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出会い〜ツガイ編
28話 ジレウス視点
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(Side:ジレウス)
「わぁ…!いっぱい生えてる!!」
「癒し草と痺れ草は似てるからな、ちゃんと葉の形と数を確認しろよ?」
「うん」
コーキを連れてギルド(煩すぎるクソウサの前)から脱出した俺は現在、
街から小1時間ほど離れている森へとやってきていた。
そう、言わずもがなコーキと出会ったあの泉が奥地にあるあの森である。
というのも例の晩を経て、その翌日に。
コーキから一つの申し出があったのだ。
『住所登録目的であっても、
折角冒険者として登録を果たしたからには一度は依頼を受けてみたい』と。
自分のスキルの危険性を充分に自覚した上で、簡単な依頼を受けてみたいのだというコーキの潤んだ眼差しに、どうして否と言えようか!
とはいえ。
例え鑑定用紙に成人年齢(15歳)と出ていた事実があろうが、
こんなにも愛らしくか弱いコーキを1人で依頼に出かけさせたら……
(あっという間に屑どもに拐われる!!)
拐われないまでも暗がりに引き込まれて
所謂『あんなことやこんなこと』をされてしまうに違いない!
俺の頭の中が瞬時にあらゆる如何わしい妄想で一杯になってしまい、
すかさず条件を付けたのだ。
“俺と一緒ならいいぞ”と一言だけ。
いくら引退したとはいえ再起不能な怪我をしてのことでなし。
代理の仕事の傍ら、俺はコーキ専属の護衛限定で冒険者として復帰することに秒で決意した。
急ぎ薬草採取や解体などに必要なコーキ用の装備品、家で若干埃をかぶっていた自分の防具・武器類をその日の内に手入れし。
ポーション類も古いものから新しいものへと買い替え総入れ替えし。
晴れて本日、コーキの初依頼同行の日を迎えた。
突然復帰の意を示した冒険者姿の俺を目にしてギョッとしたミルドを受け流し、こうして薬草採取に同行している訳なのだが……。
「あった!これ、かなぁ…。
あ、ここにもある」
「………」
「う~ん、これは…どっちなんだろ……。
ジレウスごめん、これなんだけど」
「………」
「……ジレウス?」
「っあ?ああ、それは癒し草で間違い無いぞ。
ただ少し若すぎるからその隣のやつの方が採り頃だぞ」
「ん!!」
俺の不審な態度に大した疑問も持たず素直に意見を聞き入れると、
摘んでは跳ね、摘んでは跳ねと生茂る草の中をぴょんぴょんと跳ね回る。
どうやら初めての冒険者活動が、こんな初心者の採取依頼であっても楽しくて仕方がないらしい。
キラキラと目を輝かせて採取した植物を束ねてバックパックに丁寧につめるコーキの姿を微笑ましげに見つめつつ、周囲への警戒は怠らない。
いつ何時ウルフなどの魔物が襲ってきてもいいように片手はナイフの上だ。
だが同時に、とある違和感を異常として感じている自分もいる。
(おかしい……)
ここは森の中とはいえ、まだまだ入り口。
こんな入って間もない場所に、こんなにも貴重な癒し草や痺れ草が生い茂っているわけがないのだ。
こんな簡単に採取できるのであれば、初心者にとってはかなりの稼ぎになる。
ちまちまと集める面倒を感じて依頼を受け渋る冒険者がでようはずもない。
なのに。
この場には異様なほどに薬草が生い茂っている。
それこそ個人でいくらとっても採取しきれないほどに。
(……まさか。いや、まさかなぁ)
とある可能性が脳裏を掠めるが、慌ててその可能性を否定する。
曰く、
『コーキの種族と加護が関係しているのではないか』と。
コーキ以外絶滅したとされる、“華から生まれる”とされる神華族。
そして『慈母神の加護』
どちらも大地や植物に多大な縁や恩恵をもたらしたとても不思議ではない。
が、もし。
万が一でもそうだったとして、それを確認したりコーキに告げることはしない。
今わかっているスキルの効果でさえあれほど彼に精神的負担を強いたのだ。
これ以上彼を苦しめてなるものか。
そんな思いを胸に、俺は不安材料となりうる考察を思考から本格的に消去した。
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※もう1話、ジレウス視点続きます。
「わぁ…!いっぱい生えてる!!」
「癒し草と痺れ草は似てるからな、ちゃんと葉の形と数を確認しろよ?」
「うん」
コーキを連れてギルド(煩すぎるクソウサの前)から脱出した俺は現在、
街から小1時間ほど離れている森へとやってきていた。
そう、言わずもがなコーキと出会ったあの泉が奥地にあるあの森である。
というのも例の晩を経て、その翌日に。
コーキから一つの申し出があったのだ。
『住所登録目的であっても、
折角冒険者として登録を果たしたからには一度は依頼を受けてみたい』と。
自分のスキルの危険性を充分に自覚した上で、簡単な依頼を受けてみたいのだというコーキの潤んだ眼差しに、どうして否と言えようか!
とはいえ。
例え鑑定用紙に成人年齢(15歳)と出ていた事実があろうが、
こんなにも愛らしくか弱いコーキを1人で依頼に出かけさせたら……
(あっという間に屑どもに拐われる!!)
拐われないまでも暗がりに引き込まれて
所謂『あんなことやこんなこと』をされてしまうに違いない!
俺の頭の中が瞬時にあらゆる如何わしい妄想で一杯になってしまい、
すかさず条件を付けたのだ。
“俺と一緒ならいいぞ”と一言だけ。
いくら引退したとはいえ再起不能な怪我をしてのことでなし。
代理の仕事の傍ら、俺はコーキ専属の護衛限定で冒険者として復帰することに秒で決意した。
急ぎ薬草採取や解体などに必要なコーキ用の装備品、家で若干埃をかぶっていた自分の防具・武器類をその日の内に手入れし。
ポーション類も古いものから新しいものへと買い替え総入れ替えし。
晴れて本日、コーキの初依頼同行の日を迎えた。
突然復帰の意を示した冒険者姿の俺を目にしてギョッとしたミルドを受け流し、こうして薬草採取に同行している訳なのだが……。
「あった!これ、かなぁ…。
あ、ここにもある」
「………」
「う~ん、これは…どっちなんだろ……。
ジレウスごめん、これなんだけど」
「………」
「……ジレウス?」
「っあ?ああ、それは癒し草で間違い無いぞ。
ただ少し若すぎるからその隣のやつの方が採り頃だぞ」
「ん!!」
俺の不審な態度に大した疑問も持たず素直に意見を聞き入れると、
摘んでは跳ね、摘んでは跳ねと生茂る草の中をぴょんぴょんと跳ね回る。
どうやら初めての冒険者活動が、こんな初心者の採取依頼であっても楽しくて仕方がないらしい。
キラキラと目を輝かせて採取した植物を束ねてバックパックに丁寧につめるコーキの姿を微笑ましげに見つめつつ、周囲への警戒は怠らない。
いつ何時ウルフなどの魔物が襲ってきてもいいように片手はナイフの上だ。
だが同時に、とある違和感を異常として感じている自分もいる。
(おかしい……)
ここは森の中とはいえ、まだまだ入り口。
こんな入って間もない場所に、こんなにも貴重な癒し草や痺れ草が生い茂っているわけがないのだ。
こんな簡単に採取できるのであれば、初心者にとってはかなりの稼ぎになる。
ちまちまと集める面倒を感じて依頼を受け渋る冒険者がでようはずもない。
なのに。
この場には異様なほどに薬草が生い茂っている。
それこそ個人でいくらとっても採取しきれないほどに。
(……まさか。いや、まさかなぁ)
とある可能性が脳裏を掠めるが、慌ててその可能性を否定する。
曰く、
『コーキの種族と加護が関係しているのではないか』と。
コーキ以外絶滅したとされる、“華から生まれる”とされる神華族。
そして『慈母神の加護』
どちらも大地や植物に多大な縁や恩恵をもたらしたとても不思議ではない。
が、もし。
万が一でもそうだったとして、それを確認したりコーキに告げることはしない。
今わかっているスキルの効果でさえあれほど彼に精神的負担を強いたのだ。
これ以上彼を苦しめてなるものか。
そんな思いを胸に、俺は不安材料となりうる考察を思考から本格的に消去した。
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※もう1話、ジレウス視点続きます。
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