噛み痕をフライパンで焼いてツガイと別れてやりました

夜鳥すぱり

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番外編 らぶらぶ旅行! ②

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 3日後という、とてつもなく短期間で、豪華客船へ乗る準備をせねばならない。いったい、何が必要なのか……。僕はもちろん、美少年だから何を着ても似合うと思うけど一応聞いてみる。

「なぁ、すばる、このフォーマル衣装て何? 」
「あぁ、端的に言うなら結婚式に出席できるような服が二日分必要てことだよ」
「二日分っ!  な、なんで」
「フォーマル着用指定の夕食が二日有るから」

 テーブルマナーは、流石に僕は理解してるけど、まさか提供される側になるとは思ってなかったから……フォーマルスーツですと?

「こないだ結婚式に着ていったスーツで良いのかな」
飛羽とばねが気になるなら、今から買いにいこうか」
「いや、そんな、それだけのために買うなんてもったいないから……中に着るシャツだけもう一枚買うよ」
「まぁ、そんなに肩肘張るものでもないと説明には書いてあるから」
「そ、そぉ?」

 この船に乗ってくるのセレブだけだとしたら、僕が混ざり込むの怖すぎなんだが。

「ツアーが有るくらいだし、一般客がほとんどだと思うよ」
「だよなぁ? でも、一回で一人60万は高いと思うんだよ、それを出せる一般客は一般でもないんよ」
「そう……だね、でも三食食事付きで、交通費もかからないし、僕は相場だと思うよ」
「三食食事付き?」

 僕はびっくりして、パンフレットを覗き込んだ。確かに夜はレストランでディナー予約、朝と昼はバイキングが常にオープンしているのでご自由にと書いてある。

「まじかよ、夢の世界じゃんか」

 つまりは、寝て起きてバイキング食べて、海を見ながらクルーズできて、またバイキング食べて、クルーズ、レストランへいって食べて……え、でもちょっと飽きない?

「ずっと海みてるのかぁ……まぁ、非日常って感じではある」
「そんな、まさか。アミューズメントは、色々あるよ、映画やミュージック、クラッシックや、ジャズ演奏、カジノゲーム、図書館、マジックショー、スポーツ施設も充実してるし、屋外プールやジャグジーが複数あるし、あと毎日何らかのイベントが発生するらしいね、全て無料だよ」

「おいおい、ヤバすぎるなそれは」

 本当に船の上にテーマパークをごそっと持ってきたような豪華さだ。僕はまた食い入るようにその夢の企画が詰まったパンフレットを覗き込む。

 人生の娯楽の全てを集めたかのようなこの豪華客船で、僕と昴は新婚旅行へと旅立つのだ。


 ◆◇◆


 横浜港から出航する大型豪華客船に乗るために、タクシーにトランクを積んでもらう。タクシーの運転手さんが、僕たちの大荷物と、行き先を聞いてにこやかに話しかけてきた。

「お客さん、もしかしてオーシャン·キングに乗るんです?」
「あ、はい」

「良いですねぇ、あんな豪華な船に乗れるなんて。クジか何かに当たったんですか?」
「え……いや、普通に予約して」
「そうなんですか? 予約大変だったでしょう、私の友達も申し込んだんですが、120倍率だって言われて今年の予約無理でしたよ、お客さんたちは運が良いんですねぇ」
「あーーははは、そ、そうかも」

 冷や汗が流れる会話だ。倍率エグくない? そんなのに3日前に決めましたなんてどんな貴族だよ。

 げんなりしつつ、横浜港について、トランクを受け取りタクシーを降りた。ふと、見上げると波止場に停まる大型客船が目にはいった。

「はぁ……って、デカっ! え、昴っ、これに乗るの? なにこれ、ほぼマンションじゃん!」
「総重量12万トン、全長300メートルあるから」
「うん、よく解らんが、でかいことは解る、わーーてか、お客さん、外国の人が多くない?」

 搭乗口で大きなトランクを引っ張って歩いているのは、外国の方ばかりだった。

「そうだね、イギリスの船だから」
「そーなの!? 」
「うん、ほら国旗がイギリスと日本二つ上がってる」
「ほんとだぁ」

 しかし、昴は塔に閉じ込められてた割に何でもよく知ってるなぁ、って、実際には閉じ込められてなんかないんだけど、ニュアンス的にね。

「イギリスの船ってことは、まさか」
「うん、船内ほとんど英語だね」
「……」

 なんですと? 僕が眉を下げて今さらながら、そんなの嫌だみたいな顔をしたら、昴がふっと笑った。

「大丈夫だよ、日本語が解るスタッフももちろんいるし、何より僕がそばにいる」
「昴ちゃん……かっこよ」

 僕の賛辞にニコッと王子様みたいに笑って、昴は僕の手をとった。

「君を一人にはしない」
「大好き昴」


 そんなカッコいいことを言っていた昴だったが───病気には勝てませんでした。















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