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番外編
我慢は身体に毒・上
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※道鷹視点
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とある日。
いつものように部下の運転でマンションへと帰宅の途についている最中。
「……なんだ」
「いえいえ何でも。
会長が陸さん会いたさにどれだけだらしな、締まりのない顔をしていても私は引きませんよ」
「はっきり言ったらどうだ」
「要するに気持ち悪いです」
「…そうか(はっきり言い過ぎだ馬鹿野郎)」
移動中に会社で処理し損なった書類を手に、しかし部屋で待つ大事なものの顔を思い浮かべて気を散らしていたのをすっかりと見抜かれていることに、こっそりとため息を漏らす。
真面目な顔を繕い書類に集中しようと試みかけ、バックミラー越しに感じる生暖かい視線の煩わしさに早々に諦めて書類の束を傍らの席に放り投げた。
そしてその視線から逃れるように、
横に流れる車窓の景観を見るともなしに睨み付けるのだった。
目を覚ました陸と言葉を交わし、
自分のものになれとの宣言に笑顔で了承をもらってから。
道鷹が最愛を得てから
実に3ヵ月程の時が過ぎた。
元より怪我の治りは早い方なのか骨折していた手足の骨は既にくっつき、
現在は室内で家事をしながら少しずつそれらのリハビリに励んでいる。
もうすでに、室内位は普通に歩ける程にまで回復し、
俺が仕事に行っている間、嬉々として料理に掃除にと勤しんでいる。
しかも嬉しいことに。
最初こそ遠慮がちであった態度も、
お帰りなさい道鷹さん!と今は帰宅時にはにかんだ可愛らしい笑みを浮かべてくれるのだ。
新婚然り、付き合いたての恋人然り
舞い上がるのが世の普通というものではないかとも思う。
ましてや今までなまじ殺伐とし過ぎていた人間関係しか構築してこなかっただけに、
その反動もでかいのだ。
「……」
見知った景色からいって、もうすぐマンションへと到着することが分かり、
知らず頬が緩む。
が、同時にその緩んだ顔は焦燥感も多分に含まれていることを、
果たして運転席の聡い部下は読み取っただろうか?
動けるまでに復調した可愛い陸
全幅の信頼をその目にたたえて自分を見つめて微笑んでくれるのは確かに愛らしい。
愛らしいのだが、いや、愛らしいだけに。
怪我が治るまではと自重していたはずの欲望が、最早抑えが効かなくなってきている。
必死にまだ陸は病み上がりのようなものだ、肉付きも体力も戻っていないと言い聞かせても焼け石に水。
風呂上りで室内をうろうろされたり、身長差も体格差もある彼に下から覗き込まれるとこれでもかと下半身に熱が溜まってくる。
部下も承知のことながら、元よりそんなに我慢強い性質ではない。
マンションにはベッドが一つしかなく、隣で陸がすやすやと寝息を立てる中、耐えろ自分!とさっさと食ってしまえとで心中で葛藤を繰り広げ、最近は柄にもなく寝不足気味だ。
陸の顔は見たい。しかし、
今日もまた悶々としながら寝返りを打つ羽目になるのだろうか?と僅かながら目が据わってしまうのも無理からぬこと。
いつになく弱気な自分に苛立ちを覚えるも、こればかりは仕方ない。
恋愛について語った本の著者曰く、
先に惚れた方が負けなのだから。
柄にもなくそんな本まで何冊も読破してしまうとは…と自嘲が溜息とともに漏れ出る。
(……まぁ、陸が笑っててくれるならそれでいい)
彼の障害になっていた人間は全て処分を済ませたし、焦ることもなかろう。
そう呟いて車が地下駐車場へと滑り込んでいくのを窓越しにぼんやりと眺めた。
なお、優秀なる部下・安曇は彼の零した呟きについては空気を読んで言及することはなかった。
ー無理やり抑え込んだ道鷹の理性が呆気なく消し飛ぶまで、あとわずか。
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次話、R指定(微)
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とある日。
いつものように部下の運転でマンションへと帰宅の途についている最中。
「……なんだ」
「いえいえ何でも。
会長が陸さん会いたさにどれだけだらしな、締まりのない顔をしていても私は引きませんよ」
「はっきり言ったらどうだ」
「要するに気持ち悪いです」
「…そうか(はっきり言い過ぎだ馬鹿野郎)」
移動中に会社で処理し損なった書類を手に、しかし部屋で待つ大事なものの顔を思い浮かべて気を散らしていたのをすっかりと見抜かれていることに、こっそりとため息を漏らす。
真面目な顔を繕い書類に集中しようと試みかけ、バックミラー越しに感じる生暖かい視線の煩わしさに早々に諦めて書類の束を傍らの席に放り投げた。
そしてその視線から逃れるように、
横に流れる車窓の景観を見るともなしに睨み付けるのだった。
目を覚ました陸と言葉を交わし、
自分のものになれとの宣言に笑顔で了承をもらってから。
道鷹が最愛を得てから
実に3ヵ月程の時が過ぎた。
元より怪我の治りは早い方なのか骨折していた手足の骨は既にくっつき、
現在は室内で家事をしながら少しずつそれらのリハビリに励んでいる。
もうすでに、室内位は普通に歩ける程にまで回復し、
俺が仕事に行っている間、嬉々として料理に掃除にと勤しんでいる。
しかも嬉しいことに。
最初こそ遠慮がちであった態度も、
お帰りなさい道鷹さん!と今は帰宅時にはにかんだ可愛らしい笑みを浮かべてくれるのだ。
新婚然り、付き合いたての恋人然り
舞い上がるのが世の普通というものではないかとも思う。
ましてや今までなまじ殺伐とし過ぎていた人間関係しか構築してこなかっただけに、
その反動もでかいのだ。
「……」
見知った景色からいって、もうすぐマンションへと到着することが分かり、
知らず頬が緩む。
が、同時にその緩んだ顔は焦燥感も多分に含まれていることを、
果たして運転席の聡い部下は読み取っただろうか?
動けるまでに復調した可愛い陸
全幅の信頼をその目にたたえて自分を見つめて微笑んでくれるのは確かに愛らしい。
愛らしいのだが、いや、愛らしいだけに。
怪我が治るまではと自重していたはずの欲望が、最早抑えが効かなくなってきている。
必死にまだ陸は病み上がりのようなものだ、肉付きも体力も戻っていないと言い聞かせても焼け石に水。
風呂上りで室内をうろうろされたり、身長差も体格差もある彼に下から覗き込まれるとこれでもかと下半身に熱が溜まってくる。
部下も承知のことながら、元よりそんなに我慢強い性質ではない。
マンションにはベッドが一つしかなく、隣で陸がすやすやと寝息を立てる中、耐えろ自分!とさっさと食ってしまえとで心中で葛藤を繰り広げ、最近は柄にもなく寝不足気味だ。
陸の顔は見たい。しかし、
今日もまた悶々としながら寝返りを打つ羽目になるのだろうか?と僅かながら目が据わってしまうのも無理からぬこと。
いつになく弱気な自分に苛立ちを覚えるも、こればかりは仕方ない。
恋愛について語った本の著者曰く、
先に惚れた方が負けなのだから。
柄にもなくそんな本まで何冊も読破してしまうとは…と自嘲が溜息とともに漏れ出る。
(……まぁ、陸が笑っててくれるならそれでいい)
彼の障害になっていた人間は全て処分を済ませたし、焦ることもなかろう。
そう呟いて車が地下駐車場へと滑り込んでいくのを窓越しにぼんやりと眺めた。
なお、優秀なる部下・安曇は彼の零した呟きについては空気を読んで言及することはなかった。
ー無理やり抑え込んだ道鷹の理性が呆気なく消し飛ぶまで、あとわずか。
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次話、R指定(微)
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