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第1章 始まりの物語

第2話 ある少女の物語

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 はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、
   はあ、 はあ、 はあ、 はあ、 はあ、
    はあ、  はあ、  はあ、  はあ、  はあ、
     はあ、   はあ、   はあ、  はあ、はあ…。

 も、もう駄目だわ。
 これ以上は走れない。

 私は足がもつれ地面に倒れ込んだ。

 なんでこんなことになったの。
 私達四人は冒険者で同じ田舎から出て来た幼馴染だった。
 村は貧しく成人しても食べてはいけない。
 土地持ちの裕福な家庭でもない限り、農夫の子には子供に分け与える土地も無い。
 だから幼馴染の三人と冒険者になるため街に向った。
 メンバーは男3人と女の私を入れた四人パーティ。

 私は非力で役に立たない弓矢使いだった。
 それでもみんなは私に優しくしてくれた。
 頑固なドリク、陽気なウィリアム、内気なクラレンス。
 みんな大好きだったのに。


 今日は簡単な魔物討伐の依頼を受け森に入った。
 仕事は簡単に終わり街に戻ろうとしていた時に出会ってしまった。

 ブラッディベアに。
 私達の身長より何倍も大きい熊の魔物…。
『森の王者』と恐れられる最悪の魔物…。

 やっと実績を積み重ね、そこそこ生活が出来るようになってきたのに…。
 今夜はゆっくりと宿屋で眠るはずだったのに…。

 みんな良い人達だったのに、どうして…。

 私を逃がすために一人二人と仲間は倒れていった。
 でも逃げても同じだった…。


 私はもう立ち上がることが出来ずにいた。
 それをあざ笑うかのようにブラッディベアが近づいてくる。
 まるで獲物をいたぶるように…。

 誰か助けて…。
 まだ生きていたい…。

 絶望の中で私は無意識に助けを求めた。
「誰か助けて~!!」
 誰もいないことはわかっているのに…。

 するとどこからか幼児のような、幼い声が聞こえた。

『呼ばれて飛びでて…ジャ…』
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