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出会い〜ツガイ編
29話 ジレウス視点
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(Side:ジレウス)
森に入り、採取開始からほんの小1時間ほど。
夥しいほどに生えていた薬草のお陰(?)で、
大きめなコーキのバックパックは既にかなりパンパンだ。
「ふぅ……」
疲労を小さなため息として吐き出したコーキ。
しかしその表情はひどく満足気且つ得意気で。
「くくっ、えらくがんばったなぁコーキ」
「ん!いっぱい採れた!!」
重そうにバックパックを背負いながら精一杯小さな胸を張ろうとする仕草に、思わず笑いが込み上げる。
わしゃわしゃと些か乱暴に綺麗な蒼い髪を掻き混ぜて乗っていた葉っぱを払い、そろそろ戻るか、とギルドへの帰還を促すと素直に頷く。
薬草採取の依頼は、所謂常時依頼だ。
皆採取できる時に採取して持ち込むのが殆どで、
それ故に期限もない。
だが鮮度はいいに越したことはない。
それによって査定額も全然変わるからだ。
「これだけ一杯採れたからな、結構いい稼ぎになるぞ~。
やったなコーキ!!」
「ん!楽しみ!!」
ホクホク顔で俺の足にぴとりと寄り添う彼の頭をもう一度ひと撫でして、森を出ようと歩き出したその時だった。
「ーーーっ!!」
「「!!?」」
森の奥から悲鳴らしき声が聞こえてきたのは。
※ ※ ※
警戒する俺とコーキの耳に、断続的に何者かの悲鳴が届く。
「ジレウス……」
不安に瞳を揺らす彼に安心しろ、と出来るだけ柔らかい笑みを返しつつ、内心ではどうしたものかとこの後取るべき行動を思案する。
自分が1人で行動していたなら、すぐにでも様子を見に行っていた。
だが今俺が優先すべきはコーキ。
俺は彼の護衛としてここにいるのであって、自分が自由気ままに魔物を狩る冒険者として行動していないのだから。
躊躇いは一瞬、すぐに帰ろうとコーキに言いかけた時、
コーキが俺の服の裾を引いた。
「ジレウス、助けに行こ?」
「……コーキ。だが……」
「助けられるのに助けれない、イヤ。
僕は……何もできないけど……ジレウス、助けにいきたい、よね?」
「っ」
コーキは、俺の一瞬の躊躇いを正確に感じ取っていた。
瞠目し彼を見下ろすと、思いの外強く真っ直ぐな眼差しが俺を見上げていた。
(敵わないな)
自分が足手纏いだと、何もできないと自覚し、先ほどまで不安に瞳を揺らしていたのに。
俺が助けに行きたいのだと見抜き、自身の恐怖心を押さえつけてすぐにそんな提案をしてきた彼に、本当にこいつは……と口元が緩むのを止められそうにない。
ひどくか弱い、繊細なコーキ。
だけど彼の心根は、想像以上に芯が強いようだ。
一際大きな悲鳴が届いた。
女性らしい甲高いそれにびくりと肩を竦ませたコーキを瞬時に抱き上げる。
「ジレウス」
「ーーああ、行こう。
このまましっかりと捕まっててくれ。
背中には剣があるからな、……大丈夫か?」
「……うん!」
「っし!」
腕の中で俺の服をしっかりと握って力強く頷きを返したコーキに満足気に笑いかけると、悲鳴が聞こえてきた方角ーー、森の奥に向けて、一目散に駆け出した。
森に入り、採取開始からほんの小1時間ほど。
夥しいほどに生えていた薬草のお陰(?)で、
大きめなコーキのバックパックは既にかなりパンパンだ。
「ふぅ……」
疲労を小さなため息として吐き出したコーキ。
しかしその表情はひどく満足気且つ得意気で。
「くくっ、えらくがんばったなぁコーキ」
「ん!いっぱい採れた!!」
重そうにバックパックを背負いながら精一杯小さな胸を張ろうとする仕草に、思わず笑いが込み上げる。
わしゃわしゃと些か乱暴に綺麗な蒼い髪を掻き混ぜて乗っていた葉っぱを払い、そろそろ戻るか、とギルドへの帰還を促すと素直に頷く。
薬草採取の依頼は、所謂常時依頼だ。
皆採取できる時に採取して持ち込むのが殆どで、
それ故に期限もない。
だが鮮度はいいに越したことはない。
それによって査定額も全然変わるからだ。
「これだけ一杯採れたからな、結構いい稼ぎになるぞ~。
やったなコーキ!!」
「ん!楽しみ!!」
ホクホク顔で俺の足にぴとりと寄り添う彼の頭をもう一度ひと撫でして、森を出ようと歩き出したその時だった。
「ーーーっ!!」
「「!!?」」
森の奥から悲鳴らしき声が聞こえてきたのは。
※ ※ ※
警戒する俺とコーキの耳に、断続的に何者かの悲鳴が届く。
「ジレウス……」
不安に瞳を揺らす彼に安心しろ、と出来るだけ柔らかい笑みを返しつつ、内心ではどうしたものかとこの後取るべき行動を思案する。
自分が1人で行動していたなら、すぐにでも様子を見に行っていた。
だが今俺が優先すべきはコーキ。
俺は彼の護衛としてここにいるのであって、自分が自由気ままに魔物を狩る冒険者として行動していないのだから。
躊躇いは一瞬、すぐに帰ろうとコーキに言いかけた時、
コーキが俺の服の裾を引いた。
「ジレウス、助けに行こ?」
「……コーキ。だが……」
「助けられるのに助けれない、イヤ。
僕は……何もできないけど……ジレウス、助けにいきたい、よね?」
「っ」
コーキは、俺の一瞬の躊躇いを正確に感じ取っていた。
瞠目し彼を見下ろすと、思いの外強く真っ直ぐな眼差しが俺を見上げていた。
(敵わないな)
自分が足手纏いだと、何もできないと自覚し、先ほどまで不安に瞳を揺らしていたのに。
俺が助けに行きたいのだと見抜き、自身の恐怖心を押さえつけてすぐにそんな提案をしてきた彼に、本当にこいつは……と口元が緩むのを止められそうにない。
ひどくか弱い、繊細なコーキ。
だけど彼の心根は、想像以上に芯が強いようだ。
一際大きな悲鳴が届いた。
女性らしい甲高いそれにびくりと肩を竦ませたコーキを瞬時に抱き上げる。
「ジレウス」
「ーーああ、行こう。
このまましっかりと捕まっててくれ。
背中には剣があるからな、……大丈夫か?」
「……うん!」
「っし!」
腕の中で俺の服をしっかりと握って力強く頷きを返したコーキに満足気に笑いかけると、悲鳴が聞こえてきた方角ーー、森の奥に向けて、一目散に駆け出した。
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