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出会い〜ツガイ編
26話
しおりを挟む「コーキッッ!!」
「っ!」
その声に、急激に意識が覚醒した。
パッと見開いた目の前には、酷く焦ったような、ジレウスの顔。
いつも燦々と照りつける太陽のように明るく笑うジレウス。
今は、なんだかすぐにでも泣いてしまいそうな顔をしている、何でだろう?
「ジレ、ウス…」
「っ良かったっ!突然倒れたんだぞお前!
かと思ったら急に叫び出してッッ……意識が戻って、良かった……っ」
「ジレウス…僕……」
僕の目を覗き込んで、ちゃんと焦点が合っていることに安堵した彼が、くしゃりと顔を歪めて笑う。
僕の声に応えようとん?どうした?と優しい声をかけてくれる。
ぽかぽかと冷え切った身体に熱が戻ってくるのを感じて、
心から安堵する。
「僕、ね…?怖かったんだ」
「あ、ああ。俺がやたらと怖がらせるような言い方をしたからそれで」
「ううん。
確かに、もう一度死ぬのは、やだなぁって…
痛いのも嫌だって、思うけどーー」
自分の説明の仕方が僕の不安を煽ったのだと。
まだ起きてもいないことで、
自分こそが僕を傷つけたのだと。
こんな時でも僕の弱さじゃなく自分を責める彼の優しさにひどく擽ったさを覚えた。
彼は本当に大きくて、優しくて、温かい。
トクトク……トクトク……
いつもよりも心臓の鼓動が大きく耳奥で反響する。
この音が僕の心臓の音なのか、彼のものなのかはわからないけれど。
今はそれが全く不快に感じず、どころかひどく心地良い。
出会ってまだ少しだけしか一緒にいた時間はないのに
僕はそんな彼が、大好きになってしまったのだと自覚して笑った。
だからーー
「僕、自分が死んじゃうより…ジレウスが死んじゃやだって…
それが本当に怖かったんだぁ……」
「!!?」
そしてずるいとわかっていながら、
込み上げてきた涙を抑えることもまた、できなかった。
「好きっジレ、ウス。
好き、だからっ、僕を、1人に、しな…で」
「っ1人にするわけないだろ!!」
途切れ途切れの僕の声に全力で応えるように。
痛いくらいにジレウスが僕を掻き抱いた。
「絶対に。
何があっても守る。
だから安心して俺と一緒にいてくれ。
側で笑っていてくれ。
頼むよ……コーキ」
「…っぅん!」
(ああ……この腕だ……)
この腕が、温もりこそが
自分が前世から欲して欲して止まなかったものだと。
止めどなく流れる涙でジレウスのシャツを濡らしながら、
今度こそ心から安堵して再び目を閉じたのだった。
今夜はもう、きっと怖い夢は見ないーー
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※やっと悪夢から覚めたコーキ少年!な回でした~♪
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