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第1章
5:理由
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内容を変更し、イリニ王国とアロガンシア帝国の因縁、ヴィオラが側室の話を受けた理由を追加しました。
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使節団を見送った後、各々今後の話し合いの為、再び会議を行う事になった。
すでに廊下に出たヴィオラを追いかけたグロリアは、その背に声をかける。
「ヴィオラ。少し話したいわ。」
足を止めたヴィオラが振り向く。
「なぁに? お姉様。」
「なぁに? じゃないわよ。前回の会議中は、貴女が押し切ったから聞けなかったけどね、話を受けた理由を聞かせてもらおうじゃない。」
腰に手を当てて威圧する姉に、幼い頃に一人で森に入って叱られた事を思い出した。
「国力に差がありすぎるわ。もし断って戦争にでもなったら嫌だもの。」
「他には?」
「ないわ。」
「嘘おっしゃい!」
何年かぶりの大声に、ヴィオラは肩を震わせた。
「目的があるならちゃんと言いなさい。でないと、助けられないじゃない。」
大声から一転、優しく説いたグロリアに、ヴィオラは観念した。
「戦争を回避したいのは本当よ。でもそれ以上に、帝国が『精霊の神子』を欲した理由が知りたいの。」
「使者に聞くのではいけないのかしら?」
「皇帝に直接聞かなければならないわ。だって、アロガンシア帝国の皇帝が『精霊の神子』を欲したのはこれで二度目だから。」
「ああ、そういえばね。」
イリニ王国の建国には、アロガンシア帝国の皇帝が深く関わっている。
太古の昔。精霊と契約し、魔法に似た、されども異なる現象を起こす者達がいた。
彼らは、精霊の存在が認められると共に《精霊使い》と呼ばれ、また、時を経て《精霊術士》とも呼ばれるようになった。
精霊の存在が最初に認められたニンファ王国は、大陸から突き出た半島を国土としている。
その国に、特別能力の高い《精霊使い》がいた。小さな村に住む、平民の少女だ。
彼女は、少ない《精霊術士》の中でも、とびきり貴重な《精霊の愛し子》だった。
全ての精霊が彼女に従い、彼女の住む国や土地に恵みを与えた。
嫉妬から、彼女に危害を加えようとした《精霊使い》はその力を奪われ、森に殺された。
彼女の噂はやがて、遠い国まで届き、大帝国アロガンシアの皇帝が彼女を欲した。
精霊の力に目をつけた皇帝は、それを軍事力に用いようとし、結婚を申し込む事で彼女を得ようとしたが、彼女は生まれ故郷のニンファ王国から離れたくなかった。
国に迷惑はかけられぬ、と逃亡した彼女は、国の端まで逃げた。逃げた先のその土地は、《精霊の聖域》だった。
顕現した精霊王は彼女を助け、聖域を隠れ里として提供し、愛し子は、やがて集まった人々と共に街を作った。
その数年後、ニンファ王国の後押しを受け、発展した隠れ里はイリニ王国として独立した。
建国の際に精霊王と結んだ契約は、彼女だけでなく国をも守り、代々の王がそれを結び直す事によって国は精霊の庇護を得た。
一方、結婚を正式に断られた皇帝は怒り狂い、ニンファ王国に戦を仕掛けようとしたが、度重なる災害や飢饉、貴族と国民の反逆によって、その地位を降ろされ、新たな皇帝が玉座についた。その子孫が、現在の皇帝である。
「血が繋がっていないのに、皇帝が二人して《精霊の神子》を迎えようとするなんて、とっても不思議でしょう? だから、調べてみようと思うの。」
真面目な顔で、簡単に調べると宣うヴィオラに、グロリアは呆れを隠しもしない。
「まさかそんな事の為に、国を巻き込むつもり?」
「それこそまさかだわ。原因を探るのはわたくしの興味関心の為だけではないわ。ここで手を入れなきゃ、また誰かが望まぬ婚姻をさせられるかもしれない。身分だって、前回は正妃で今回は側室。その次は妾で、そのまた次は奴隷かもしれないわね?」
グロリアは何も言えなかった。イリニ王国が軽んじられている事は、使者の言動から理解はしていた。が、《精霊の神子》までが、とは思いもしなかった。
「私の考えが甘かったわ。」
がくり、とグロリアは項垂れる。
大事な妹と国を守りたくて、もっと先の未来が見えていなかった。
「あなたの言う通りだわ。二度あることは三度あるというもの。次こそは、逃げもしないし、簡単には受け入れてやらない。」
グロリアは、覚悟を決めた。
「ただ、これだけは守って。」
「なんでしょう。」
「決して、無理はしないで。原因に対処出来たらすぐ戻るつもりでいなさい。」
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使節団を見送った後、各々今後の話し合いの為、再び会議を行う事になった。
すでに廊下に出たヴィオラを追いかけたグロリアは、その背に声をかける。
「ヴィオラ。少し話したいわ。」
足を止めたヴィオラが振り向く。
「なぁに? お姉様。」
「なぁに? じゃないわよ。前回の会議中は、貴女が押し切ったから聞けなかったけどね、話を受けた理由を聞かせてもらおうじゃない。」
腰に手を当てて威圧する姉に、幼い頃に一人で森に入って叱られた事を思い出した。
「国力に差がありすぎるわ。もし断って戦争にでもなったら嫌だもの。」
「他には?」
「ないわ。」
「嘘おっしゃい!」
何年かぶりの大声に、ヴィオラは肩を震わせた。
「目的があるならちゃんと言いなさい。でないと、助けられないじゃない。」
大声から一転、優しく説いたグロリアに、ヴィオラは観念した。
「戦争を回避したいのは本当よ。でもそれ以上に、帝国が『精霊の神子』を欲した理由が知りたいの。」
「使者に聞くのではいけないのかしら?」
「皇帝に直接聞かなければならないわ。だって、アロガンシア帝国の皇帝が『精霊の神子』を欲したのはこれで二度目だから。」
「ああ、そういえばね。」
イリニ王国の建国には、アロガンシア帝国の皇帝が深く関わっている。
太古の昔。精霊と契約し、魔法に似た、されども異なる現象を起こす者達がいた。
彼らは、精霊の存在が認められると共に《精霊使い》と呼ばれ、また、時を経て《精霊術士》とも呼ばれるようになった。
精霊の存在が最初に認められたニンファ王国は、大陸から突き出た半島を国土としている。
その国に、特別能力の高い《精霊使い》がいた。小さな村に住む、平民の少女だ。
彼女は、少ない《精霊術士》の中でも、とびきり貴重な《精霊の愛し子》だった。
全ての精霊が彼女に従い、彼女の住む国や土地に恵みを与えた。
嫉妬から、彼女に危害を加えようとした《精霊使い》はその力を奪われ、森に殺された。
彼女の噂はやがて、遠い国まで届き、大帝国アロガンシアの皇帝が彼女を欲した。
精霊の力に目をつけた皇帝は、それを軍事力に用いようとし、結婚を申し込む事で彼女を得ようとしたが、彼女は生まれ故郷のニンファ王国から離れたくなかった。
国に迷惑はかけられぬ、と逃亡した彼女は、国の端まで逃げた。逃げた先のその土地は、《精霊の聖域》だった。
顕現した精霊王は彼女を助け、聖域を隠れ里として提供し、愛し子は、やがて集まった人々と共に街を作った。
その数年後、ニンファ王国の後押しを受け、発展した隠れ里はイリニ王国として独立した。
建国の際に精霊王と結んだ契約は、彼女だけでなく国をも守り、代々の王がそれを結び直す事によって国は精霊の庇護を得た。
一方、結婚を正式に断られた皇帝は怒り狂い、ニンファ王国に戦を仕掛けようとしたが、度重なる災害や飢饉、貴族と国民の反逆によって、その地位を降ろされ、新たな皇帝が玉座についた。その子孫が、現在の皇帝である。
「血が繋がっていないのに、皇帝が二人して《精霊の神子》を迎えようとするなんて、とっても不思議でしょう? だから、調べてみようと思うの。」
真面目な顔で、簡単に調べると宣うヴィオラに、グロリアは呆れを隠しもしない。
「まさかそんな事の為に、国を巻き込むつもり?」
「それこそまさかだわ。原因を探るのはわたくしの興味関心の為だけではないわ。ここで手を入れなきゃ、また誰かが望まぬ婚姻をさせられるかもしれない。身分だって、前回は正妃で今回は側室。その次は妾で、そのまた次は奴隷かもしれないわね?」
グロリアは何も言えなかった。イリニ王国が軽んじられている事は、使者の言動から理解はしていた。が、《精霊の神子》までが、とは思いもしなかった。
「私の考えが甘かったわ。」
がくり、とグロリアは項垂れる。
大事な妹と国を守りたくて、もっと先の未来が見えていなかった。
「あなたの言う通りだわ。二度あることは三度あるというもの。次こそは、逃げもしないし、簡単には受け入れてやらない。」
グロリアは、覚悟を決めた。
「ただ、これだけは守って。」
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「決して、無理はしないで。原因に対処出来たらすぐ戻るつもりでいなさい。」
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