胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第一章

24 告白

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……泣きすぎた。恥ずかしいを通り越してなんかもう、賢者タイム的な……。電気も付けてない室内は既に薄暗くて、ようやく止まった涙、葉月は、しがみついてる鉄堅の腕をみつめた。

鉄堅の仰暒高校の真っ白な長袖シャツに、葉月の涙がボタボタ落ちたせいで、袖が濡れている。

「ごめ、濡れた」
「かまわないよ」

鉄堅はそういって、ポケットからキチンと折り畳まれたハンカチを出して葉月の頬へ当てた。

葉月はまるで、これでは赤ん坊だと思ったけれど、優しく触れる指先と、ハンカチ越しの熱が心地よくてされるがままに拭いてもらった。

鉄堅は、ハンカチで、恐る恐るまるで宝玉の玉を磨くがごとく丁寧に、すこしの傷もつけぬように優しく、撫でるように、葉月の涙をぬぐった。鉄堅の冷たい指先がつつっと、葉月の頬に触れて未練を残す様に離れていく。

「赤くなってる、冷やした方が」
「いいよ、寝れば治るし」

真っ直ぐな鉄堅の視線と目を合わせるのが恥ずかしすぎて、ふぃっとそっぽを向いてしまう。しがみついてた腕を離すと、それが合図みたいに、鉄堅は身体を離した。離れてく熱が少し名残惜しくて、空いた距離がもどかしかった。

自分の気持ちをどうやって伝えようと、葉月は、視線を彷徨わせる。

(ここで、突然俺も好きだったって言うのおかしいかな、なんか前置きを置いてからとか?)

好きなんて、散々鉄堅から浴びてきた言葉なのに、いざ自分が口にすると思うと、これはなかなか言えるものではない。一度口にしたら取り返しのつかない言葉だ。

嫌いより遥かに言いにくい言葉だ。新しい関係が産まれる責任のある言葉。

(何で鉄堅は、簡単に言えるんだよ、俺より軽い気持ちで言ってるのか?)
少し心に疑問がわく。わいたら、聞かずにはいられない。

「お前、俺のことまだ好きなの?」
「好きだよ、好きじゃなくなる方法なんか一生解らないくらい……好きだよ」

「軽い気持ちで言ってない?」
「軽い? 言葉の重さというなら、たぶん激重の部類に入ると思うけど」
「だって、お前いつも簡単に言うじゃん」

葉月の責める様な口調に、鉄堅は少し怯んで、うつ向いた。
「それは……何回も言えば、一つくらいの好きが葉月ちゃんに届くかなって、届いたらいいなって、思って、つい、その、鬱陶しいだろうとは思ったけれど」
「ングッ」

それで連発してたのかよ、確かに数撃ちゃ当たるかもしれないけど、打たれ続ける俺の身にもなれ。赤面しつつ、それを隠すように手の甲で顔を隠した。
「そーかよ」
「うん。でも、結局、一つも届かないね」

鉄堅は、少しだけ寂しそうに静かに笑った。葉月は、目を見開いて、思わず、鉄堅を見た。鉄堅は、葉月を見つめて、目元だけで笑みを作ると、そっと視線を下げた。

「そろそろ帰るよ、長居してごめんね」
「あ……いや、あの」
「葉月ちゃん目元、やっぱり冷やした方が良いよ、腫れるかもだし」

目の話なんかどうでも良い。ここで帰られたらいつもと同じだ。どうせ俺はまたグルグル考え出して、後戻りして、好きなんて言えなくて、また疑い出すに決まってる。

「待って」
「え?」

「あのさ……たぶんだけど、たぶん」
「うん」
「たぶん、俺も、お前のこと好きだと思う」
「え?」
「届いてるよ、お前の気持ち」
「葉月ちゃん……?」

鉄堅は、呆然と葉月を見つめた。見つめられればられる程、葉月は自分の顔が赤らんでいくのがわかった。こんなに血が熱く感じるのは初めてだった。

恥ずかしいから何か言えと思うのに、鉄堅は、まるで時が止まったかのように動きもしない。





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