悪役令息な俺でもいいんですか?~歌声で人々を癒やします。でも元婚約者(第3王女)はお断りです~

みけの

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知らないはずはないと思います(2)~コーニー男爵令息アーリア~

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 まだ朝日が昇りきらず、白々とした空の下。
俺は武装して王女や他、2,3人の貴族令息と一緒に東の森を歩いていた。そこはただ静かで、目に見えるのは木々と苔に覆われた地面だけだ。こんな場所を延延と、魔獣に出会うまで歩き続けろ、ってか? 何だよ、メンドくせぇ!!
――全く、俺は王女の夫になる男なんだぞ。なのにどうして森の魔獣討伐なんかに駆り出されんだ! そんなの、イベントになかったろうが! 
そりゃ、貴族の義務として一応冒険者ギルドに登録はしている。けど、それはゲームの設定だけだと思っていたのに! と、不満たらたらでいたら、
 「ふぁ~っ、……こんな朝早くから討伐なんて、本当はサイッアク! なんだけどぉ。……ふふっ、でも案外楽しみだったのよぉ♪ アーリアの勇姿が見れるんですものねっ」
という声がして、まぁ、悪い事ばっかでも無いかなと、隣を歩くルナを見る。
 ゲームの設定集に出ていたルナの武装姿。これを見られた分はましか。
「ダサい装備を強要していた奴がいなくなったから、やーっと、この新作が着られるわ。見て見て皆! 私がデザインしたのよぉ」
 胸と白い足が強調された、お洒落アーマー。あちこちにフリルがついてはいるがそんなものは意味が無い。
歩くたびにユサユサと揺れる胸。歩く度に足の際どい所がチラホラと、見えそうで見えないところを想像させ、男の劣情を煽る。
 装備としてあまり優秀とは言えないが、男をたらし込むのには十分だ。現に他の奴らも、『さすがルナ王女様! 素敵です!』『このような才能までお持ちになるとは、ルナ様はまさしく神様の愛し子でしょう!』『アーリア殿と婚約されたのが誠に惜しい!』と褒めまくりだ。言葉の裏に、『公娼としてなら自分も――』という下心が見え隠れしている。しかし俺は、そんな奴らに敵意なんて露程も湧かなかった。
 何故ならこの世界で主人公は俺だからだ。
 この国の将来を握っているのも俺。
 女達を好き放題に出来るのも俺。
 あれ?……だったら俺は絶対死ななくない?
主人公が死んだら、ゲームは終わりだ。ならば、俺が死ぬなどありえない。それをしたらこの世界は、終わるのだから。
 一気に不安が消し飛んだ。だったらこんな討伐、楽勝だ! 
 と、そんな調子で森の中を意気揚々としていたら……。
いきなり現れたイノシシのような魔獣に、他の奴が真っ青になって“撤退しましょう!”と言ってきた。でもそんな弱気は、俺には通じない。他の奴らが逃げ腰になるのを気にせず斬りかかる。
「こんなイノシシモドキ楽勝だぜ!!」
 と、あからさまな敵意を込め、こっちに走ってくるイノシシモドキに臆することなく、俺は斬りかかった。背後からルナの『きゃーアーリア素敵―!!』と黄色い声がする。
「だぁーっ!!」
と剣を振り上げイノシシモドキの首を狙う。……が、
「……へ?」
 当たった途端、ポキンと、俺の剣は折れてしまった。
呆然としている俺にイノシシモドキは、怒りの形相で突進してくる。冗談じゃ無い、あんな巨体で突っ込まれたら、俺らは全員命は無い。
 サーッと、顔が青ざめると同時に、コソコソと、その場から離れようとしている奴らに気付いた。その首根っこを引っ掴んで怒鳴る。
「何逃げようとしてるんだお前ら!? いざという時、俺と王女を守るのがお前らの役目だろう!!」
 そう、こいつらは俺達の部下だ。自分を犠牲にしても俺を……俺とルナを守るのが仕事だ。
 なのに、こいつらは……俺たちを見捨てようとした! 何のつもりだ!?
「…………つ!」
「何だ!?」
おずおずと言い出した奴に荒っぽく聞き返すと、おずおずとした答えが返ってきた。
「わ、私達は王女殿下から、いつも言われているのです。“魔獣が現れたらあなた達は、私だけを守って逃げるように”と」
「それはレオンがいた時の話だろう! 俺はアイツとは違う! 王女直々に選ばれたんだ! 俺とルナの為に命を捨てろ! 盾になっても守り通せ!」
「い、いつも魔獣が現れたらそうしていたのです! 戦闘するレオン様を1人残して、王女殿下と我々は撤退していました!」
 レオン、そう聞いただけで俺の中の義憤が蘇った。なんでまた、アイツの名前が出て来るんだ。
あの“悪役令息”は、どこまで“主人公(俺)”を邪魔する気だ!
 と考えている間にも、魔獣達は俺たちに接近してくる。俺はすかさず目の前にいた奴の背中を押して、魔獣の前に転がした。
「うわぁぁ!!」
「こいつはやるから、俺と王女は見逃せ!!」
そして真っ青になってガクガク震えるルナの手を握り、走り出す。
「逃げるぞルナ!」
「えっ、……は、はい!」
 後ろでぎゃあ! とか待ってくれ! とか聞こえてくるが知った事か。俺はひたすら走った。


 「はぁ、はぁ、はぁ……!」
どうにか森の外にたどり着き、俺とルナはドッとその場に倒れ込む。
よ、良かった。何とか逃げ切った……!
しかし……ここからが問題だ。未来の王配である俺が、魔獣を討伐するどころか従者達を見捨てて逃げたなんて知られたら……。
「アーリア?」
難しい顔をしている俺に、ようやく息が整ったルナが不安そうに見上げている。
 まぁ……ルナは無事なんだし大丈夫だよな?
と思い直して立ち上がると、
「何でもねぇよ。さ、戻ろうぜ」
 と、手を差し出した。


 その頃、同じく東の森ではこんな会話がされていた。
「どうしたの、お兄ちゃん」
「いや……誰かの悲鳴が聞こえた気がしたんだが?」
「ま、マジュウが出たのかな……?」
「大丈夫。出たとしても川のあっち側だろう。あの川は深いのが分かっているから、あいつらもこっちまでは来ないよ」
「お兄ちゃんはマジュウをトーバツしたことがあるの?」
「うん、イノシシモドキとかサンダーホースとかね」
「すごい! ……ねぇマジュウをトーバツしたら、マジュウの力が倒した人の能力を上げるって本当? それってどんな感じ?」
「うん。心臓がバク、ってはね上がって次には力がついている……って感じかな。強い魔獣程強く感じる」
「でも途中で戦いから逃げた人はもらえないんだよね」
「そうだよ。……んー? じゃああいつら、大損してたんじゃないか? まぁあいつらも貴族なんだから、ミヤちゃんも知ってることなんか、知らないはず、ないよな……」
「? どうしたのお兄ちゃん」
「あ、ごめん。考え事してたんだ。そろそろ帰ろうか」
「うん!」
 
*お詫びとおことわり

 ここまでで気付いた点について。
書いている途中から「王女」の夫が「王配」はおかしーかな? という事に気付き、調べて見ましたが……呼び名がいまいち、分かりません<(_ _)>。
 「第3」なので上に王女は2人いる設定ですので、女王の座も遠いと思いますし……(しかも不良物件だし)。
 ですので、やや力業ではありますが、この世界的に「王配」は「王家の者の伴侶全体」の呼び名として、ご了承下さい<(_ _)>。
 いやいや、ファンタジーは難しい(^◇^;)
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