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4 メイドのメル
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今日はラクロア様がお仕事で留守にしているので、中庭のベンチでごろんと寝転んで日向ぼっこをしています。ぽかぽか日があたって温かいけど、風が冷たいから、指先がかじかんでピリピリしてきた、やはり人間は外で寝るのは駄目みたい。そろそろお部屋に戻ろうかなと思っていたら、一人のメイドさんが話しかけてきました。
「あの、ユリス様」
「………あ、僕か、はぃ」
「ユリス様は、ラクロア様の恋人なんですか?」
「僕はラクロア様の猫です」
「猫?ネコ……アッ!ネコってそういう!?あ、わたし、そこまで聞こうと思ってなくて、ただ、そうなら、あの色々ご用意とかした方が良いって皆が言うから代表して聞きにきたんですけど、えっと、あの、ダイレクトに言っちゃいますけど、お尻とか大丈夫ですか?」
「お尻?大丈夫です」
「な、なら良かったです、男同士だと、大変と聞きますので」
「何が大変なんですか?」
「いや、あの、受け入れる方が負担が大きいですから、そういう時はほぐすためのお薬を使ったり……これからは、ちゃんとベット横にご用意しておきますね」
「はぁ、でも僕はお薬あんまり好きじゃないです」
「駄目ですよ、大事にしないと、こういうのは、お互いに思い遣りが大切ですから」
「はぁ、そうですか」
なんのことか解らないけど、人間はよくこういうぼかした言い方をする。僕は猫だからはっきり言ってくれないと困るけど、前世が猫だったことは隠していなさいとラクロア様が言ってたし……あ、さっき猫っていっちゃった。
「あの、僕が猫って内緒にしてくださいね」
「内緒にですか!?なかなかに難しいともうしますか、もうばればれと申しますか、逆にラクロア様がネコだったらそれはそれで問題と申しますか、でも確かにこんなお話をペラペラするようなことはいたしませんので、ご安心してくださいね」
「うん」
優しいメイドさんで良かった。昔からここに勤めるメイドさんは、概ね僕が自由にしてても、見て見ぬふりをしてくれる優しい人が多い。変にかまったり、追いかけられたり、捕まえられたりしないから、ラクロア様のお屋敷はとっても住み心地がよかったの。
そういえば、あの悪いメイドはどうなったんだろ?ちゃんと捕まったかなぁ。僕のこと蹴ったしさ、良くないよね、弱いもの虐めはさ。それに、ラクロア様のこと殺そうとするなんて、本当に許せない、もう居ないよね?ちゃんと叱られたよね?
「あのさ、聞いても良い?」
「何ですか?」
「んっと、僕が今13だから、13年前で良いのかなぁ、あの、13年くらい前に、ここに悪いメイドさんが居たの知らない?」
「13年前ですか?すみません、わたし、まだ3年間しかここで勤めてなくて、あ、でもメイド長のナスリさんなら御存じですよ、だってもう60年くらいここで働いてらっしゃるみたいだし」
「ナスリ、あぁ、まだ生きてるんだね」
「エッ!!そんな、ユリス様、さすがにそれは失礼ですよ、確かに……年齢は、おばぁさんの領域ですが、あの人、人の3倍くらい働く凄い人ですし」
「あ、悪い意味で言ったんじゃないよ、僕たちあんまり長生きできないから、まだ生きてて凄いなと思って」
「ユリス様……もしや、短命のご家庭で?お体が弱いですもんね、だから、ラクロア様があんなに心配してるんですね、ぐすん、ユリス様可哀想です」
涙ぐんだメイドさんは、ぱしっと僕の手を掴んだ。僕は一瞬、あ、触らないでと思ったけど、猫の時より嫌悪感みたいなのは薄くて、耐えられた。
「ユリス様、私、メルって言います、どうかこれからは私に何でもおっしゃって下さいね、苦しいとか、つらいとかあったら直ぐにお医者様呼びますからね」
「お医者様あんまり好きじゃないの」
「でも、元気でいないとラクロア様が悲しみますよ」
「そうね、それはだめだね」
「そうですよ、ユリス様が元気にしてれば、ラクロア様も安心してお仕事できます。知ってますか?いま、3時間毎にユリス様の様子をラクロア様に報告してるんですよ」
「そうなんですか?知らなかった、僕、寝てるだけなのに報告する必要あるんですか」
「有るんです、愛した方が負けというか、常に知っていたいと言うか、ラクロア様はああ見えて一途な方だったみたいです、ずっとお仕事ばかりしてるから、ご結婚とか伴侶をもつとかそんなの興味が無いのだと皆が諦めてましたが、33を過ぎて遂にこんな可愛らしい方を連れてくるなんて、私達皆が喜んでるんですよ」
メイドさん達が喜んでるなら、良かった。僕は前世でもラクロア様に拾われたけど、今世もラクロア様が拾ってくれたし、このままずっとおそばに居られれば幸せなの。でも、僕を死に追いやったメイドがもう居ないのかだけは確かめなきゃね、後でメイド長のナスリさんに会ってこなきゃ。またラクロア様に何かあったら大変だもの。今回は僕は人間だから、ちゃんと飲んじゃ駄目って言えるし。言葉が話せるって便利ね。
「あの、ユリス様」
「………あ、僕か、はぃ」
「ユリス様は、ラクロア様の恋人なんですか?」
「僕はラクロア様の猫です」
「猫?ネコ……アッ!ネコってそういう!?あ、わたし、そこまで聞こうと思ってなくて、ただ、そうなら、あの色々ご用意とかした方が良いって皆が言うから代表して聞きにきたんですけど、えっと、あの、ダイレクトに言っちゃいますけど、お尻とか大丈夫ですか?」
「お尻?大丈夫です」
「な、なら良かったです、男同士だと、大変と聞きますので」
「何が大変なんですか?」
「いや、あの、受け入れる方が負担が大きいですから、そういう時はほぐすためのお薬を使ったり……これからは、ちゃんとベット横にご用意しておきますね」
「はぁ、でも僕はお薬あんまり好きじゃないです」
「駄目ですよ、大事にしないと、こういうのは、お互いに思い遣りが大切ですから」
「はぁ、そうですか」
なんのことか解らないけど、人間はよくこういうぼかした言い方をする。僕は猫だからはっきり言ってくれないと困るけど、前世が猫だったことは隠していなさいとラクロア様が言ってたし……あ、さっき猫っていっちゃった。
「あの、僕が猫って内緒にしてくださいね」
「内緒にですか!?なかなかに難しいともうしますか、もうばればれと申しますか、逆にラクロア様がネコだったらそれはそれで問題と申しますか、でも確かにこんなお話をペラペラするようなことはいたしませんので、ご安心してくださいね」
「うん」
優しいメイドさんで良かった。昔からここに勤めるメイドさんは、概ね僕が自由にしてても、見て見ぬふりをしてくれる優しい人が多い。変にかまったり、追いかけられたり、捕まえられたりしないから、ラクロア様のお屋敷はとっても住み心地がよかったの。
そういえば、あの悪いメイドはどうなったんだろ?ちゃんと捕まったかなぁ。僕のこと蹴ったしさ、良くないよね、弱いもの虐めはさ。それに、ラクロア様のこと殺そうとするなんて、本当に許せない、もう居ないよね?ちゃんと叱られたよね?
「あのさ、聞いても良い?」
「何ですか?」
「んっと、僕が今13だから、13年前で良いのかなぁ、あの、13年くらい前に、ここに悪いメイドさんが居たの知らない?」
「13年前ですか?すみません、わたし、まだ3年間しかここで勤めてなくて、あ、でもメイド長のナスリさんなら御存じですよ、だってもう60年くらいここで働いてらっしゃるみたいだし」
「ナスリ、あぁ、まだ生きてるんだね」
「エッ!!そんな、ユリス様、さすがにそれは失礼ですよ、確かに……年齢は、おばぁさんの領域ですが、あの人、人の3倍くらい働く凄い人ですし」
「あ、悪い意味で言ったんじゃないよ、僕たちあんまり長生きできないから、まだ生きてて凄いなと思って」
「ユリス様……もしや、短命のご家庭で?お体が弱いですもんね、だから、ラクロア様があんなに心配してるんですね、ぐすん、ユリス様可哀想です」
涙ぐんだメイドさんは、ぱしっと僕の手を掴んだ。僕は一瞬、あ、触らないでと思ったけど、猫の時より嫌悪感みたいなのは薄くて、耐えられた。
「ユリス様、私、メルって言います、どうかこれからは私に何でもおっしゃって下さいね、苦しいとか、つらいとかあったら直ぐにお医者様呼びますからね」
「お医者様あんまり好きじゃないの」
「でも、元気でいないとラクロア様が悲しみますよ」
「そうね、それはだめだね」
「そうですよ、ユリス様が元気にしてれば、ラクロア様も安心してお仕事できます。知ってますか?いま、3時間毎にユリス様の様子をラクロア様に報告してるんですよ」
「そうなんですか?知らなかった、僕、寝てるだけなのに報告する必要あるんですか」
「有るんです、愛した方が負けというか、常に知っていたいと言うか、ラクロア様はああ見えて一途な方だったみたいです、ずっとお仕事ばかりしてるから、ご結婚とか伴侶をもつとかそんなの興味が無いのだと皆が諦めてましたが、33を過ぎて遂にこんな可愛らしい方を連れてくるなんて、私達皆が喜んでるんですよ」
メイドさん達が喜んでるなら、良かった。僕は前世でもラクロア様に拾われたけど、今世もラクロア様が拾ってくれたし、このままずっとおそばに居られれば幸せなの。でも、僕を死に追いやったメイドがもう居ないのかだけは確かめなきゃね、後でメイド長のナスリさんに会ってこなきゃ。またラクロア様に何かあったら大変だもの。今回は僕は人間だから、ちゃんと飲んじゃ駄目って言えるし。言葉が話せるって便利ね。
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