華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久

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出会い〜ツガイ編

16話  ジレウス視点

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(Side:ジレウス)



冒険者ギルド、ギルド長室全体に、
現在異様な緊張感が満ち満ちていた。

室内には俺、補佐のミルド、そしてーー


「ひぅ……っっ」

「だだだ大丈夫ですよぉ~?ぜ、全然怖くないですからぁ!
ただちょっとちくっと………、っいやいやいや全然痛くないですよ!?」

「………」

接客用のローテーブルに置かれた一枚の用紙。
種族検査に使われる特殊な付与を施されたその用紙の上に手を固定されて泣きそうに大きな瞳を潤ませている、コーキ。
彼が恐怖を感じているのは、検査時に使用するとある道具だ。

その名もズバリ、ーー針だ。
細くてちっさい針、なのだ。

使い方は至ってシンプル。
ただその針でプスッと指を刺して血を一滴、紙へと垂らすだけ!なのだが…。

キラリと鈍色に煌めくよく磨かれたそれを視界に入れた瞬間、
コーキが恐怖から拒絶反応を示してしまったのだ。

今もなお、うさ耳野郎が泣きそうなコーキに動揺しつつも必死に安全性を説いているが。

「うさ耳さ………怖ぃ…」

「ぐふぅ……っ!」

自分の手を掴んで離さないうさ耳野郎の、
わっさわっさと揺れ動く長耳を、どうやら恐怖の象徴と認識してしまったようだ。
何故なら彼の恐れを宿した視線がうさ耳に釘付けだから。

「ぎ、ギルマスぅ~~~ッッ!!」

「ギルマス言うな代理だといつも言ってんだろが!!」

しまいには、僕には出来ません~と縋り付いてきたうさ耳野郎の頭頂部へ鉄拳を振り下ろす。
だが確かにこれではいつまで経っても帰れない。

俺は鉄拳により床へ転がったミルドを跨いでコーキの元へ行き、しゃがみ込む。
そして徐に予備として用意されていた針で、
ぷすりと指先を刺した。

「!!?」

「コーキ、……コーキ、落ち着け」

プクー……と丸い血の玉が指先に出来たのを視認してびくりと肩を跳ねさせたコーキを落ち着かせ、ほら、とその指を彼の目の前に差し出す。

「ほんの一瞬、痛くも何ともない。
俺が痛がっているように見えるか?」

「……っぅうん、見えなぃ」

「そうか。じゃあ、コーキも頑張れるよな?」

諭すように告げると、少し逡巡したのち、
コーキはコクンと頷いた。
そして震えながら一度引っ込めてしまっていた手を俺に差し出した。

「……いい子だ」

その様がまるでうさ耳野郎よりも俺を信じると言ってくれているようで少し嬉しくなりながら、出来るだけ彼が痛みや恐怖を感じないよう素早くチョンと刺してその指を紙に押し付けた。

そして

「っふぇ!?」

「ー…消毒だ。これで終わりだ、よく頑張ったな!」

彼の血液に反応して紙が淡く光るのを横目で確認しつつ、
彼の刺した指先をちゅ…と口に含んで残った血液を舐めとる。
俺の行動に驚き声を上げたコーキ、だがその目に先ほどまで浮かんでいた恐怖の色はもうない。
殊更明るく、全然痛くなかっただろ?と笑ってやると、
緊張感から解放されて、ヘナヘナとその場で脱力してしまった。


「っおっと」

危うく床に転がってしまうところを寸前で抱き留め彼を抱え込む。
彼を抱えたままソファにどかりと座ると、用紙が放つ光が収まるのをゆっくりと待つ。


やっと光が収束したところで浮き上がる文字を、
コーキと一緒に覗き込んだ。

何とも想定外の出来事であったが、
どれ、どんな結果が出るのかーー


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