齎していると確信しているクラークは、軽い調子で返してきた。うぅ~ん、絶対に必要なものだけど、この世界の人の意識は薄いみたいなんだよなぁ。
「麦の倉庫だ」
シーン……。やだ、沈黙が俺の心をチクチクするよ? お願い、誰か反応してちょうだい。
「セシル様、む、麦の倉庫って……麦を入れるので?」
やや青い顔をして西リグーリの村長が訊いてくる。俺はコクリと頷いて具体的な話を進めた。つまりどれぐらいの大きさの倉庫をどことどこに建てて、誰かどのように管理するのか、ってこと。管理するのはチャールズ。つまりリグーリの役所のトップが管理する。倉庫は常時鍵を厳重にかけ、その鍵はオールポート伯爵とリグーリ役所のトップしか持たない。クラークにも預けない。毎年一定量ずつ倉庫に納め、古い麦は安値で売る。
この倉庫の目的は……って、三人の村長の顔色がドドメ色なんですけど? え、いまの話のどこにそんな顔色になる要素があった? 俺が口を閉じマシンガントークを止め、コテンと首を傾げると、クラークが神妙な顔で問い質してきた。
「セシル様……それはリグーリの税を……実質増やすということですか?」
「は?」
なんで、そうなるの?
「納めている税分の麦とは別に倉庫に納める麦……。なんだよ。税は元に戻すって話だってのに、結局は増税か。役所や騎士の詰所も、払い鈍る農家から、麦をぶん取るつもりで建てたんだっ」
涙目で悔しそうにそう吐き捨てたのは南リグーリの村長で、東リグーリの村長は痛みを堪えるような表情でグッと拳を強く握りしめている。
「なに誤解している? 倉庫に入れる麦は税として納められた麦の一部だ。お前たちが払う税は変わらない」
当たり前でしょ? 俺がしたいのは農産物が不作、飢饉、水害などの災害時に配る非常食用の備蓄です! 農家だけに負担させることじゃないし、行政が請け負うものだから、これは納められた麦とオールポート伯爵家の私財で賄うの。なんて酷い誤解をしてやがる。コーディ一味たちのやらかしから、まだ完全に立ちなっていないのに、増税なんてしたら領民に恨まれるでしょ? 次代伯爵のシャーロットちゃんにキレイで豊かな領地を渡すつもりだから、反乱とか一揆とかやめてよね。
「不作? 飢饉? 伯爵様、リグーリはそんなことありませんけど?」
「……これからもないとは言い切れないだろう? あと、オールポート領だけでなく、他領や王都、他国まで援助することを考えろ」
自分のところだけ永遠に豊作祭りなんてあり得ないから。自分だけよければいいって考え方も改めなさい。オールポート領だけ腹いっぱい食べてたら、不作に喘ぐ領地から恨まれるでしょうが? そこから内乱、内戦に発展したらどうする? 俺は呑気な平和主義に育てられた異世界産の魂だから、そんな物騒な状況はイヤだね。だから、周りも腹いっぱい食べれる世界を作りたいのさ。
「他の領地……」
「王都……」
「他国まで……」
呆然とした顔で呟く三人の村長たち。はあああぁっ、もう、しょうがないな。
「嬉しくないのか? 自分たちが育てた麦で作ったパンを、美味い美味いと他の領の者が他国の者が口にするのを。知らず知らず王宮での料理に使われて高貴な者たちが口にする。お前たちが汗水垂らして作った麦で、やんごとない方々の体ができる。命を作る。これ以上ない誉だと思う。そして、何かがあったときに、差し出されるのもお前たちが育てた麦だ。命を分け与える慈悲と言ってもいいだろう」
俺の言葉が耳に入り頭で理解し心に沁みて、だんだんと顔色が明るく輝いていく。実際、農家の皆さんには頭が上がらないよ。口にして体を作り命を育むのは農産物なんだから。
同じ意味で漁業や畜産業などの第一産業の皆さま、ありがとうございます。
「わかってくれたかな?」
もちろん、三人の村長たちは大きな声でいい返事をしてくれた。チャールズとクラークまでぺっかぺかの笑顔で返事しなくていいから。
「あ、あともう一つ」
村長さんたちとの話で気になったことがありました。
「リグーリって教会はあるのかな? 孤児院は?」
三人の村長たちは互いに顔を見合わせ、代表して東リグーリの村長が答える。
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