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出会い〜ツガイ編
23話
しおりを挟む「答えはな、一人もいない、だ。
ギルドにも一人お抱えがいるが。
ほぼ10割が治癒院で保護されて働いている。
だが皆、治癒魔法を使用しているのであって、スキルじゃない。
莫大な魔力を消費して怪我を治す、そんな使い勝手の悪いものでも希少とされていて、治癒を受けるのにもかなりの金が必要なんだ。
その彼らをしても、病気は治せない。
……意味がわかるか?」
「っ!!」
思わずひゅっと息を呑んだ。
「俺も含めて獣人とは本来、身体が丈夫に出来ている。
だから当然、負傷しても回復が早く、治りも早い。
よっぽどの重傷さえ負わなきゃ、ちょっと休めば元通りって程だ。
かすり傷やちょっとした毒なんかは治癒院での治療より余程安価なポーション類で事足りる。
だが、病気は当然自己回復が難しいし、治癒院に行ったところで治せる見込みはない。
そんなところに、たとえ同じく魔力を消費してでも触れるだけで病魔を取り除ける、快癒させられるなんてスキル持ちが現れたなら……」
今度はゴクリと喉がなった。
それが自分の唾を飲み込む音であることに気付く余裕すらもなく、ひたすらジレウスを凝視する。
「さっきも言ったように、治癒魔法は莫大な魔力を必要とする。
それが小さな傷であったとしても。傷が酷ければ尚更に。
ー…だがスキルならば別だ。
スキルは後天的に体得できる魔法と違って、個々人の持つ先天的な能力。
だから当然、行使する際に必要な魔力も断然少ない」
「どのくらい違うの…?」
「正確なところは未だ判明してはいないが…凡そ100分の1、と言われている」
(そんなの、魔法に比べて魔力消費ないも同然、ってこと?)
スキルと魔法とでそんなにも違うとは!と目を見開く僕をじっと見つめながら、
ジレウスの言葉はまだ続く。
いや、彼にしてみればこの後こそが本当に僕に聞かせたかったことなのだろうと後にしてみれば思う。
「しかもお前のスキルはそれだけじゃない。
寧ろ1番の問題は自己犠牲というスキルだ。
他者の身体的・精神的ダメージを肩代わりする、つまりは治癒魔法やポーションの及ばない肉体・精神の損傷を肩代わりするなんて物騒な特性がある以上、下手をすれば誰かに強要される恐れがある。
そんなことをされてしまえば、コーキは……」
自分こそが痛みを感じたように顔を歪ませたジレウス。
誰かの酷い損傷を肩代わりする。
例えば両手両足が損傷もしくは千切れた、
まさに死ぬ寸前の人間へスキルを使うよう誰かに強要されたら?
(折角生まれ変わったのに、また死んじゃうのかな)
そこまで考えた瞬間、恐怖から目の前が真っ暗に塗り潰された。
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