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第1章 始まりの物語

第3話 遭遇

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 まずは状況確認だね。
 どう考えても俺は小動物並みの大きさの様だ。

 まずは木登りから。

 よし、いくぞ!!

 木の上まで登り飛び上がる。

 それ!!

 俺は手足の間の皮膜を広げ飛び出す。
 正確には飛んでいるわけではない『滑空かっくう飛行』になる。
 鳥のようにはばたいて自分の力で飛ぶのではなく、高い所から落ちる力を利用する『紙飛行機』のような飛び方だ。
 
 そして身体の脇の『皮膜』を広げ、風を受けて遠くまで飛んで行く。

『キィ~~~ン!!』

 川を見つけ水面に自分を映してみる。
 すると、どうだろう。
 そこには30cmくらいの手のひらに乗りそうなリスが居た。

 赤で統一された中折れ帽とマント。
 帽子の横には白い羽を付け、黒いブーツを履いている。
 腰にはレイピアを下げている。
 その出で立ちはまるで、ヨーロッパの民話『長靴をはいた猫』の様だった。


 それから俺は色々、試してみた。
 まず素早く木に登ることだ。
 いつ、なにがあるかわからない。
 これができないと『滑空飛行』が出来ないからだ。

 飛んで登って、を繰り返すうちにコツをつかみ、飛行距離も伸びるようになった。
 そして【スキル】スキル習得率UPの恩恵か風魔法を覚えた。
 これで風を下から拭き上げ更に飛行距離が延び助かる。



 はあ、はあ、はあ、しかし飽きた。

 転生をしたのはいいけど、これから何をすればいいのだろう?
 以前はサラリーマンのように毎日、仕事に行くと言う縛りがあった。
 しかしいざ無くなるとなったら辛い。
 時間が潰せないからだ。

 食事も木の葉や樹皮、花やつぼみなので食べるには困らない。
 森でこのまま暮らすか?
『レオの怠惰な生活』?
 詰んだな俺。

 するとどこからか助けを求める声がした。

 あれは?

 キィ~ンと飛ぶコースを変更し進む。
 すると簡素な防具を付けた女性が倒れている。

 何をしているのか?
 よく見ると大きな熊のような魔物が居る。
 こまった。
 でへ?

【スキル】鑑定!!
 種族:ブラッディベア
 レベル:32
 HP 1,100
 MP 300
 攻撃力 2,150
 防御力 2,500

 弱わ!!レベル32だって!!
 それとも俺がチートなのか?
 取りあえずこちらが圧倒的に有利だから助けるか。

 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 誰か助けて…。
 まだ生きていたい…。

 私は心の中で無意識に助けを求めた。
「誰か助けて~!!」
 誰もいないことはわかっているのに…。

 覚悟を決め目を強くつぶる。

〈〈〈〈〈 バゴ~ン!! 〉〉〉〉〉

 突然、大きな音が辺りに響き、木々を倒してブラッディベアが吹き飛んでいく。

 え?これはどうしたの??

 するとどこからか幼児のような、幼い声が聞こえた。

『呼ばれて飛びでて…ジャ…、ジャ…、ジャガ、ジャガリコ…』
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