悪役令息な俺でもいいんですか?~歌声で人々を癒やします。でも元婚約者(第3王女)はお断りです~

みけの

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主人公もまた、ゲームの登場人物に過ぎない・2

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 その日の内に、ドサッと山程の資料が魔法によって転送されてきた。それらは全て、転生者達が与えてくれた、異世界の小説やゲームの知識だ。
 俺達は2手に分かれて作業をする事にした。1つ目は俺がやってる“ギャルゲー”の情報を集める事だ。それらを分析し、主人公の強制力を落とす手がかりを見つけていく。
 アーリアが言っていたギャルゲーというのは男性用の呼び名だという。女性用は乙女ゲームと言うそうだ。
どちらもゲームによって異なるが大体、アーリアから聞いた通り。


 主人公がゲームの舞台に登場する(物語が始まる)→攻略対象者達と出会う→話をしたり、彼らの求める成績や功績を上げつつ、彼らの理想の異性像になっていく事で、仲が深まる。→攻略した相手と、ずっと幸せに暮らしましたとさ、で終わりだ。

 ただ誰も攻略出来ない場合があるとは初めて知った。孤独エンドと言っていたか。でもそんなものは大したことはない。恋愛出来なきゃ死ぬなんて、そうないものな。
それにしても……。
 「大人向けばかりかと思ってたら、違うんだな。全年齢ってのもあるのか」
てっきり貴族や高級労働者限定の、高価な遊具だと思っていた。アーリアの言いようだとかなり過激な性描写があるようだし。
 俺の呟きが聞こえたのか、シン殿下が応えて下さった。
「情報提供者達の享年は大体15歳以上だから、自分で自由に出来るお金のある人達の遊具と思って良いだろうね。中にはまだ恋愛に夢を見たいお年頃もいるだろうし、それに……初々しいというか焦れ焦れというか……みたいな、体より気持を楽しむ醍醐味もあるみたいだよ」
 その気持によって、攻略対象の態度の違いを楽しみたいらしい。最初はつっけんどんな態度だった彼もしくは彼女 らが、親しくなる内に態度が軟化していくのが楽しいそうだ。
 なら……この世界にギャルゲーがあれば、シン殿下はしたいのですか? と訊いてみたくなったが、止めた方が良いだろう。ステラ王女の目が恐い。
「……ご先祖様達がいたかも知れない世界だから、あんな獣みたいなヤローばかりとは思いたくないし」
 やべ、王女よりもこっちが恐かった。ごまかそうとしたんだろうが失敗している。俺の目にはキチンとシン殿下の、怒りが突き抜けた瞳が見えた。
……殿下、アーリアを思い出してるんだな。ステラ王女を襲おうとした、ゲスでクズな馬鹿野郎。
「しっかし、このアーリアって奴は本当に見境ないよなぁ」
アーリアに関する調書を読んでいたルノーとシオンがウンザリしたように書類を弾く。
「この女関係見て見ろよ。花屋の看板娘に貴族令嬢だけじゃない、教師や未亡人、修道女にまで、見た目が良い女性なら片っ端から食い散らかしてるぜ。シスター・テレジアとは最近、付き合いが無くなったようだけど」
 それは俺も知っていた。
ビートの飛び降り事件以降、シスターは憑きものが落ちたように前のように戻っている。シスターとして国の為万人の為、毎日熱を入れて活動しているそうだ。
いつか他の目標や大事な人が出来るかも知れないが、それがアーリアのような奴では無いことを祈るばかりだ。
 そしてさっき、話題に出た教師については、王立学園にいてたから俺も知っている。
 ステラ王女とは違うタイプの男勝りで、男に凄まれても真っ直ぐな意見を言える女性だ。そんな彼女が教師という立場を忘れ、生徒――しかも相当遊んでいる――と、男女の関係になっていたなど、訊いた今でも信じられない。
そこにかつて、シスターが苦悩していた姿が、否応にも想起させられる。もしかするとあの教師も同じ思いを味わっていたのかも。
 ……それだけ、アイツの持つ“主人公の力”が強いという事だ。
 まさに未知な現象。でも俺達は、それに立ち向かわなくてはいけない。
苦しむ人達の為にも、出来ないでは済まされないのだ。


「ねえねえ」
張り詰めた空気が突然破られた。声の主を探したらミヤちゃんだった。
 お2人から、あまりかしこまらなくて良いとお許しが出たので、呼び方に様を付ける程度で後は普通に話している。
「王子様とお姫様は、どうしてその“きょーせーりょく”を止めれたの?」
「「…………止めた? 私達が??」」
皆に目が一斉にミヤちゃんに向けられた。複数の大人の目が恐いのか、少し肩をすくめて、それでも話を続ける。
「だ、だって皆、アーリアって人を邪魔出来ないはずなのに、お姫様は自分でお顔にヤケドを作れたんでしょう? だから、おかしいと思って……」
「…………え?」


 ……確かにそうだ。
ステラ様の体目当てのアイツがひどい傷を負わせる理由が無い。
頬を打ったそうだが、それだって抵抗を弱くする為であって醜くするのが目的では無い。現に罵って出て行ったと言うし。
 それにシン殿下が急に動けるようになったのもおかしい。矛盾している。
お2人も同じ疑問を持ったのだろう、首を曲げ、当時の事を思い出そうとしている。
「……最初は指一本動かせなかった。……でも……急にフッと力が消えて、自由に動けるようになったんだ」
 当惑気味なステラ王女。……フッと力が消えた?
「……僕も一緒だよ。すーちゃんをすぐに追いかけようとしたのに、みんな縛られたみたいに動けなくなって……。でも突然、拘束が解けたんだ。そして転移した」
そこにシン殿下も、同じく当惑しながら習う。
「顔を焼いた後はもう、あの力は感じなかった……」
「それ多分、僕の拘束が解けたのと同じくらいじゃない?」
「ま、待ってください。……それは、つまり……」
 何らかの条件でステラ王女は、ゲームの拘束から解放された。そして、その後も強制力は起きていない。
覚えたてのゲーム用語で例えるなら、“イベント失敗”だ。ゲームなら、そこから攻略が出来なくなるという。
 その事実から考えられる推論を、俺は皆の意見を訊くべく口にした。


「プレイヤー(アーリア)側にも、やってはいけないルールがある…ってことか……?」
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