華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久

文字の大きさ
24 / 50
出会い〜ツガイ編

22話

しおりを挟む



ジレウスにある日、
僕には色々と特別なスキルや称号がついていることを知らされた。
実は例の検査用紙にその名称が記載されていたことを知って驚いた僕だったが、
正直それを知らされたところでそれがどういったものなのか、
どうやって行使するのか全く分からず、戸惑うことしか出来ない。

それらを知るにはどうしたら…とジレウスを仰ぎ見ると、
心の内を覗くように念じるのだと答えが返ってきたので実行してみた。

すると、ヴヴン……と機械が起動するような音が頭の中に鳴り響き、ビクッと肩を跳ねさせる。
恐る恐る目を開けると、目前に半透明のパネルのようなものが宙に浮いており、ジレウスが言っていたスキルや称号といった文字とその名称が書かれていた。

(ふぇ~、ファンタジーっていうんだっけこういうの…!!)

前世ーーまだ学校に通えていた中学1年の頃に同級生が楽しげに語り合っていたゲームに出てくるものにかなり類似したそれを興味津々に眺める。

彼に名称がちゃんと載っているかと問われて頷き、
詳細はわかるかと問われて首を傾げる。
どうやらジレウスの話ではこの宙に浮いてるパネルは本人にしか見えず、
詳細を知りたい場合は改めて知りたいと念じる、らしい。

(えと、パネルさん!詳細を教えて!!)

強く念じて明らかになった、その詳細。


………………………………………………………………………………

癒しの手→魔力を消費して病魔に侵された動植物を
     手で触れることにより快癒させる

甘露→体液を甘く変化させる(常時発動)
   した人間には生命力や魔力を回復・増大効果あり

自己犠牲→自身の生命力を代償にして
     他者の身体・精神的ダメージを肩代わりする


称号:無念なる転生人→不幸な死を迎えた魂に与えられる
          効果:前世と異なる種族への転生
            肉体年齢は前世の死亡時に準じる

称号:慈母神の加護→慈母神より加護を賜りし命に与えられる
         身体に害を与えるあらゆる病魔の無効化

………………………………………………………………………………



………。

……………。

(………なんだかよくわからないけど凄いことが書いてある、気がする)

元々名称を見た時からなんか凄そう、とは思っていたけどこれは。

取り敢えず知り得た情報をジレウスに読み上げる。
ジレウスはーー…、かなり眉を顰めていた。

口元を手で覆って黙ってしまった彼は、
どうやら今僕が読み上げた説明について思考していることが理解できる、が。
険しさ満点な表情の下、一人放置された僕は、不安になる。

「よくわからないけど、あんまり……良くない、の?」

聞かずともわかり切っていることながらつい聞いてしまうのは、見放される恐怖からだろうか。
(何だよぉ…甘露?自己犠牲?
体液が甘くなるとか摂取した人間に効果を齎らすとか!
自分の生命力を代償に?他人を回復、じゃなくてダメージ肩代わり!?
び、病気にならないのは良いことだけど神様の加護??
……意味わかんない。
………。
怖い怖い怖いッッ!ふ、不安しかない!!)

表情を曇らせたまま黙ってしまったジレウスの腹あたりの服を握りしめて必死に見上げる。
裾を握られているのに全く気付く素振りすら見せずに長考するジレウスに、
思わず瞳に涙が込み上げてくる。
しかしここで泣くのはあまりに情けなくまた狡い。
優しい彼のこと、きっと自分が泣けば心配して優しい言葉で宥めてくれるのに違いない。
そしてその慰めの言葉の中には自身の能力が危険ではないという、
真実とはかけ離れた言葉が含まれるであろうことも容易く予想できた。

(ホント僕って、嫌な子供、だなぁ)

卑屈なまでの自嘲を含んだ感想と同時、
泣くなと必死で目に力を入れて堪え、上を見上げ続けていれば。

ぽふっ

頭に温かくて大きな手がそっと添えられた。
そしてしばらく優しく髪をかき混ぜると、

「コーキ」


徐に膝をついたジレウスが、ぎゅう……と僕を抱きしめた!
はぁ、と小さくないため息をついたことに一瞬びくりと肩を竦ませるが、
直後ゆっくりと背中を撫でられて落ち着きを取り戻す。

「コーキ、悪かった。
……何も知らず、理解もできていないお前が不安になるのは当たり前だというのに、な。

確かに、正直言ってお前の能力は規格外だ。
種族からして希少だし、スキルにしたって貴族や国の上層部なんかに知れた日には拐われいいように使われて一生を終える危険性があるほどだ、そこを今更誤魔化したりしない」

「そんなに危険…なの?」

「危険、といっても攻撃的な意味じゃあないぞ?
そうだなぁ…。
コーキは、この国に治癒のスキル持ちがどれほどいるかわかるか?」

「え、んー…分かんない」

うんうんと唸る僕の背をもう一度ゆっくりと一撫でしてジレウスが苦笑する。


「答えはな、、だ」
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると
BL
【第3部完結!】 第4部誠意執筆中。平日なるべく毎日更新を目標にしてますが、戦闘シーンとか魔物シーンとかかなり四苦八苦してますのでぶっちゃけ不定期更新です!いつも読みに来てくださってありがとうございます!いいね、エール励みになります! ↓↓あらすじ(?) 僕はツミという種族の立派な猛禽類だ!世界一小さくたって猛禽類なんだ! 僕にあの婚約者は勿体ないって?消えてしまえだって?いいよ、消えてあげる。だって僕の夢は冒険者なんだから! 家には兄上が居るから跡継ぎは問題ないし、母様のお腹の中には双子の赤ちゃんだって居るんだ。僕が居なくなっても問題無いはず、きっと大丈夫。 1人でだって立派に冒険者やってみせる! 父上、母上、兄上、これから産まれてくる弟達、それから婚約者様。勝手に居なくなる僕をお許し下さい。僕は家に帰るつもりはございません。 立派な冒険者になってみせます! 第1部 完結!兄や婚約者から見たエイル 第2部エイルが冒険者になるまで① 第3部エイルが冒険者になるまで② 第4部エイル、旅をする! 第5部隠れタイトル パンイチで戦う元子爵令息(までいけるかな?) ・ ・ ・ の予定です。 不定期更新になります、すみません。 家庭の都合上で土日祝日は更新できません。 ※BLシーンは物語の大分後です。タイトル後に※を付ける予定です。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

悪役未満な俺の執事は完全無欠な冷徹龍神騎士団長

赤飯茸
BL
人間の少年は生まれ変わり、独りぼっちの地獄の中で包み込んでくれたのは美しい騎士団長だった。 乙女ゲームの世界に転生して、人気攻略キャラクターの騎士団長はプライベートでは少年の執事をしている。 冷徹キャラは愛しい主人の前では人生を捧げて尽くして守り抜く。 それが、あの日の約束。 キスで目覚めて、執事の報酬はご主人様自身。 ゲームで知っていた彼はゲームで知らない一面ばかりを見せる。 時々情緒不安定になり、重めの愛が溢れた変態で、最強龍神騎士様と人間少年の溺愛執着寵愛物語。 執事で騎士団長の龍神王×孤独な人間転生者

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

処理中です...