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主人公もまた、ゲームの登場人物に過ぎない・3
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プレイヤーが破ってはいけないルール。
それが分かれば、あの力を防ぐ手立てになるだろう。しかし……それは一体?
しかし、考え込む俺達にシン殿下は、ニコッと笑って手の平を打つ。
「さ、ずっと座りっぱなしで仕事してくれたから疲れたろう? ――一息つこうか。色々用意してきたんだ♪“マジカルスペース(魔法空間)”」
シン殿下が呪文を唱えると、さっきまで何も無かった空間に、大きなテーブルが茶菓子と茶道具一式と共に現れた。
「空間からモノが出て来た!?」
誰かが驚愕の声をあげる。
これは時空収納という魔法で、魔力で作り上げた空間に、思ったものを保存出来るというものだ。俺も出来ない事は無いが、シン殿下とは性能が雲泥に違う。
俺のはタダ物置を時空に造った程度に過ぎないが、シン殿下では広さでも、屋敷5つ分位収納出来る上にその空間では全て、変わること無く保存される。
つまり、食べ物の類いは腐る事も無いばかりか、温冷そのままに保存されているのだ。
「ささやかな差し入れだ。遠慮無く食してくれ」
ステラ王女の言葉を合図に、俺達に王宮の侍女さん達が紅茶を置いてくれる。王宮のパティシエが作ったクッキーや小さいケーキは、食べ物というより色とりどりの宝石のようだ。紅茶も注がれる香りだけで上物なのが分かる。
「すいません、こんなお気遣いまで」
恐縮する支配人の横で、ミーシャさんとミヤちゃんが目をキラキラさせている。やっぱり女の子だ、甘いものが嬉しいんだろう。全員で王女に礼を言った後、真っ先にミヤちゃんがケーキに手を付けた。クリームのついたそれをパクッと口に入れた途端、ふにゃ~っと頬が緩み、うっとりとした表情になる。
「おいし――あまーい♪」
隣でミーシャさんも、サクサクとクッキーを食べながら涙ぐんでいる。
「し、幸せ過ぎる……♪」
カルティ王国では、平民とて茶菓をを楽しむ習慣はある。がそれとはレベルが違いすぎる。ケーキなどは特別な事が無い限り出ては来ない。ゼリーのような冷菓などはそれ以上。ましてやこれほど意匠が施された品など、一生お目にかかれない。
が、女性だけではない、俺達男にも至福を与えて頂けた。うーん……ローストビーフのサンドイッチ、久しぶりだ……。
「レオン君、本当にお肉食べたかったんだね……」
そんな俺をシン殿下が、哀れみの目で見つめている。う……気付かない、気付かない……。
と、しばし場は幸福な空気で満たされていたのだが、ミーシャさん達が、
「お姫様が天使様に見えるよぉ」
「私には女神様に見えるわぁ……」
と言った途端に、破られた。
言われた当人は、一瞬だけ目を見開いたが直ぐその眉を下げる。そして顔の……いびつになった場所を指で撫でた。
「…………こんな顔なのに?」
やっぱり気にしてたのか!
……でも当然だよな、強気だと思いがちだがステラ王女も女性だ。顔に醜い傷が出来た事に、何も感じないわけじゃない。それが必要だったとしても!
俺達と同じ気持になったからか、ミーシャさんとミヤちゃんは同時に固まる。
……でもそれは一瞬だった。2人はクワッと目を剥くと、怒髪天をつく勢いでまくし立てた。
「そんなの関係無いよ! お姫様はお姫様じゃない!」
「大体その、アーリアって男は……いえ、クズと呼ぶ方が似合いですね! お話によるとそのクズ、貴方様を何度か叩いたのですって? 女性に手を上げる男はクズです! さらに相思相愛の相手のいる女性に手を出そうとするなんて更にクズです、
女を何だと思ってるんでしょう!!」
「しかもお兄ちゃんを悪役にしたんだよ! そのせいでお兄ちゃん、お家を追い出されたのに……! あ、あれ? でもそれがないとお兄ちゃんが、ここに来てくれなかった……のかな? なら……良いヒト??」
「ミヤ、それはあくまで別の話だから。……とにかくお姫様のお顔にどれほどの傷があろうと、お姫様はお優しくお美しいです!」
「……そうだろうか?」
「「もちろん!!」」
強く頷く2人に、ステラ様が嬉しそうに微笑んだ。
すっかり2人共、スイーツで胃袋掴まれたな。まぁどんな理由でも、女性が仲が良いのは良い事だ、うん。
落ち着いたところで、改めて茶会を続けようとしたら
「そう言えば、主人公が嫌い、ってプレイヤーもいるんだよな」
スコーンに手を伸ばしかけたところで、ライドさんがぽつりと言った。
小さく呟いただけだった。が全員が、信じられないという表情になる。
「何故?自分の分身なのに」
俺が考えるにプレイヤ―からのゲームの主人公は、自分の代わりに動いてもらって、えっちぃイベントを実行する役割だと思っていた。攻略対象達の、淫らな行為やその姿を見るために動く駒、もしくは使い魔のようなもの。
駒に好きとか嫌いとか、思う事は無い。駒は駒として使えば良いと、思っていたけど……?
「う~ん……。嫌いって程じゃなくても、シンクロ出来ないとか感情移入出来ないとか、かな。“何故ここで、こんな行動をするのか信じられない”とか“セリフ選択がどれも選びたくないのばかり”って不満に思ったって声が記録されてる」
つまり……自分の分身が自分の思いとは違う行動を繰り返し、でも攻略対象者達に好かれているのが分からない、って事か。
うんうん、と頷いていたら、支配人が隣で、
「そんななら自分の分身じゃなくって、赤の他人が信じられない位にモテてる物語って事になるんだな。なら遊んでいても不満か……」
と、納得したように繰り返す。
「でも攻略対象を落とすには必要なわけで……つまり」
――主人公も、ゲームの登場人物の1人に過ぎないんだ――
それが分かれば、あの力を防ぐ手立てになるだろう。しかし……それは一体?
しかし、考え込む俺達にシン殿下は、ニコッと笑って手の平を打つ。
「さ、ずっと座りっぱなしで仕事してくれたから疲れたろう? ――一息つこうか。色々用意してきたんだ♪“マジカルスペース(魔法空間)”」
シン殿下が呪文を唱えると、さっきまで何も無かった空間に、大きなテーブルが茶菓子と茶道具一式と共に現れた。
「空間からモノが出て来た!?」
誰かが驚愕の声をあげる。
これは時空収納という魔法で、魔力で作り上げた空間に、思ったものを保存出来るというものだ。俺も出来ない事は無いが、シン殿下とは性能が雲泥に違う。
俺のはタダ物置を時空に造った程度に過ぎないが、シン殿下では広さでも、屋敷5つ分位収納出来る上にその空間では全て、変わること無く保存される。
つまり、食べ物の類いは腐る事も無いばかりか、温冷そのままに保存されているのだ。
「ささやかな差し入れだ。遠慮無く食してくれ」
ステラ王女の言葉を合図に、俺達に王宮の侍女さん達が紅茶を置いてくれる。王宮のパティシエが作ったクッキーや小さいケーキは、食べ物というより色とりどりの宝石のようだ。紅茶も注がれる香りだけで上物なのが分かる。
「すいません、こんなお気遣いまで」
恐縮する支配人の横で、ミーシャさんとミヤちゃんが目をキラキラさせている。やっぱり女の子だ、甘いものが嬉しいんだろう。全員で王女に礼を言った後、真っ先にミヤちゃんがケーキに手を付けた。クリームのついたそれをパクッと口に入れた途端、ふにゃ~っと頬が緩み、うっとりとした表情になる。
「おいし――あまーい♪」
隣でミーシャさんも、サクサクとクッキーを食べながら涙ぐんでいる。
「し、幸せ過ぎる……♪」
カルティ王国では、平民とて茶菓をを楽しむ習慣はある。がそれとはレベルが違いすぎる。ケーキなどは特別な事が無い限り出ては来ない。ゼリーのような冷菓などはそれ以上。ましてやこれほど意匠が施された品など、一生お目にかかれない。
が、女性だけではない、俺達男にも至福を与えて頂けた。うーん……ローストビーフのサンドイッチ、久しぶりだ……。
「レオン君、本当にお肉食べたかったんだね……」
そんな俺をシン殿下が、哀れみの目で見つめている。う……気付かない、気付かない……。
と、しばし場は幸福な空気で満たされていたのだが、ミーシャさん達が、
「お姫様が天使様に見えるよぉ」
「私には女神様に見えるわぁ……」
と言った途端に、破られた。
言われた当人は、一瞬だけ目を見開いたが直ぐその眉を下げる。そして顔の……いびつになった場所を指で撫でた。
「…………こんな顔なのに?」
やっぱり気にしてたのか!
……でも当然だよな、強気だと思いがちだがステラ王女も女性だ。顔に醜い傷が出来た事に、何も感じないわけじゃない。それが必要だったとしても!
俺達と同じ気持になったからか、ミーシャさんとミヤちゃんは同時に固まる。
……でもそれは一瞬だった。2人はクワッと目を剥くと、怒髪天をつく勢いでまくし立てた。
「そんなの関係無いよ! お姫様はお姫様じゃない!」
「大体その、アーリアって男は……いえ、クズと呼ぶ方が似合いですね! お話によるとそのクズ、貴方様を何度か叩いたのですって? 女性に手を上げる男はクズです! さらに相思相愛の相手のいる女性に手を出そうとするなんて更にクズです、
女を何だと思ってるんでしょう!!」
「しかもお兄ちゃんを悪役にしたんだよ! そのせいでお兄ちゃん、お家を追い出されたのに……! あ、あれ? でもそれがないとお兄ちゃんが、ここに来てくれなかった……のかな? なら……良いヒト??」
「ミヤ、それはあくまで別の話だから。……とにかくお姫様のお顔にどれほどの傷があろうと、お姫様はお優しくお美しいです!」
「……そうだろうか?」
「「もちろん!!」」
強く頷く2人に、ステラ様が嬉しそうに微笑んだ。
すっかり2人共、スイーツで胃袋掴まれたな。まぁどんな理由でも、女性が仲が良いのは良い事だ、うん。
落ち着いたところで、改めて茶会を続けようとしたら
「そう言えば、主人公が嫌い、ってプレイヤーもいるんだよな」
スコーンに手を伸ばしかけたところで、ライドさんがぽつりと言った。
小さく呟いただけだった。が全員が、信じられないという表情になる。
「何故?自分の分身なのに」
俺が考えるにプレイヤ―からのゲームの主人公は、自分の代わりに動いてもらって、えっちぃイベントを実行する役割だと思っていた。攻略対象達の、淫らな行為やその姿を見るために動く駒、もしくは使い魔のようなもの。
駒に好きとか嫌いとか、思う事は無い。駒は駒として使えば良いと、思っていたけど……?
「う~ん……。嫌いって程じゃなくても、シンクロ出来ないとか感情移入出来ないとか、かな。“何故ここで、こんな行動をするのか信じられない”とか“セリフ選択がどれも選びたくないのばかり”って不満に思ったって声が記録されてる」
つまり……自分の分身が自分の思いとは違う行動を繰り返し、でも攻略対象者達に好かれているのが分からない、って事か。
うんうん、と頷いていたら、支配人が隣で、
「そんななら自分の分身じゃなくって、赤の他人が信じられない位にモテてる物語って事になるんだな。なら遊んでいても不満か……」
と、納得したように繰り返す。
「でも攻略対象を落とすには必要なわけで……つまり」
――主人公も、ゲームの登場人物の1人に過ぎないんだ――
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