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3 心当たりなど一つしかない
しおりを挟むお隣さんから齎された衝撃的なニュースにより、
第二体育館に集まっていた部活は早朝練習を中止せざるをえなかった。
理由はーー
その1・聖の信奉者(ファン)が予想以上に多く、軒並み集中力が失せてしまった為。
その2・各部活の主将がそれこそ閻魔様も裸足で逃げ出す程の殺気を
体育館内に放ちまくっていた為。
結局主将らが恐ろしくて精神を削られるか、
彼退部のニュースに集中力が失せるかの2種類しかいなければ当然練習にすらならず。
グダグダと着替えて校舎へと向かう部員ら。
そんな彼らを尻目に、
素早く身支度を整えた鬼塚、佐伯、樋口は目配せし合い小さく頷き合うと、
「「「職員室に行く(ぜ\よ\ぞ)」」」
と声を揃えた。
兎にも角にも真偽の程を確認せねばと職員室へと向かえば、
ぶるぶると奇妙に震えて床を張っている芋む…弓道部顧問の姿が。
肩に手を置いただけでびくりと跳ね上がり
「すみませんすみませんすみません僕は引き留めたんです頑張ったんですでも無理だったんです一身上の都合らしいんですいじめとかそんな理由じゃないんですだから吊し上げないでェェェ!!」
とますます床をのたくりながら両手を南無南無。
「「「………どうやら退部は本当、らしいな」」」
己を放置して退室すると、再び声を揃えて一言。
正直、顧問のあの様子はドン引きもいいところだが、気持ちもわからんでなし。
何せ顧問が指名した3年主将は数日もしないうちに主将の座を2年になったばかりの聖に譲って退部し、その聖までもが明確な理由も不明なまま突然退部届を持参したのだから。
ただでさえ強豪、そして聖と彼に士気を引き上げられ連戦連勝な弓道部に対しての周囲の期待値は限りなく高い。
聖の容姿、カリスマ性、実績により多くのOB陣や教師陣、生徒達が魅了され、ファンも入部・見学・果ては入学希望者は軒並み増加。
付属の龍徳院大学弓道部からすら早く卒業し大学でもその腕をと熱烈なラブコールが鳴り止まないと聞く。
そんな中、当の聖が、退部。
最高学年満期による引退ではなく、中途学年での退部。
……周囲の反応、推して知るべしである。
「…おそらく、暫くは退部届は受理されない筈だ」
なぁ、佐伯?との鬼塚の言葉に強張った笑みを浮かべる佐伯が
「……ええ、絶対に阻止しますとも」
と断言する。
何せ佐伯の父はこの龍徳院高校の学校長であり、同時に熱烈な聖ファンなのだから。
「…しかし。いつまで留めておけるか」
生徒が提出した正式な書類を、
いくら学校長とはいえいつまでも保留扱いにはできない。
当然いつかは受理されるのだ。
であればどうするか。
ー彼に退部を決意させてしまった元凶を取り除くしか道はない。
本人を説得したところで案外頑固な聖のこと。
余計頑なになるのは目に見えているからだ。
では原因とは?家庭の都合?
いや、彼は中学の時に事故で両親を亡くしている。
高校にも奨学制度を利用して通っているし、生活も親の死亡保険や相続した遺産、バイトなどで賄っていると以前聞いた。
部活内での人間関係?
あり得ない。ぶっちゃけ弓道部員ほぼ全員が彼の信奉者だ。
…鈍い彼は気付いていないかもしれないが。
では原因とは?彼に心理的変化を起こさせることの出来る存在?
…そんなもの、決まっている。
本当に腹立たしくてしようがないが、
「「「心当たりなんぞ、一つしかない(な/だろうが)」」」
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