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10 エピローグ〜閉幕〜
しおりを挟む公爵が炭となった後ー。
魔女は一通の手紙を残して、いつのまにか姿を消していた。
目の前で人1人が魔法により消し炭になったことでパニックになりかけた会場は、
その後に登場した本物の王妃と第一王子によって静寂を取り戻し、
すぐさま歓喜が場内を塗りつぶした。
初めて貴族達の前に姿を現した第一王子は若かりし国王に瓜二つであり、瞳の色は王妃譲りの碧眼。
少し線が細くなったものの柔らかい笑みを浮かべた王妃を王がすぐさま腕の中に閉じ込め、
凛々しくも麗しい青年へと成長していた第一王子が見上げる貴族らに美しい所作で礼をすると、最早偽物のことなど貴族らは頭の中から消し飛ばして第一王子万歳!王妃様万歳!国王陛下万歳!!と喝采したのであった。
婚約破棄騒動時に娘を嘲笑した連中もその中には混じっていたが、
状況変われば何と身代わりの早いこと。
(まぁそれが貴族という生き物、なのかもしれんが、な)
嘲笑した連中は全て顔を覚えているから、
まぁこれからは徐々に家の付き合いを減らして関係を絶っていくなりすればいいかと無理やり納得することにした。
隣で我が息子が奴らをじっと見ながらうっそりと暗い笑みを浮かべているから、
仕返しは、まぁ……信頼厚き彼に任せるとしよう。
妹を愛しすぎていて果たして彼に嫁ができるかどうかは定かでなく少々不安だが。
私?再婚??
するわけないだろう。
私には今なお愛して止まない亡き妻と、彼女にそっくりな愛らしい娘が既にいるのだから。
※ ※ ※
ーー結局。
偽王妃と偽第一王子が公に処刑されることはなく、
2人とも毒杯を賜ってのひっそりとした刑に処された。
随分軽い!と思わないでもないが、偽第一王子の方はともかく、
偽王妃の方はその容姿が問題となったからだ。
王妃様と瓜二つの人間を公で処刑など、できようはずもないからだ。
偽第一王子と共に私の娘を陥れた伯爵令嬢や取り巻き令息らは家共々取り潰し、各家当主や本人たちは鉱山奴隷へと落とされたので、現在王国では貴族の数が相当数不足し、領地維持や経営に平民上がりの優秀な人材を充てることを検討し始めている。
今回の黒幕であった公爵は魔女によって裁かれてしまった為、
国王としてもそのあたりまでが処断の限界だったのだろうとも思う。
因みにあの時呆然と床に座り込んでいた公爵夫人、ナタリー・イブリスは。
公爵位…というか貴族籍からの抹消を自ら国王に申し出、
個人資産を全て王国各地の孤児院へと寄付し、自身は修道院へと早々に身を移した。
あまりにも早い行動に周囲は驚愕していたが、さもありなん。
心配していた娘と孫は毒杯を賜って死に、自分を長年裏切って野心に燃えていた夫も魔女に裁かれて死に、身の置き場がなかったのだろうとも思う。
あの日あの時は彼女にとって人生最悪の日であり悲劇として刻まれたのだろうことも。
しかしながら人生は残酷だ。
それぞれが悲劇と嘆く事柄も、他人から見れば全てが喜劇。
寂しさを埋めるように私や息子へ微笑みを向ける娘が、
いずれまだ見ぬ男性にそれを向ける絶望感溢れる未来も。
妹に邪な視線を向ける男どもを睨んで牽制する我が息子が、
家を継ぐ際にころりと見合いの令嬢と恋に落ちるのも。
王から変わらずこき使われて腰を痛めたり、白髪が増えたことを嘆く私も。
側から見れば、ただの喜劇のようなものなのだから。
「……取り敢えず、この度の喜劇は、これにて閉幕。っと」
そんな益体もないことを呟きながら書き綴り終えた私は、
分厚い日記帳を閉じるのだった。
[終わり]
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季節的挨拶といたしまして、えー…メリークリスマス!!!
1人寂しくコンビニで購入したホールケーキを突っついている作者であります。
…む、ウマイ…。
それはさておき。
これにて短編『舞台に似合いの最高の喜劇を』完結です!
10話と短いながらも最後まで読んでくださった読者様方、ありがとうございます!!
復帰後1作品目だったので読んでいただけるか不安でしたが、現在ほっとしてます(^^)
もう一つ二つと書き殴った短編をつらつら投稿しつつ、
未だ完結してない作品もゆっくりゆっくりと入力しているので、
お待ち頂いている読者様方には申し訳ありませんが気長~~~にお持ちいただけますと幸いです!
ではまたどこかの物語の中で!
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