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出会い〜ツガイ編
25話
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※残酷な描写があります。
苦手な方は回避してください。
=================================================
ああ、これは夢だ……
ぼんやりと霞む意識の中、唐突に僕はそう理解した。
同じく霞む視界には、かつての顔色の悪い自分、その自分を険しい顔で罵る両親、外面の良かった両親を褒めてしっかりしなさいと叱責する近所のおばさん。
前世の様々な様子や人間らが浮かんでは消えてを繰り返していた。
まるで明滅を繰り返す切れかけの蛍光灯のように。
なんだか妙に、全身が寒かった。
※ ※ ※
暫くそれが続いた後、視界は暗転し、一点だけに明かりが点る。
その明かりの下にはーー
『ジレウス……!!』
転生した自分を保護して温もりを与えてくれた、
太陽のような人がこちらを見つめて微笑んでいる。
急激に湧き上がる喜びと温かな熱。
自分という存在を初めて肯定してくれた彼の腕の中に、今すぐ飛び込みたい!
そう考えながら走り出そうとし……
何故かピクリともその場から動けない自分に気付く。
(な、何で?)
どんなに手を、足を前に出そうとしても自由の効かない自身の身体。
夢だと理解しているはずなのに、妙に切実な焦燥感が込み上げる。
早く。早く彼の元に行かなくちゃ!!
焦れば焦るほど、視界が更に霞む。
一度落ち着こう、そう考えた時、彼が僕に向かって両手を伸ばした。
ここにおいで、腕の中に飛び込んでおいで、と。
突然、身体が自由になった!
一目散に暗闇を駆け、短い手足を動かして、必死に明かりの下に佇む彼の元へと向かう。
彼に近付くにつれてどんどんと視界は鮮明になっていき……
やっとたどり着く!!
勢いよく胸に飛び込んでーー、何故かそのまま彼もろとも倒れる。
(何で…?)
大柄で、立派な筋肉の乗った彼の身体。
僕如きが体当たりした程度ではびくともしないはず。
だって彼は強い強いライオンさんなんだから。
飛び込んで彼の胸板が当たる頬には確かに温もりを感じる。
だけど次第に足の先から寒さが身体を蝕み出した。
何で??
僕が抱きついた時、彼は必ずその太く立派な腕で抱きしめてくれるのに!
そう思って頭を横に向けた瞬間ーー
ーーーっ!!!
声にならない絶叫を上げた。
彼の腕が、肩口からすっぱりと切れて地面に落ちている。
慌てて反対側を見ても同じ。両腕が、彼の身体から離れている!!
お医者様に見せなくちゃ!早く!早く!!
取れた腕、肩口から次第に大量の血が流れ落ちるのを目にし、
なんとか彼の身体を引き起こそうとして………
彼の両足もまた、両腕同様に切断されていることに気付き、
またもや絶叫を上げる。
辺りには暗闇が広がり、叫んでいるはずなのに声も響かない。
僕の声を聞いて駆けつけてくれる人間もいない。
(や……やだ。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!!!)
怖い。
彼が、ジレウスが、死んでしまう!!
暗い暗い闇の中、
唯一明かりの下にいるせいか彼の血の色だけがやたらと鮮明で。
どんどんと広がる血溜まりの中、見知らぬ誰かに必死で助けを求めて泣き叫ぶ。
『コーキ』
自分を呼ぶ声にハッとして振り向く。
両腕・両足の取れたジレウスが、僕を真っ直ぐに見つめ、微笑んでいた。
『ジレウス!ジレウス!!』
僕は必死で呼びかけた。
消えないで
きっときっと助ける
助けるから だから
ーー死なないで
(……ああ………)
なんの前触れもなく、思い出した。
僕が、ジレウスと話をしている最中に、
自身の2度目の死を恐怖してこの夢の中に迷い込んだことを。
同時に理解した。
僕が本当は自分が死ぬことに恐怖したのではないことを。
僕はーー………
「コーキッッ!!」
苦手な方は回避してください。
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ああ、これは夢だ……
ぼんやりと霞む意識の中、唐突に僕はそう理解した。
同じく霞む視界には、かつての顔色の悪い自分、その自分を険しい顔で罵る両親、外面の良かった両親を褒めてしっかりしなさいと叱責する近所のおばさん。
前世の様々な様子や人間らが浮かんでは消えてを繰り返していた。
まるで明滅を繰り返す切れかけの蛍光灯のように。
なんだか妙に、全身が寒かった。
※ ※ ※
暫くそれが続いた後、視界は暗転し、一点だけに明かりが点る。
その明かりの下にはーー
『ジレウス……!!』
転生した自分を保護して温もりを与えてくれた、
太陽のような人がこちらを見つめて微笑んでいる。
急激に湧き上がる喜びと温かな熱。
自分という存在を初めて肯定してくれた彼の腕の中に、今すぐ飛び込みたい!
そう考えながら走り出そうとし……
何故かピクリともその場から動けない自分に気付く。
(な、何で?)
どんなに手を、足を前に出そうとしても自由の効かない自身の身体。
夢だと理解しているはずなのに、妙に切実な焦燥感が込み上げる。
早く。早く彼の元に行かなくちゃ!!
焦れば焦るほど、視界が更に霞む。
一度落ち着こう、そう考えた時、彼が僕に向かって両手を伸ばした。
ここにおいで、腕の中に飛び込んでおいで、と。
突然、身体が自由になった!
一目散に暗闇を駆け、短い手足を動かして、必死に明かりの下に佇む彼の元へと向かう。
彼に近付くにつれてどんどんと視界は鮮明になっていき……
やっとたどり着く!!
勢いよく胸に飛び込んでーー、何故かそのまま彼もろとも倒れる。
(何で…?)
大柄で、立派な筋肉の乗った彼の身体。
僕如きが体当たりした程度ではびくともしないはず。
だって彼は強い強いライオンさんなんだから。
飛び込んで彼の胸板が当たる頬には確かに温もりを感じる。
だけど次第に足の先から寒さが身体を蝕み出した。
何で??
僕が抱きついた時、彼は必ずその太く立派な腕で抱きしめてくれるのに!
そう思って頭を横に向けた瞬間ーー
ーーーっ!!!
声にならない絶叫を上げた。
彼の腕が、肩口からすっぱりと切れて地面に落ちている。
慌てて反対側を見ても同じ。両腕が、彼の身体から離れている!!
お医者様に見せなくちゃ!早く!早く!!
取れた腕、肩口から次第に大量の血が流れ落ちるのを目にし、
なんとか彼の身体を引き起こそうとして………
彼の両足もまた、両腕同様に切断されていることに気付き、
またもや絶叫を上げる。
辺りには暗闇が広がり、叫んでいるはずなのに声も響かない。
僕の声を聞いて駆けつけてくれる人間もいない。
(や……やだ。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!!!)
怖い。
彼が、ジレウスが、死んでしまう!!
暗い暗い闇の中、
唯一明かりの下にいるせいか彼の血の色だけがやたらと鮮明で。
どんどんと広がる血溜まりの中、見知らぬ誰かに必死で助けを求めて泣き叫ぶ。
『コーキ』
自分を呼ぶ声にハッとして振り向く。
両腕・両足の取れたジレウスが、僕を真っ直ぐに見つめ、微笑んでいた。
『ジレウス!ジレウス!!』
僕は必死で呼びかけた。
消えないで
きっときっと助ける
助けるから だから
ーー死なないで
(……ああ………)
なんの前触れもなく、思い出した。
僕が、ジレウスと話をしている最中に、
自身の2度目の死を恐怖してこの夢の中に迷い込んだことを。
同時に理解した。
僕が本当は自分が死ぬことに恐怖したのではないことを。
僕はーー………
「コーキッッ!!」
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