華から生まれ落ちた少年は獅子の温もりに溺れる

帆田 久

文字の大きさ
37 / 50
出会い〜ツガイ編

34話  ジレウス視点

しおりを挟む
少し性的な描写がはいりますのでご注意下さい。
久々の更新です!
============================================


(Side:ジレウス)



俺は今、かなり動揺している。
それどころか、かなりマズイことになって焦っている。



勘違いしてもらっては困るが、別に俺自身が大病を患っているとか、コーキの元気がないとかそんなことではない。
というのも今朝。
朝早く、寝ぼけ眼のまま朝風呂でさっぱりと目を覚まし、
濡れた髪をガシガシとタオルで拭きながら部屋へと上がった時。
つい気になって寝ているであろうコーキの様子を見に隣の部屋のドアを開けてしまったことに起因する。



※  ※  ※



「ーー………は?」


開いたドアの先に鎮座するベッド。
その上にてすやすやと気持ちよさそうに寝ているコーキ、ここまではいい。
が、問題は彼の姿にある。

一晩で、髪が伸びていたのだ、それもとんでもない長さまで!
異常はそれだけには止まらない。
単純に、大きくなっていたのだ。
成人などまだまだ先といった子供のそれから、
成人したであろうくらいにまで、身体が。

彼の繊細さと美しさをそのままに、
線の細さは変わらないまでも伸びたツヤツヤした蒼髪と相まってとんでもない美青年へと変化を遂げていた。

元より形のいい眉の下でふるりと揺れる長いまつ毛
小ぶりな唇はその赤みを増し、熟した果実のように甘そうで
寝ている間に変化したのか、寝巻きは丈足らず
腹回りとすらりと伸びた足が露わになっている様が、なんとも扇情的ーー…

「っぐッッ」

不意にふわりと甘い花の香りが鼻先を掠めた瞬間ーー

唾を飲み込みグルルと獣じみた唸りが喉元からでかかったのをグッと堪えると、
慌てて、しかし極力音を立てずにドアを閉めて階下へと急ぐ。

(なんだ、アレは)

何故いきなりあんな変化を?
それよりあの色気は、匂いはヤバい!
思わず理性が飛んで、襲いかかってむしゃぶりつくところだった!!

急激に熱が集まり出した下半身のあまりの昂り具合に痛みさえ感じ、
かなり不恰好な前屈み姿勢で何とか脱衣室まで辿り着く。
熱に急かされてズボンとシャツを蹴殴るように脱ぎ捨て、
浴室へと飛び込んでシャワーヘッドの水のコルクを勢いよく捻る。
滝のように己に降りかかる水を頭から被ってなんとか熱を散らそうとするも、
脳裏に先程視認した彼の姿が甦って返って熱が高まるばかり。

「っくそッ、何でッッ……!!」

はっはっと短い息が口から漏れる。
心臓の音がどくどくと重く激しさを増す。
ぎゅうぅぅ…と握り潰さんとばかりに押さえ込む自身の息子それが赤黒く充血しきって先走りを止めどなく溢している。

完全にーー、発情期状態に突入してしまった事実を。

絶えず身体の中を突き上げるように生まれる熱が俺に否応なしに自覚を促した。

(どう、する。どうしたらいい…!?
まだ先のはずだったものがこんな急に…!)

これは非常にマズイ事態になったと、熱を発する身体とは裏腹に内心冷や汗が止まらない。

発情期ーー

獣人には等しく訪れる周期的な生理現象……のはずが、何故周期を逸脱して急に訪れたのかは定かじゃない。
が、問題はそこではなく。
いずれ訪れたであろうそれについて、
俺はコーキに何一つとして説明していない。
の危険性も、期間も、その際に自身が自室に篭り外と一切の接触を断つことも。
そうしなければ理性が保てず、
それがコーキであっても、いやコーキであるからこそ余計に欲望のままに襲いかかってしまうであろうことも。

もしかすると何度か発散すれば以前同様すぐ治るやもと必死に息子を扱くも、
2度3度と達しても寧ろ熱は昂まりをみせて止まない。
ますます持ってこれがただの欲情でなく発情期であることを突きつけられ、
ぐぅ…と喉が唸る。

(…っ本気でマズイ、な。
何とかしてギルド…ミルドの野郎にでも伝達魔法で事態を伝えて、最悪…コーキを発情期が終わるまで保護してもら…)

熱に霞む意識の中、魔力の行使は非常にいただけないがこれも非常事態。
謎の急成長をしてしまったコーキの姿を説明もなしに奴や他人に見せたくもなければその身を預けたくもないが、背に腹は変えられない。
彼を傷つけるよりは何倍も増しだ。

念のためもう一度熱を散らし、
よろよろと浴室を出ようとドアに手をかけた瞬間ーー。


「ジレウス…?」


困惑も露わなその耳心地の良い声に名を呼ばれ。
動揺と熱に脳が揺れた。


しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

黒豹陛下の溺愛生活

月城雪華
BL
アレンは母であるアンナを弑した獣人を探すため、生まれ育ったスラム街から街に出ていた。 しかし唐突な大雨に見舞われ、加えて空腹で正常な判断ができない。 幸い街の近くまで来ていたため、明かりの着いた建物に入ると、安心したのか身体の力が抜けてしまう。 目覚めると不思議な目の色をした獣人がおり、すぐ後に長身でどこか威圧感のある獣人がやってきた。 その男はレオと言い、初めて街に来たアレンに優しく接してくれる。 街での滞在が長くなってきた頃、突然「俺の伴侶になってくれ」と言われ── 優しく(?)兄貴肌の黒豹×幸薄系オオカミが織り成す獣人BL、ここに開幕!

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

処理中です...