噛み痕をフライパンで焼いてツガイと別れてやりました

夜鳥すぱり

文字の大きさ
1 / 46

1

しおりを挟む
  岸本飛羽きしもととばねには、ツガイがいる。

 僕こと飛羽とばねには、一つ年上の先輩がいて、その人の名前は晴海はるみ先輩って言うんだけど、僕たちはかれこれ二年も付き合っているんだ。

 晴海先輩は、背が高くて、バスケ部のエースでもちろんアルファ。と~~ってももてるけど、自他共に認める美少年オメガの僕と出会ってからは、先輩は僕にメロメロだったから、他の誰も先輩に手が出せなくなったってわけ。

 晴海先輩から高校に入ってすぐ告白されて付き合って、僕達は、出会った瞬間にお互いを運命だと感じて、将来を誓い合って、一ヶ月で、エッチして、三ヶ月後にツガイになった。そこから、先輩が卒業して大学生になるまで、ずーーっと、ラブラブ。誰もが羨む、学園生活を送ってきた。

 はずだった。




「は? 先輩、誰ですかその人」

 夏休みのある日、一人暮らしを始めた先輩を驚かそうと思ってアポなしで、訪ねた朝。先輩は、知らない人とベットで寝ていた。


「飛羽、落ち着いて聞いてくれ、この人は、その、大学で出会った人で……俺の運命のツガイなんだ」

 先輩は、ガタガタ震える知らない人を抱き締めながら、僕に対して意味の解らないことをほざいた。

「なにそれ、運命のツガイは僕だよね?先輩、何度も僕に運命だって言ったよね」

「ごめん飛羽、本当に申し訳ないと思って……何してるの?」

 僕は、コンロに火をつけて、フライパンを焼いた。知ってる? オメガのツガイ痕って、焼くと消えるんだ。痕が消えるとツガイ解消できちゃうから、フライパンは超お勧めアイテム。

「先輩のツガイは僕だけで良いから、焼こうと思って」

「な……に、を?」

「その知らない人の首の噛み痕を」

「ヒイッ!!」

 二人は青ざめて震え出した。さて、そろそろフライパンは熱々に熱せられた、これで焼いたらさぞ熱かろう。僕はフライパンを持って二人にゆっくりと近づいた。

「さ、知らない人、首をこちらに」
「や、やめてください」

「やめるんだ、飛羽、そんなことしても、俺はこの人と生きていくからな」

「はぁ!? さっきから何言ってるの? 先輩、バカになっちゃったの? まさか、こんなしょうもないオメガと、僕を比べてる? あはは、笑える、こんな底辺オメガヤロウと、この僕を? あはは、まじで、うけるわ、あはは」

 僕は、笑いながら、怖がり震える二人にさらに近づくと、目の前で、見せつけるように、ジュゥッと、自らの首の噛み痕を焼いた。肉が焦げる臭いが部屋に充満する。

 さぞ痛いとおもうでしょ? でもね、余りの怒りで痛さも熱さも感じないの。

 ただ、笑いが込み上げてくる。

「あはは、ぷっ、あはははっ」

「ぎゃぁ、怖い」

 狼狽える二人の間近で、ほらほらと、焼き痕を見せてやる、泣き出した知らない人、なんて不細工な泣き顔だろうと思う。美少年の僕とは大違い。晴海先輩ってば、真っ青で固まってる。僕の綺麗な肌に、焼け跡なんかついたら、さぞかし罪悪感刺激されるよね。
 罪悪感? は、バカにしてるのか。

「はーーーバカバカしぃ」

 僕は、立ち上がると、フライパンを大きく振りかぶった。これで先輩の頭ぶったたいたら、さぞかし気持ちいいだろうなぁ。ニヤッとわらったら、なんと、晴海先輩は、失禁したのだ。古びた灰色のスエットに、じわじわと広がっていく黒い染み、そんな格好で隣で泣いてるだけの役に立たないオメガをかばってる。

「うわーーダサッ、失禁とか、ダサ過ぎ、あははは」

 晴海の情けない姿を見て、すうっと僕の中の何かが冷めていった。

 ガシャーンと大きな音をわざと立てて、フライパンをコンロに叩き付け、この世で一番冷たく、見下した声を出した。


「さよなら」













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

処理中です...