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発覚後の行く末
16解けてしまった呪い2
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いざ言葉にすると、胸が苦しくて倒れそうだった。
おそるおそるレオンさまを見上げると、珍しくぽかんとして私を見ていた。そして、うろうろと視線をさまよわせ、苦笑した。
「…………こんなかわいい天使に慕われるとは、私も捨てた物ではないな。それほど尊敬されるようなことはしてないから照れくさくはあるが、リリーがそう思ってくれるというのはうれ…………」
また、ごまかされようとしている。
それを感じ取って、とっさに叫んでしまった。
「違います!! お慕いしてるって言うのは、そうではなくって……あの、あ、愛……愛して、ます!」
言葉を遮るような失礼なことをしてしまって、しかも自分の言葉の大胆さにも自分でびっくりしてしまって、頭がうまく働かなくなってしまった。レオンさまが、ちょっと引いているのもわかっていた。
でも、その後はもう勢いで、勝手に口から本心が漏れてしまっていた。
「……父親のように?」
「違います!」
「………兄?」
「こ、恋してます!!」
「……こい?」
「恋です!!」
「こんな、獣なのに……?」
こんなやりとりで、レオンさまの自信のなさの根の深さがわかってしまう。それがただ悲しくて、言葉を返すごとに恥ずかしさよりも、伝わらないもどかしさが増してゆく。
レオンさまは素敵な方です。愛されるわけがないだなんて、思わないで。
その一心で必死で言い募った。
「姿は関係ありません。どんな姿であっても、レオンさまはレオンさまです。あなたが、好きなんです。姿なんて、関係ないんです」
「だが、獣相手に………」
「………レオンさま!!」
「はい!」
「ごめんなさい!」
頭に血がのぼっていたのだと思う。レオンさまの分からず屋! そんな気持ちもあった。だからこその勢いで、なんとでもなれと、身体が勝手に動いていた。
だって、どうしても伝えたかった。好きな気持ちを分かって欲しかった。ここを離れなければいけないのなら、それだけは伝えたかった。何より、あなたは慕われて当然の方なのだと、伝わって欲しかった。
はぐらかすようなレオンさまへ思い知らせるように、その頬を両手で挟む。
力ずくで振り払えない彼は、なされるがままだ。彼がちょっと乱暴に私を振りほどけば、私は簡単に吹っ飛んでしまう。だから彼は私のやることに抵抗できない。そんな優しさに甘えて私は暴挙に出る。
私は彼の鼻の下の口元に、ちゅっと、口付けた。
ほんの少し困ってしまえばいい。そんなイジワルな気持ちと、私がこれからがんばっていくための、大切な思い出の為に。
その変化は突然だった。
「きゃぁ……!!」
まぶしさに思わず目をしかめてしまう。
光の中でぼんやりと見えるレオンさまの姿が歪む。
光は徐々におさまってゆき、私の目の前には、レオンさまの服を着た、精悍な青年の姿があった。
レオンさまは、どこ……?
私の、レオンさまは……。
……彼と同じ服を着たこの人は、誰?
「……リリー。ありがとう。君の愛で、私は元の姿に戻れた」
少し歪んだ笑みを浮かべ、青年はそう言った。
戸惑ってなにも言えなくなった私の手を取って、ちゅっと手の甲に口付けられる。
……これ、いつものレオンさまの、仕草……。
「……れ、レオンさま?」
「ああ」
うそ。そんなの、うそよね。
心臓が今にも壊れそうな勢いでドクドクと胸を打ち付けている。
だってレオンさまが、いない。
目の前の青年を見る。レオンさまのたてがみとよく似た髪の色をした人。
困ったように微笑む目の色は、レオンさまと同じ、青空の色。
でもそこにいるのは、私の恋したレオンさまとは似ても似つかぬ姿をした、人間の男性だ。
「ホントに、レオンさまですか? あの、だって………レオンさまは、獅子の獣人で……」
たずねながら、本当は頭の片隅でわかっていた。立ち姿の雰囲気が彼だった、優しいその声が彼だった、諦めたような躊躇いがちなその様子が、まさしく彼だった。
信じられないと思った。信じられないと思ったのは、きっと私が信じたくなかったからだ。
彼が、悲しげに笑う。
ありがとうと言ったのに、どこか困っている様子を感じ取る。
「私はね、リリー。呪いにかかっていたのだよ。君が本来の姿に、戻してくれた……」
「そん、な……」
彼の、少し苦みのある笑みが、これが彼の本意ではなかったことを伝えてくる。
口元を覆う手が小刻みに震えた。
私が、彼の変化の魔法を、解いてしまったのだ。
「わ、私、なんてことを……ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣いてもどうしようもないのに、勝手に涙が溢れて止まらない。
なんてことをしてしまったんだろう。私は、自分の身勝手で、こんな……。
私は、彼を、人間なんかに、してしまった……。
私のせいで、私の愛した気高き獣は、消えてしまった……。
おそるおそるレオンさまを見上げると、珍しくぽかんとして私を見ていた。そして、うろうろと視線をさまよわせ、苦笑した。
「…………こんなかわいい天使に慕われるとは、私も捨てた物ではないな。それほど尊敬されるようなことはしてないから照れくさくはあるが、リリーがそう思ってくれるというのはうれ…………」
また、ごまかされようとしている。
それを感じ取って、とっさに叫んでしまった。
「違います!! お慕いしてるって言うのは、そうではなくって……あの、あ、愛……愛して、ます!」
言葉を遮るような失礼なことをしてしまって、しかも自分の言葉の大胆さにも自分でびっくりしてしまって、頭がうまく働かなくなってしまった。レオンさまが、ちょっと引いているのもわかっていた。
でも、その後はもう勢いで、勝手に口から本心が漏れてしまっていた。
「……父親のように?」
「違います!」
「………兄?」
「こ、恋してます!!」
「……こい?」
「恋です!!」
「こんな、獣なのに……?」
こんなやりとりで、レオンさまの自信のなさの根の深さがわかってしまう。それがただ悲しくて、言葉を返すごとに恥ずかしさよりも、伝わらないもどかしさが増してゆく。
レオンさまは素敵な方です。愛されるわけがないだなんて、思わないで。
その一心で必死で言い募った。
「姿は関係ありません。どんな姿であっても、レオンさまはレオンさまです。あなたが、好きなんです。姿なんて、関係ないんです」
「だが、獣相手に………」
「………レオンさま!!」
「はい!」
「ごめんなさい!」
頭に血がのぼっていたのだと思う。レオンさまの分からず屋! そんな気持ちもあった。だからこその勢いで、なんとでもなれと、身体が勝手に動いていた。
だって、どうしても伝えたかった。好きな気持ちを分かって欲しかった。ここを離れなければいけないのなら、それだけは伝えたかった。何より、あなたは慕われて当然の方なのだと、伝わって欲しかった。
はぐらかすようなレオンさまへ思い知らせるように、その頬を両手で挟む。
力ずくで振り払えない彼は、なされるがままだ。彼がちょっと乱暴に私を振りほどけば、私は簡単に吹っ飛んでしまう。だから彼は私のやることに抵抗できない。そんな優しさに甘えて私は暴挙に出る。
私は彼の鼻の下の口元に、ちゅっと、口付けた。
ほんの少し困ってしまえばいい。そんなイジワルな気持ちと、私がこれからがんばっていくための、大切な思い出の為に。
その変化は突然だった。
「きゃぁ……!!」
まぶしさに思わず目をしかめてしまう。
光の中でぼんやりと見えるレオンさまの姿が歪む。
光は徐々におさまってゆき、私の目の前には、レオンさまの服を着た、精悍な青年の姿があった。
レオンさまは、どこ……?
私の、レオンさまは……。
……彼と同じ服を着たこの人は、誰?
「……リリー。ありがとう。君の愛で、私は元の姿に戻れた」
少し歪んだ笑みを浮かべ、青年はそう言った。
戸惑ってなにも言えなくなった私の手を取って、ちゅっと手の甲に口付けられる。
……これ、いつものレオンさまの、仕草……。
「……れ、レオンさま?」
「ああ」
うそ。そんなの、うそよね。
心臓が今にも壊れそうな勢いでドクドクと胸を打ち付けている。
だってレオンさまが、いない。
目の前の青年を見る。レオンさまのたてがみとよく似た髪の色をした人。
困ったように微笑む目の色は、レオンさまと同じ、青空の色。
でもそこにいるのは、私の恋したレオンさまとは似ても似つかぬ姿をした、人間の男性だ。
「ホントに、レオンさまですか? あの、だって………レオンさまは、獅子の獣人で……」
たずねながら、本当は頭の片隅でわかっていた。立ち姿の雰囲気が彼だった、優しいその声が彼だった、諦めたような躊躇いがちなその様子が、まさしく彼だった。
信じられないと思った。信じられないと思ったのは、きっと私が信じたくなかったからだ。
彼が、悲しげに笑う。
ありがとうと言ったのに、どこか困っている様子を感じ取る。
「私はね、リリー。呪いにかかっていたのだよ。君が本来の姿に、戻してくれた……」
「そん、な……」
彼の、少し苦みのある笑みが、これが彼の本意ではなかったことを伝えてくる。
口元を覆う手が小刻みに震えた。
私が、彼の変化の魔法を、解いてしまったのだ。
「わ、私、なんてことを……ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣いてもどうしようもないのに、勝手に涙が溢れて止まらない。
なんてことをしてしまったんだろう。私は、自分の身勝手で、こんな……。
私は、彼を、人間なんかに、してしまった……。
私のせいで、私の愛した気高き獣は、消えてしまった……。
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