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25 王様
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怖い人は、じろじろと僕を見てきて、僕はもうラクロア様の腕のなかに逃げ込みたい気持ちになってきた。ぷるぷるしてると、怖い人は、プッと笑った。
「なんだお前、度胸があるのかないのかわかんねーヤツだな、何を震えてるんだ、何にもしやしねーよ」
ガシッと頭を捕まれそうになって、慌てててピュッと壁際に逃げた。
「ふむ、反射神経もよいか」
怖い人は、指でアゴを擦りながら、さらに僕をじろじろみてる。見られるのは好きじゃない、猫に視線を合わせるのは喧嘩を売ってるんだから。僕にもし、前みたいにモフモフの毛皮が有れば、きっと毛を逆立てて、フーフーしてヤンノカポーズするところだけど、今は人間だから、そんなことはできなくて。目線をそらすしか。
「なんか俺、嫌われてません?」
「ヒューリがそんなに詰め寄るからよ、明らかに嫌がってるわよ」
エクリーヌに、ヒューリと呼ばれた怖い人は、肩をくいっとすくめた。背はそんなに高くない猫背で痩せてるけど筋肉が無駄についてないだけで弱々しさはない、元暗殺者だとエクリーヌ様は言ってたけど、この人、たぶん人を本当に殺したことがある。僕がこの人から感じたのは死臭だ。他の侍従さんと、明らかに違うところ。黒い闇みたいなジメッとした薄暗い臭い。
明朗快活なエクリーヌ様にはそぐわない……こんな人をそばに置くなんて、どうしてなの。僕が少し抗議の視線をエクリーヌ様に向けると、エクリーヌ様は、あら?という顔をした。
「心配は要らないわ、この人は私を裏切らないから、お兄様だけじゃなくて私の事も心配してくれるの?可愛い子ね、ふふ、私、気に入ったわ、お兄様の伴侶になれるようにしっかり色んな事を教えてあげるから安心しなさいな」
ふふふっと、笑うエクリーヌ様は綺麗で、僕は人間の美醜はよく解らないけど、エクリーヌ様は確かに美しい人だと思った。でも綺麗な人はあぶない。死神に好かれちゃうの。ヒューリは、もしかしたら、人間のふりをしてる、死神かもしれない。
「エクリーヌ様あんまりその人と仲良くしないで」
「ふふ、ヒューリ、メチャクチャ嫌われてる、あなたって本当に子供から好かれないわね」
「わ、私は好きだぞ!!元暗殺者ってカッコいいし!!」
王様が興奮した顔で、ヒューリに向かってふんすふんすと鼻息を荒くしてる。あのね、王様もあんまり仲良くしない方が良いと思うの。
王様の裾をちょっとだけ掴んでひっばった。
「あ?なんだよユリス」
「あんまり近くへ行っちゃだめなの」
「はあ ?母上の護衛なんだから味方だろ、なんだよ怖いのか?しょうのないヤツだな」
王様はそういって、裾を掴む僕の手をギュッと握った。
「私が守ってやるから怖がるな」
この人は、、何て言うんだっけ、天気……そう、能天気だなと思った。だけれど、お日様みたいに暖かい人なんだなとも思った。天気でお日様で、暖かい、あぁ、だから王様なんだね。王様は、皆を照らさなきゃいけないもの。僕はいつの間にか、この小さな王様をほんのちょっと好きになっていた。猫は暖かいものに弱いのだもの。
「なんだお前、度胸があるのかないのかわかんねーヤツだな、何を震えてるんだ、何にもしやしねーよ」
ガシッと頭を捕まれそうになって、慌てててピュッと壁際に逃げた。
「ふむ、反射神経もよいか」
怖い人は、指でアゴを擦りながら、さらに僕をじろじろみてる。見られるのは好きじゃない、猫に視線を合わせるのは喧嘩を売ってるんだから。僕にもし、前みたいにモフモフの毛皮が有れば、きっと毛を逆立てて、フーフーしてヤンノカポーズするところだけど、今は人間だから、そんなことはできなくて。目線をそらすしか。
「なんか俺、嫌われてません?」
「ヒューリがそんなに詰め寄るからよ、明らかに嫌がってるわよ」
エクリーヌに、ヒューリと呼ばれた怖い人は、肩をくいっとすくめた。背はそんなに高くない猫背で痩せてるけど筋肉が無駄についてないだけで弱々しさはない、元暗殺者だとエクリーヌ様は言ってたけど、この人、たぶん人を本当に殺したことがある。僕がこの人から感じたのは死臭だ。他の侍従さんと、明らかに違うところ。黒い闇みたいなジメッとした薄暗い臭い。
明朗快活なエクリーヌ様にはそぐわない……こんな人をそばに置くなんて、どうしてなの。僕が少し抗議の視線をエクリーヌ様に向けると、エクリーヌ様は、あら?という顔をした。
「心配は要らないわ、この人は私を裏切らないから、お兄様だけじゃなくて私の事も心配してくれるの?可愛い子ね、ふふ、私、気に入ったわ、お兄様の伴侶になれるようにしっかり色んな事を教えてあげるから安心しなさいな」
ふふふっと、笑うエクリーヌ様は綺麗で、僕は人間の美醜はよく解らないけど、エクリーヌ様は確かに美しい人だと思った。でも綺麗な人はあぶない。死神に好かれちゃうの。ヒューリは、もしかしたら、人間のふりをしてる、死神かもしれない。
「エクリーヌ様あんまりその人と仲良くしないで」
「ふふ、ヒューリ、メチャクチャ嫌われてる、あなたって本当に子供から好かれないわね」
「わ、私は好きだぞ!!元暗殺者ってカッコいいし!!」
王様が興奮した顔で、ヒューリに向かってふんすふんすと鼻息を荒くしてる。あのね、王様もあんまり仲良くしない方が良いと思うの。
王様の裾をちょっとだけ掴んでひっばった。
「あ?なんだよユリス」
「あんまり近くへ行っちゃだめなの」
「はあ ?母上の護衛なんだから味方だろ、なんだよ怖いのか?しょうのないヤツだな」
王様はそういって、裾を掴む僕の手をギュッと握った。
「私が守ってやるから怖がるな」
この人は、、何て言うんだっけ、天気……そう、能天気だなと思った。だけれど、お日様みたいに暖かい人なんだなとも思った。天気でお日様で、暖かい、あぁ、だから王様なんだね。王様は、皆を照らさなきゃいけないもの。僕はいつの間にか、この小さな王様をほんのちょっと好きになっていた。猫は暖かいものに弱いのだもの。
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