出涸らし令嬢は今日も生きる!

帆田 久

文字の大きさ
120 / 161
第二章  帝国編

第27話  翠髪の男①

しおりを挟む
※複数視点でお送りします。
ルード→シェイラ視点

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


side:ルード


『おいルー…陛下、何をそんなに』

『頼む、少し黙っていてくれないか』


参加していた者達全員から粗方聴取を終えたルードは、
騎士団の訓練場から連れてきたガドを伴い
シェイラの待つ自身の居室へと足早に向かう。
かなり急いたその歩調にガドが怪訝な顔をしているのが分かるものの、
ルードとしては如何ともしがたい。

あれだけ有事に警戒していたにも関わらず、なす術無く正気を失い倒れるなど、
失態もいいところだ。
何があっても守ろうと誓っていたシェイラ本人に助け起こされたのも
焦る理由の一つである事は間違いないが。
話を聞いたところで原因も、
その現象を引き起こした犯人も明確に特定する事も出来ず、
忸怩たる思いが募る。

しかし交流会と銘打った以上
入場前に参加者へ大っぴらに所持品などの検査をする訳にもいかず、
また聴取時にも誰からもなにも出る事は無かったのだ。

一番疑わしい二人の令嬢にしても
疑心は抱けど確証はなく、酷く困惑した様子に結局部屋へと帰すしか無かった。
後はもう、唯一事の終始を見ていた可能性のあるシェイラに話を聞く他ない。


あの時彼女は自分ルードが目を覚ました事にほっとしていたが、
困惑した様子ですぐに語る事は無かった。
おそらく彼女自身にも説明のし難いを見たか聞いたか……
兎に角、少しでも情報が欲しい。

そう思い部屋の扉を開いた俺の視界にー……


室内でモリーが茶を振る舞う横で椅子に腰掛けシェイラの頭を撫でて微笑する、
長い翠髪の美男の姿が飛び込んできたことにビキリと額に太い青筋を立てた。



..................................................................................................................................


side:シェイラ


少し遡り、シェイラが交流会会場から居室へと帰ってきたばかりの時ー。


疲れからため息をそっと吐いたシェイラに、
一緒に部屋へと入ったモリーが深々と頭を下げた。

『…モリー?』

『申し訳ございませんシェイラ様!!
本日は御身を守るべき私とした事が、とんだ失態を……』

『……頭を上げて頂戴、モリー。
今日のことは誰のせいでも失態を責められるべき事でもありませんよ』

『っしかし!!』

『もし失態を責めなければならないとしたら
私も陛下ルードを、
そしてモリーや他の方々が倒れるのを阻止出来なかった事を
責められてしかるべきです』

『…それは』

『ね、言い出せばきりの無い責任の追及はやめましょう?
私にモリーを責めるつもりは全くありませんし、
何より少し、疲れました...。
ここはモリーの淹れた美味しい紅茶を飲んで
気を休めるところだと思うのですが、

……淹れて頂ける?』


『はい!』


シェイラの言葉に元気を取り戻して明るく返事をしたモリーが部屋を一旦辞した後、
もう一度深くため息をついて椅子に座る。

場合によっては何かが起きるかも知れないと
覚悟を決めて臨んだ今日の交流会。
二人の貴族令嬢が早々醜態を晒して退場、
新たな友人が出来たと思えば皇帝以下会場内にいた者全員が昏倒。
波乱も波乱、大波乱である。
モリーにああ言ったものの、
本来なら皇帝が倒れる惨事を引き起こしたとして
あの場にいた全員が理由如何に問わず罰せられてもおかしくはない事態が起こったのだ。
ため息の一つや二つ、つきたくもなろうというものだ。

この後ー…おそらく夜になるとは思うが、
この部屋でルードに自分の知る事を説明しなければならない。
しかしそうなるとあの翠髪の男性のことを語らずにはいられないが、
さてどう説明したものか……とモリーの紅茶を待つ間思い悩んでいると。


【なにを一人で唸り声を上げているのだ小娘】

『ピャッッ!!?』


またしても唐突に間近で響いたその低い声に、
奇声を上げて肩を跳ね上げ立ち上がる。

【うぉっ!?いきなり立ち上がるでないわ、吃驚するではないか!!】


ゆっくりと横に顔を向けると、
そこには先ほど会場で見た翠髪の男性が片眉を上げて自分を覗き込んでいた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※長くなったのでページを分けます。
この続きは夜更新します!!











しおりを挟む
感想 608

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」

みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。 というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。 なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。 そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。 何か裏がある―― 相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。 でも、非力なリコリスには何も手段がない。 しかし、そんな彼女にも救いの手が……?

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

あなたと別れて、この子を生みました

キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。 クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。 自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。 この子は私一人で生んだ私一人の子だと。 ジュリアとクリスの過去に何があったのか。 子は鎹となり得るのか。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 ⚠️ご注意⚠️ 作者は元サヤハピエン主義です。 え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。 誤字脱字、最初に謝っておきます。 申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...