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第二章 帝国編
第6話 厄災源とのお茶会
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※ルード視点です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
side:ルード
シェイラが潜入活動に勤しむ傍ら、ルードの方はといえば。
此度の厄災源ー…母・レムリアと顔を突き合わせていた。
帝国を空けていた間に溜まった仕事を片付けていたルードの元へ、母から突然のお茶の誘いが侍女から届けられたのが発端である。面倒極まる上に誘いの理由など分かり切っていたが、
無視を決め込むといった選択肢はない。
無視した場合、執務室にまで押しかけてくるのが目に見えているからだ。
白磁宮の後ろにそびえる別なる宮ー…“緑光宮”
先帝及びその妻が居するこの宮に自ら足を運んだのは何時振りだろう……
香りの良い紅茶を口に含みながら益体もなくそんな物思いに耽ってしまうのは、現実への回帰を望んでいないからか。
はたまた、厄介事の種をあたり構わず振りまく目の前の母を直視したくない心の表れか。
緑の生い茂る美しい緑光宮の庭園では、暖かな日差しの中で冷え切った態度の息子とニコニコと上機嫌な母親の奇妙で居心地の悪いお茶会が開催されていた。
その空気感を察してか、すでに女官らは姿を消しているし、
護衛の騎士らも遥か遠方に待機している。
『ー…それで?
何ようあっての呼び出しですか、母上?俺はこう見えても忙しい身なのだが』
『ふふふ!そんな硬い物言いは止せ、ルード。
可愛い息子をお茶に誘う母がそんなにおかしいか?』
こんなに素晴らしいお茶会日和だというのに!!と大仰に両手を上げて首を振るレムリアに胡乱げな眼差しを送りながら嘘をつけ、と悪態を吐く。
日和が良いだけでお茶会に呼ぶことなど、今まで一度もしたことなどない癖に、と。
『冗談はその辺にして本題に入っていただけるか。
何もないようなら俺はこれで』
『シェイラ、という娘を連れ帰ったようではないか。
私は挨拶されていないようだが?』
(やはりその話か)
『ほう。挨拶に参じてもいない者のことを、何故母上がご存知で?』
『異なことを言うな、ルード。
その女性とやらがお前の命で後宮入りをしようとしたと女官長から聞いているぞ。
現在満室につき、断ったと言っていたが……今どこにいるのだ?
何故挨拶にこない?』
『それを他ならぬ母上に言われるとはな……。
ー…誰のせいで挨拶も出来んと思っている?』
『おや、誰のせいとはまた、まるで私がそう仕向けたと言わんばかりだなぁ』
『事実そうだろう。
本来帰還後すぐにでも母上と父上に彼女共々挨拶に伺うつもりが、私が留守の間に好き勝手してくれたのは誰です?
あの女性達を国中から無為に集めたのは?』
『ふむ、私だな!』
あはは、と豪快に笑い、塵程も悪びれない態度でそう言い放った彼女にかつてないほどの苛立ちを覚えた俺は、辛うじて心掛けていた最低限の礼節もこの時投げ捨てた。
『っ逆にどうして挨拶してもらえるだなどと思えるのか、お聞きしたいところだな。
あんなに大勢集めておいて、帰還した俺が嫁を連れてきた、などと言えば大事になるのは目に見えている!』
『それでも挨拶は必要だぞ?
嫁・姑の間柄になるのなら余計にな。
だからほれ、今すぐに連れてこい』
『却下だ却下。
そう言われて誰が会わせるものか。
いずれ挨拶をしにあんたの前に連れてくることがあるとしても、それは今じゃない。
少なくとも厄介事が去った後だ』
『厄介事?はて、何の話だ息子よ』
『………惚けるのもいい加減にしたらどうだクソばばぁ。
あんたはこれ以上余計なことをせず、首も突っ込まず、
大人しくここで隠居生活を楽しんでいれば良い!!』
『抜かせ、クソ餓鬼。
隠居生活が退屈だから事を起こすんだろうが!
そもそも皇太子時代から今に至るまで嫁を決めなかったお前が悪い!』
『はっ!本音が出たなぁクソばばぁ。
自分が楽しめれば何をしても許されると思っているその傲慢さが鼻につく。
俺が嫁を決めることが出来なかったのも元はと言えばあんたのせいだからな!
今までどれだけ周りが被害を被って苦しんできたと思っている!!?
そもそも!』
『楽しそうで何よりですがお二人共。
かなり声が大きゅうございます、もう少し落ち着かれては?』
不毛な言い合いへと発展しかけた会話は、お茶会への飛び入り参加者によって打ち切られた。
『『!!……リオン!!』』
『お久しゅうございます義母上。
そして………お帰りなさい、ベルナード義兄上!』
(不本意ながらも)母と同時に声を上げて振り向いた先には、
母違いの弟・リオンが暖かな日差しの中、
にっこりと柔らかな笑みを浮かべて佇んでいた。
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side:ルード
シェイラが潜入活動に勤しむ傍ら、ルードの方はといえば。
此度の厄災源ー…母・レムリアと顔を突き合わせていた。
帝国を空けていた間に溜まった仕事を片付けていたルードの元へ、母から突然のお茶の誘いが侍女から届けられたのが発端である。面倒極まる上に誘いの理由など分かり切っていたが、
無視を決め込むといった選択肢はない。
無視した場合、執務室にまで押しかけてくるのが目に見えているからだ。
白磁宮の後ろにそびえる別なる宮ー…“緑光宮”
先帝及びその妻が居するこの宮に自ら足を運んだのは何時振りだろう……
香りの良い紅茶を口に含みながら益体もなくそんな物思いに耽ってしまうのは、現実への回帰を望んでいないからか。
はたまた、厄介事の種をあたり構わず振りまく目の前の母を直視したくない心の表れか。
緑の生い茂る美しい緑光宮の庭園では、暖かな日差しの中で冷え切った態度の息子とニコニコと上機嫌な母親の奇妙で居心地の悪いお茶会が開催されていた。
その空気感を察してか、すでに女官らは姿を消しているし、
護衛の騎士らも遥か遠方に待機している。
『ー…それで?
何ようあっての呼び出しですか、母上?俺はこう見えても忙しい身なのだが』
『ふふふ!そんな硬い物言いは止せ、ルード。
可愛い息子をお茶に誘う母がそんなにおかしいか?』
こんなに素晴らしいお茶会日和だというのに!!と大仰に両手を上げて首を振るレムリアに胡乱げな眼差しを送りながら嘘をつけ、と悪態を吐く。
日和が良いだけでお茶会に呼ぶことなど、今まで一度もしたことなどない癖に、と。
『冗談はその辺にして本題に入っていただけるか。
何もないようなら俺はこれで』
『シェイラ、という娘を連れ帰ったようではないか。
私は挨拶されていないようだが?』
(やはりその話か)
『ほう。挨拶に参じてもいない者のことを、何故母上がご存知で?』
『異なことを言うな、ルード。
その女性とやらがお前の命で後宮入りをしようとしたと女官長から聞いているぞ。
現在満室につき、断ったと言っていたが……今どこにいるのだ?
何故挨拶にこない?』
『それを他ならぬ母上に言われるとはな……。
ー…誰のせいで挨拶も出来んと思っている?』
『おや、誰のせいとはまた、まるで私がそう仕向けたと言わんばかりだなぁ』
『事実そうだろう。
本来帰還後すぐにでも母上と父上に彼女共々挨拶に伺うつもりが、私が留守の間に好き勝手してくれたのは誰です?
あの女性達を国中から無為に集めたのは?』
『ふむ、私だな!』
あはは、と豪快に笑い、塵程も悪びれない態度でそう言い放った彼女にかつてないほどの苛立ちを覚えた俺は、辛うじて心掛けていた最低限の礼節もこの時投げ捨てた。
『っ逆にどうして挨拶してもらえるだなどと思えるのか、お聞きしたいところだな。
あんなに大勢集めておいて、帰還した俺が嫁を連れてきた、などと言えば大事になるのは目に見えている!』
『それでも挨拶は必要だぞ?
嫁・姑の間柄になるのなら余計にな。
だからほれ、今すぐに連れてこい』
『却下だ却下。
そう言われて誰が会わせるものか。
いずれ挨拶をしにあんたの前に連れてくることがあるとしても、それは今じゃない。
少なくとも厄介事が去った後だ』
『厄介事?はて、何の話だ息子よ』
『………惚けるのもいい加減にしたらどうだクソばばぁ。
あんたはこれ以上余計なことをせず、首も突っ込まず、
大人しくここで隠居生活を楽しんでいれば良い!!』
『抜かせ、クソ餓鬼。
隠居生活が退屈だから事を起こすんだろうが!
そもそも皇太子時代から今に至るまで嫁を決めなかったお前が悪い!』
『はっ!本音が出たなぁクソばばぁ。
自分が楽しめれば何をしても許されると思っているその傲慢さが鼻につく。
俺が嫁を決めることが出来なかったのも元はと言えばあんたのせいだからな!
今までどれだけ周りが被害を被って苦しんできたと思っている!!?
そもそも!』
『楽しそうで何よりですがお二人共。
かなり声が大きゅうございます、もう少し落ち着かれては?』
不毛な言い合いへと発展しかけた会話は、お茶会への飛び入り参加者によって打ち切られた。
『『!!……リオン!!』』
『お久しゅうございます義母上。
そして………お帰りなさい、ベルナード義兄上!』
(不本意ながらも)母と同時に声を上げて振り向いた先には、
母違いの弟・リオンが暖かな日差しの中、
にっこりと柔らかな笑みを浮かべて佇んでいた。
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