魔王の花嫁

真麻一花

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23 白竜8

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『おもしろい。そなたは面白いなフリーシャ。私も、そなたに出会えたことを幸運と思おう。力の限りそなたに協力をしよう』

 穏やかに白竜が約束をすると、彼は遠く夜空を仰ぐ。

『……私は、美姫を助けるために竜となった』

 宣言をするかのように高らかに白竜が言った。

『……悪くない。人としての意識を失い、魔物に堕ちるより遙かにいい。美姫のために魔王と戦って死ねたなら、それはそれで悪くない終焉だ』

 満足そうにつぶやいた白竜に、フリーシャが叫んだ。

「白竜の王子! 縁起でもないことをいわないで! 私は、あなたを死なせるために協力してもらうのではないわ。そんな、師匠に顔向けできなくなるようなことを頼むつもりもない! 私はあなたの力を借りて姉様を助けるし、あなたは呪いを解いて、姉様と明るい未来をつかむためにがんばってもらわないといけないし、そして私は安心して黒騎士と幸せになるんだから! 未来をあきらめるようなことは絶対に言わないで。私は、兄様になってもらうのは、あなたみたいな人が良いんだから。いい未来をつかむことだけを考えて」

 怒りをにじませたフリーシャの言葉に、白竜が穏やかに笑う。

『過大評価をされているようでこそばゆいのだが……そうだな、そなたの期待に応えられるよう、がんばろう』
「そうでなくっちゃ」

 フリーシャは大きくうなずいて笑った。が。でも、と、彼女はためらいがちに白竜を見る。

「白竜の王子、マージナルから十年も離れていて、帰ることは出来るの?」

 白竜を気遣うフリーシャの言葉に、白竜が物憂げにため息をついた。

『大丈夫だ。アトールがいるから』

 大丈夫だというのに、ずいぶんと気乗りしない口調だった。
 フリーシャは、聞いて良いのかと躊躇いつつ、ずっと気になっていたことを、思い切って尋ねてみた。

「……師匠は何者なの?」
『アトールは……ああ見えてマージナルの魔術師の最高権威だ。マージナルで、奴に敵う魔術師はいない。何より、奴の弟子がマージナルの中枢に多くいるからな。マージナルの魔術師で奴に逆らう奴は一人もいないだろうよ。そうはいっても表向きには存在しない人間だから、一応は、何の地位もないがな」

 並大抵の魔術師じゃないことはフリーシャも分かっていたことだった。しかし、魔法大国のマージナルにおいても最高峰の魔術師とは思いもよらず、あっけにとられた。

 師匠、なにやってんですか……。

 町医者として、のほほんと暮らしていたアトールを思い浮かべ、フリーシャは「アレが最高権威なのか」とあきれる。
 何となく、いろいろと気の毒な気がした。主にマージナルに対して。
 複雑な胸中でいるフリーシャに気付かず、白竜は説明を続ける。

「その上、国王にも発言力を持っている。そして、今は私の後見人でもある。私は、魔力が大きくて、ずいぶんと無茶をしたからな……。呪われる少し前に、その辺りの魔術師では私を止めることが出来なくてとうとうアトールがかり出されたのだ。私は、奴に迷惑しかかけていない。アトールには表向きの地位はなくとも、あやつにしか出来ぬ事が山のようにある。なのに、全てを放り投げて私の側にいる。アトールを私につけてしまったことを、父上は悔やんでいるだろうな……』


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