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俺達が……“推し”??
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「そう言えば攻略対象にも好き嫌いはあるみたいよ」
書類を見ながら、今度はミーシャさんが言う。
それはまあ、そんなものだろう。複数の異性が登場する以上、全員がどんなプレイヤーにも好かれるという筈は無い。そこはある程度賭けな部分もあるのではないか。
「……でも、ならどうして、転生者達は彼らを攻略したいのかしら? どうせゲームなんだから、好きな相手とだけ仲良くして、後はほったらかしとけば良いんじゃない?」
俺も同意だ。ギャルゲーだか乙女ゲーだか知らんが、自分が良いな、好きだなと思える相手がいたら、そいつとだけ仲良くなればいいだろう。他の奴などどうでもいい。
そう俺達が話していると、
「まぁそこは、ゲームを作る側もプロだから、興味を持たすように考えてはいるんだろうね。それに……全員攻略はゲームオタクの本能なんだって」
――本能?
「……嫌いだからこそ自分を好きにさせて、イニシアチブを取ってやりたいってところですか?」
思いついたことを言ってみたら
「いやいや、そっちじゃなくて全員を落とした! って達成感が目的らしいよ」
それをあちらの世界では“コンプリート”と呼ぶそうだ。全員落としました、自分に夢中にさせました、という意味で。
「楽しみ方も、それぞれなのねー」
ミーシャさんが感心している。……が、
「けど……俺はあんま、やる気でないなー」
と言ったのは、ギャルゲーの資料をめくっていたライドだ。
「好きなタイプ以外の子にも、優しくしてやらなきゃなんだろ? しかも思っている事も言えないなんてストレスたまりそう。特にこのツンデレ? っての俺、無理」
「……それは……何となく、分かる……」
俺もルナ王女なんか攻略する気になれないぞ。そういう点ではアーリアの事はある意味尊敬出来る。まぁアイツなら体以外興味ないとかありそうだけど。
ライドと同意見なのか、ルノーやシオンも乗ってきた。
「だよな! 大体この攻略対象ってやつら、全員誕生日とか好きなものとか違うんだろ? それいちいち資料見つつ貢いだりそれ手に入れる為に色々するとか、面倒しかないぞ? 全員同じで良いじゃん」
「この資料なんて、“相手によって会える場所や時期が違う”って出てるし……!」
どうも異世界のギャルゲーは、うちの3人には合わないようだ。
……しかし、これだけの手間をかけているからこそ、彼らは攻略対象達に執着するんだろうな。
もしかしたら、現実にいる人間よりも近い存在だったりするのだろうか。
と、考えていた俺の耳に、ライドさんの言葉が飛び込んできた。
「全員攻略したら何か特別なご褒美がある! とか無い限りはする気になれない」
「!」
頭の中でパチン、と何かが弾ける。
逸る気持で資料の山の中からお目当てを探り出す。山になった紙の中、このくらいだったか、と束を掴んでパラパラとめくって……ええと……確か……。
「…………これかも知れない」
「レオン君、何か思いついた?」
考え込んでいる俺に、シン殿下のお声がかかる。
「いえ……今まで得た情報から、アーリアの強制力が弱まる条件を考えていたのですが、急に思いついたことがあったので」
が、根拠を問われても弱いし更に予算がかかる。そう言ってみたらシン殿下はドヤ顔で腰に手を当てる。
「まかせなさい☆経費の心配はいらない。僕個人のお小遣いを出すから」
この天才魔術師は発明した魔道具や術式を元に、他国から定期的な収入を得ている。本当に規格外の存在だ。見た目ひょろいから、アーリアみたいな奴らには誤解されているけど。
「そして君の健康状態も、保証しよう。歌い手レオ君を守護する治癒チーム・バイ僕1人♪♪」
「………………」
俺の目が死んだ。
「何でそこで黙るの? “さすがシンお兄ちゃん! 頼りになる”って感動してくれる流れじゃあ……」
「…………サスガシンオニイチャン、タヨリニナルナァ」
「どうして棒読み?」
いやあなた、今までの俺に対しての行いを振り返ってくださいよ?
俺、あなたの実験に付き合って、結構重傷負った事もありました。まぁ治癒師でもあるあなただから、もう秒で完治して下さいましたよね?
でも……心の傷は、全然癒やせないままなんですよ?
そんな俺を見て、殿下はキョトン、としていたけどすぐに通常運転に戻った。
「とにかくレオン君は僕たちの最大の切り札だから、君の安全は保証するよ。……いや、“君”だけじゃなく“君たち”だね」
……え?
複数形? いや矢面に立つのは俺1人で十分なんですが?
「僕個人としてはレオン君だけで確かに十分だけど、さっき君たちがしていた会話で、それでは弱いとも思ったんだ。だから……」
シン殿下が言葉を切る。そして少し悪い顔になって、とんでもないことを言ってくれた。
「レオン君やお仲間には彼女達、“攻略対象達”の……“推し”になってもらおう」
書類を見ながら、今度はミーシャさんが言う。
それはまあ、そんなものだろう。複数の異性が登場する以上、全員がどんなプレイヤーにも好かれるという筈は無い。そこはある程度賭けな部分もあるのではないか。
「……でも、ならどうして、転生者達は彼らを攻略したいのかしら? どうせゲームなんだから、好きな相手とだけ仲良くして、後はほったらかしとけば良いんじゃない?」
俺も同意だ。ギャルゲーだか乙女ゲーだか知らんが、自分が良いな、好きだなと思える相手がいたら、そいつとだけ仲良くなればいいだろう。他の奴などどうでもいい。
そう俺達が話していると、
「まぁそこは、ゲームを作る側もプロだから、興味を持たすように考えてはいるんだろうね。それに……全員攻略はゲームオタクの本能なんだって」
――本能?
「……嫌いだからこそ自分を好きにさせて、イニシアチブを取ってやりたいってところですか?」
思いついたことを言ってみたら
「いやいや、そっちじゃなくて全員を落とした! って達成感が目的らしいよ」
それをあちらの世界では“コンプリート”と呼ぶそうだ。全員落としました、自分に夢中にさせました、という意味で。
「楽しみ方も、それぞれなのねー」
ミーシャさんが感心している。……が、
「けど……俺はあんま、やる気でないなー」
と言ったのは、ギャルゲーの資料をめくっていたライドだ。
「好きなタイプ以外の子にも、優しくしてやらなきゃなんだろ? しかも思っている事も言えないなんてストレスたまりそう。特にこのツンデレ? っての俺、無理」
「……それは……何となく、分かる……」
俺もルナ王女なんか攻略する気になれないぞ。そういう点ではアーリアの事はある意味尊敬出来る。まぁアイツなら体以外興味ないとかありそうだけど。
ライドと同意見なのか、ルノーやシオンも乗ってきた。
「だよな! 大体この攻略対象ってやつら、全員誕生日とか好きなものとか違うんだろ? それいちいち資料見つつ貢いだりそれ手に入れる為に色々するとか、面倒しかないぞ? 全員同じで良いじゃん」
「この資料なんて、“相手によって会える場所や時期が違う”って出てるし……!」
どうも異世界のギャルゲーは、うちの3人には合わないようだ。
……しかし、これだけの手間をかけているからこそ、彼らは攻略対象達に執着するんだろうな。
もしかしたら、現実にいる人間よりも近い存在だったりするのだろうか。
と、考えていた俺の耳に、ライドさんの言葉が飛び込んできた。
「全員攻略したら何か特別なご褒美がある! とか無い限りはする気になれない」
「!」
頭の中でパチン、と何かが弾ける。
逸る気持で資料の山の中からお目当てを探り出す。山になった紙の中、このくらいだったか、と束を掴んでパラパラとめくって……ええと……確か……。
「…………これかも知れない」
「レオン君、何か思いついた?」
考え込んでいる俺に、シン殿下のお声がかかる。
「いえ……今まで得た情報から、アーリアの強制力が弱まる条件を考えていたのですが、急に思いついたことがあったので」
が、根拠を問われても弱いし更に予算がかかる。そう言ってみたらシン殿下はドヤ顔で腰に手を当てる。
「まかせなさい☆経費の心配はいらない。僕個人のお小遣いを出すから」
この天才魔術師は発明した魔道具や術式を元に、他国から定期的な収入を得ている。本当に規格外の存在だ。見た目ひょろいから、アーリアみたいな奴らには誤解されているけど。
「そして君の健康状態も、保証しよう。歌い手レオ君を守護する治癒チーム・バイ僕1人♪♪」
「………………」
俺の目が死んだ。
「何でそこで黙るの? “さすがシンお兄ちゃん! 頼りになる”って感動してくれる流れじゃあ……」
「…………サスガシンオニイチャン、タヨリニナルナァ」
「どうして棒読み?」
いやあなた、今までの俺に対しての行いを振り返ってくださいよ?
俺、あなたの実験に付き合って、結構重傷負った事もありました。まぁ治癒師でもあるあなただから、もう秒で完治して下さいましたよね?
でも……心の傷は、全然癒やせないままなんですよ?
そんな俺を見て、殿下はキョトン、としていたけどすぐに通常運転に戻った。
「とにかくレオン君は僕たちの最大の切り札だから、君の安全は保証するよ。……いや、“君”だけじゃなく“君たち”だね」
……え?
複数形? いや矢面に立つのは俺1人で十分なんですが?
「僕個人としてはレオン君だけで確かに十分だけど、さっき君たちがしていた会話で、それでは弱いとも思ったんだ。だから……」
シン殿下が言葉を切る。そして少し悪い顔になって、とんでもないことを言ってくれた。
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