鷹谷くんの恋人

村上 はるまき

文字の大きさ
1 / 2

第1話 同じ誕生日

しおりを挟む
あ、私と誕生日が一緒だ。

職場で飛び交う会話の中で
「僕の誕生日は8月17日です。」
と話している男性の声が聞こえた。

ふと、私は声のする方をゆっくりと振り返る。

そこには、鷹谷君がいた。

鷹谷君は私と同期だけど、ほとんど会話をしたことがない。

同じ職場にはいるけど、部署が違うからあまり接する機会がないし、すれ違いざまに挨拶を交わす程度だ。

なんにせよ、私は鷹谷君のことをよく知らない。

だから鷹谷君が同じ誕生日だということも知らなかったのだ。

いや、知らなかったのではなくて、知ろうとしなかったのかもしれない。



私は、地元の高校を卒業してから、都会に憧れがあって神奈川県の区役所に就職をした。

役所に勤めてからというもの、私はひたすら仕事に打ち込んだ。

早く仕事ができるようになりたい、仕事を頑張って認められたいという気持ちを持って働き続けてきた。

そうやって働き続けて今年で6年目を迎え、私は今年の8月17日で25歳になる。

気づいたら学生時代の友人はちらほら結婚していて、子供を生んでいる人だっている。

この前なんか、1年ぶりに地元の友人に連絡して近況を聞いたら
「実は結婚して、妊娠したんだ」
って言われた。

なるほど、私の知らないところで皆さんは自分の人生を着々と進めているのね。

でも、なんで教えてくれなかったのかと友人に問いかけてみた。

そうしたら
「だって菜月、仕事忙しそうやけん報告しずらかったんやもん」
ですって。

そら、仕事忙しかったばってんさ、連絡くらいくれたってよかろうもん。

…失礼しました。つい方言が。

でも、私が仕事を忙しそうにしてたせいで、身近な人とのコミュニケーションが疎かになっていたんだとしたら。

仕事だけを知ろうとして、他のことは?
知ろうとしただろうか。



だから私は、鷹谷君の誕生日を知らなかったのかもしれない。



…申し遅れました。
「私」の名前は、村上 菜月。
24歳の独身です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...