悪役令息な俺でもいいんですか?~歌声で人々を癒やします。でも元婚約者(第3王女)はお断りです~

みけの

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変化~男爵令息アーリア・コーニー~

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 「~♪」
情事が終わってから。
俺より早くシャワー室から出て来たリーナが、機嫌良さそうに歌を口ずさんでいる。
「……何だ? その歌」
俺が訊くと、落ちている下着を身につけながら笑顔で答えた。
「この前、商店街のくじ引きで、劇場の無料招待券が当たったの。で、お母さん達と行ってみたら、歌い手さんの公演でね! すごく綺麗な上に声も素敵で、おかげで家族みんなでファンになっちゃった♪」
「――へぇ……女か?」
訊いてみただけで、リーアはぷぅ、と頬を膨らませた。嫉妬しているのが分かって可愛い。
「んもう! アーリアってばすぐにそれなんだから! 」
続いて胸をポコポコと殴られた。

 ー-その時は、特に気にもしなかった。



 更に変化を覚えたのは、他の家にいた時だった。
「アンタ、髪型変えたか?」
「おかしいかしら? 占いで“ロングヘアの人は少しヘアスタイルを変えてみるのが幸運の鍵”って出ていたからサイドアップにしたのだけど……」
どういう事だ? こいつが髪型を変えるイベントなんてなかったよな……?
「アーリア?」
「いや、似合ってるぜ。うなじが見えるのが特に、な」
「そ……そう?」
 ポッと顔を赤らめたのが可愛くて、思わず抱き寄せた。
押し倒す直前に、サイドテーブルに置かれたバッグから“バレン~”何とか書かれた半券がチラリと見えたが、その時は、それだけだった。


 「~♪」
……また、この歌か。
リーナの次はヘレンだ。最近やけにこの歌が耳に入る。
「流行っているのか?」
「……何が?」
「その……歌だよ」
ヘレンは細い首を傾げ、俺の裸の肩にしなだれかかる。
「ん~……流行ってはいないわね。すっごく小さい劇場だもの。私も最近知っただけだし。ただ、聴いていると安らいでくるの。スーッと疲れが取れていくみたいな」
覆い被さると、女は俺の下で妖しげに微笑む。
「……ふふっ」
ヘレンはいつもに増してヨカッたが、何故か針でも刺さっているような違和感が取れねぇ。
 それが……変化のはじまり、だった。


 「ごめんなさい、その日は予定があるからダメだわ」
「はぁ? どんな予定だよ!!」
 会う約束を、初めて断られた。
どうしてだ? 攻略対象の女共はもう、何があっても俺との約束を優先する筈なのに!
 不愉快な気分のまま訊いたら、リーナはシュン、としながらも拝むようにして言い訳する。
「ホンットーにごめん! 急におじいちゃん達が来る事になって、町を案内しなきゃなの! それで、レオの事話したら是非、聴いてみたいって……!」
「レオだぁ!?」
誰だ、そいつは!?
かなり声を荒げて怒ったのに、リーナはそれにも気付かない。俺が怒っているのに、パッと笑顔になり、説明し始めやがった。


「バレンシア劇場のレオよ! 私が最近はまっている歌い手さん♪
すっごく綺麗な声で本人も綺麗で! それだけじゃないよ、演奏の人達もみーんな、素敵でね……!」
「……ふーん……」
低く唸り侮蔑した眼差しを向けてやる。案の定リーナは笑顔を引っ込めてビクッと顔を青くする。
「そいつらの歌をじいさん達に聴かせる方が、俺との約束より大事だってか……?」
「ア、アーリア……?」
そう、そうやってお前は、俺の顔色だけ伺っていれば良いんだよ。
 だって俺は主人公で、お前は攻略された、対象者だから。
――だが、
「ど、どうして? だってアーリア、前に言ってくれたでしょ? 私が“おじいちゃんが最近具合が悪そうで心配だ”って言ったら“リーナは優しいな、大事にしてやれよ”って!」

 グッと、声が詰まった。
確かにそう言った覚えはある。だけどそれは攻略した知識からでたものだ。3個あった選択肢の内で好感度が上がるのがそれだっただけ。
「ちゃんと埋め合わせはするから……ね?」
そう、上目使いに“オネガイ”するリーナは、やっぱりゲームの中のリーナだった。
 だから俺は……油断した。
最近色々邪魔が入っていたせいで攻略がうまく行かず、少し自信を失っていた。
だから……気付かなかった。いや、気付かないふりをしていた。


それが後に、大きな過失になるとも気付かず――

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