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ー本編ーその辺のハンドメイド作家が異世界では大賢者になる話。
第30話 僕らの勇者Oh…
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昼食を終え俺の新たな力についての考察やらも済んだことだしと、俺は1人で街を回ってみることにした。
なんだかんだでこの世界に来てからまともに街を見て歩いてなかったしな。
この西の国の果てにあるこの都市はこれでもかなりの大都市に当たるらしい。
市場に商店街に露店街、屋台村的な感じの場所やカフェやバーの集まる通りなどいろいろなもので構成されている大都市だ。
その中央にギルドがあり、都市の果てに城と城を中心とした職人と研究者が集う城下町があると言うのがこの世界の大都市の主な特徴である。
ひとまず、俺は先ほどまでいたカフェ街から露店街へと移動する。
ハンドメイドの材料として革紐を手に入れたかったからだ。
ただやはり革紐だけと言うのは需要的なものもあるのかなかなかに見つからない。
俺は、すでに誰かがアクセとして作ったものを分解して材料にするとかそう言うのはあまり好きではないのだ。
ふーむ…。これは誰かにやっぱついてきてもらって案内してもらうべきだったか…。
ひとまず俺は革紐を編んだものを売ってるおばちゃんに、自分でこう言うのを作りたいんだけど材料はどこに行けば手に入るかを尋ねてみた。
聞いてみると材料の手に入れ方は様々らしい。
ギルドを通して材料になるモンスターの討伐を依頼→モンスターから剥いだ皮をギルド直結の加工業者や腕利きの職人が皮細工の材料として加工→そこから材料を買い取って服や防具やアクセをつくる業者や職人→さらにそれを売る露天商
みたいなのが主な流れらしく、ギルド周辺の工場を当たってみるのがお勧めと言われた。
ただ、すぐにギルドに戻るのもつまらないなぁと思った俺はその足で商店街へと向かう。
商店街はこの世界特有の一般人向けの服や道具を主に取り扱っている店が並んでいる。
時計屋もいくつかあるが、当然ながらこの世界の時計は手巻きタイプのばかりだ。
値段は少々張る。
それに良くも悪くも俺の世界の観点からすればヴィンテージデザインばかりだ。
当然といえば当然なのだが、これは俺の趣味にはあまりあってない。
しかし、この世界はガラスの加工技術も凄いのか所々にショーウインドウみたいな感じで色々と展示している店もある。
あとは、大鳥用のアクセサリーや荷馬車の専門店なんてものもあった。
こう言うところは異世界らしいな。
そして専門店の大鳥もまた人懐っこい。
興味深げに見ていると、店員よりも大鳥が寄ってきて\アイヨ?/といってくるくらいだ。
こいつらは実に愛らしい。
そういえばこの世界には愛玩動物としての犬や猫は居るのだろうか…。などと言う興味も湧いてきた。
俺は商店街をそのまま練り歩く。
すると、その先でこっちで言う大型デパート的な3階建の建物に出くわした。
「おお…。建築技術も結構優れてんだな…。
こんな建物が…。」
面白そうなので入ってみる。
中に入ると家具屋とか服屋とか靴屋がメインでチョロチョロと宝石屋や時計屋、飲食店が入っていた。
こう言うところもまるで俺の世界のデパートそのままだ。
流石に屋上遊園地はないけど…。
ただ、この世界の遊びを楽しめる遊技場的なのはあったりした。
主にこっちで言うトランプ系のゲームがメインさったが…。
それで勝って専用のメダルを集めると、その枚数に応じて好きな景品と交換できる仕組みだ。
ぬいぐるみとかもある。
「ぬいぐるみなぁ…。ゲーセンではよく取ったな。
そう言えば、流石にフィギュア的なものは見かけないな。」
あとは活版印刷技術も確立されてないのか、図書館はあっても本屋らしい本屋もなかった。
精々、俺の推しの冒険者の絵を描きました!的なイラスト屋がいたくらいだ。
このデパート的なところでも「あの有名絵師が描いた冒険者〇〇の絵」みたいなのはあった。
ちなみにいわゆる薄い本はなかった。
ちょっぴり期待したけど…。
あとはおもちゃ屋的なものも見かけた。
と言っても昭和初期のようなブリキや木で出来たおもちゃがメインだが…。
その途中できらびやかなお店を見かける。
ドールショップだ。
陶器製の可愛らしく愛らしい球体関節人形が所狭しと並んでいる。
よくあるフランス人形や日本人形のような気持ち悪い感じじゃなく、それはもう天使のような可愛さのドール達が並んでいた。
「美しいなぁ…。」
俺はこう言う人の手が生み出した芸術が好きなのだ。
料理然り手作り家具然りハンドメイド然り…。
同じものは生まれないと言うところが実に良い。
たとえ同じ作り方でも料理だって多少は味が毎日変わるのだ。
「ふふ。お手にとって見て見ますか?この子達からもあなたに抱き上げられて見たいと言う気持ちを感じます。」
これまたお美しい、金髪にホワイトロリータな服をお召しになったドールショップの店員さんが声をかけてくる。
「初めてお見かけになるお客様ですね。
純粋な黒髪…。さぞ高貴なお方なのでしょうか…。
それに変わったお召し物…。もしかしてあなたが、今街で噂になってる…。」
そうそうそう。
「勇者様ですね?」
そっちじゃない。
「えっと、大賢者の方です…。勇者様に倒された方ですね。」
「これは失礼を…。あなたの噂も聞き及んでおります。
あぁ、だからこの子達もあなたに抱かれたいのですね。
モノを創り出す手は彼女達に取っては親のような温もりですから。」
どうぞと比較的小さなドールを差し出され、俺はその子を両手で優しく受け取る。
ちっちゃ…きゃわわ…癒されるぅ…。
とほっこりしていると…
「人間相手は良いが人形相手の浮気は許さぬぞ主様よ!!」
カバンからおいなりちゃん(ちびさいずのまま)が飛び出してきた。
「!? ドールがしゃべってる…。
これが…賢者様の魔法…。私たちドールマスターの夢である自我を持つドールをも生み出せるなんて…!」
店員さんが感動に打ち震えている…。
「あー…えーっと…。うちの子も抱いてみます?」
「是非に!!」
店員さんは空中浮遊していたおいなりちゃんを優しく抱きとめてなでなでしていた。
「ふぉぉ…ふぉぉおうっ…こやつの手も…たまらぬのぅ…。女神のような優しさを感じる…。」
「うふふっ。嬉しいです。ここにいる子たちは私が生み出した子なんです。
どうやら皆も貴女を歓迎しているようですね。」
微笑みながらおいなりちゃんをなでなでする店員さん。
とても嬉しそうに撫でている姿がまた美しい。
「とても良いものを見せて頂きました。」
店員さんがそっと俺の肩においなりちゃんを乗せて来たので、俺もドールを店員さんに返す。
「私はここで、この子達を迎えてくれるステキな方を探しているのです。
貴方はその資格を十分に持っていると言えるでしょう。
お迎えしたくなったらいつでも来てくださいね。」
俺がお迎えに来たのではなく、見に来ただけであることはよくわかっていたようだ。
俺はドールショップを後にし、またあてもなくデパートの中を歩き回る。
特に何か目的があるわけでもなくただ見て回りたい好奇心が俺の足を動かす。
しかし、空想の中の異世界の文明ってのはなんでこうも中世的なのが多いのか…。
普通なら異世界でも機械的なものを使った文明があっても良いところだろう。
そんなふうに思っていたが、この世界は魔力をうまく使った俺の世界にはない道具もいくつかはあった。
きっと俺の世界にいたような文明を生み出す知恵のあるものが現れなかっただけなんだろう。
そこにさえ気付くものが現れたら世界の文明は大きく発展する。
俺の知識を使えば、この世界にはきっとたくさんの文明の変化が起こってしまうだろう…。
蒸気機関車が電車に変わり、エネルギー資源が変化し、炭鉱夫が仕事をなくすような事態だって起こり得るだろう。
よく、フィクションの世界の異世界人は世界を変化させるような規模のとんでも無い事をやらかしている。
よくよく思うけど、これって許されるのか…?
日本にゃ郷に入っては郷に従えという言葉がある。
その世界に存在するものを、存在するルールで使うのが正しい気がするんだけどなぁ…。
まぁこの世界にないもの持ち込んで無双してた俺が言えたもんじゃないけど。
ふぅ…。やっぱ1人の方が色々と考え事するには捗るな…。
しかし、こうやって少しづつこの世界についても知っていかないとだな…。
やっぱ外を歩くのは大事だ。
「おやぁ?おやおやおやおや!そこを行くは賢ちゃんじゃないか!さっきぶりだな!」
「すみません。どちら様でしょうか。多分人違いです。近付かないでくださぁあああ!」
近づくなと言い切る前に一瞬で間合いを詰められた。
瞬歩の無駄使いだぞお前!
「なんだ急に他人行儀になって!さっきお互いにお互いを気持ちよく叩き合った仲じゃないか!」
「その言い回しやめろ!あと賢ちゃん言うな!」
「あはは!では賢者と呼ぼう!」
「むしろさっきまでそう呼んでたよね…?
んで?勇者様はここでなにを?」
おお!っと何か思い出したように手をポンっと叩く勇者ちゃん。
「うむ!下着と普段着を見にきたんだ!
私も清い乙女だからな!服くらい可愛いものを着ないといけないと君と戦って思ったんだ!」
「俺がなぜきっかけになったかは触れたくないけどいい考えだと思うようん。」
「なので、君好みの私の下着と普段着を選んでくれ!」
「絶対やだ!」
俺は脱兎のごとくその場から逃げようとするが、すぐに瞬歩で回り込まれた。
「私には服を一緒に選んでくれる友も異性もいないのでな!君は適任だ!選んでくれ!」
「拒否権って知ってる?」
「知らん!」
ですよねぇ…。
俺は諦めて買い物に付き合うことにした。
だが、女の子の服選びか…。
この子、アホだけど見た目は完璧だし、その辺は楽しめそうだ…。
うーむ…しかし服か…。
スカートとかよりパンツルックな服装が似合いそうだけど、そもそも俺も自分の服は店員さん任せな方だ。
着こなしを教えるようなセンスはない。
「おお!これが都会の服屋か!私の村とはレベルが違うぞ!」
高級デパートに田舎者を連れてきたときみたいな反応だ…。
「すみません…。とりあえずこちらの方に服を見繕ってやってください…。」
俺は店員さんに彼女を任せた隙を見て逃走を図る。
しかしまわりこまれてしまった!
「一緒に見てくれ!なんなら君の前で脱いでも良いぞ!」
「それやったら縁切るぞ…。」
「それは困るな!仕方ない!試着室で着替えよう!」
お前、どこで脱ぐ気だったんだ!?
服屋の店員さんも若干引いている…。
そして俺の前で勇者ちゃんのファッションショーが始まる。
店員さんも何着てもお似合いです~♪とお決まりのセリフでおだてている。
が、本当に勇者ちゃんは何着てもよく似合う。
可愛らしくてかっこいいのだ。
俺的には和服とか着せてみたくなるな…。
「なぁ大賢者!どの服が一番君の好みだ!?
私は君の好みの服が着たい!!」
そんなもの、この世界にはないよ。
といっていじめてやっても良かったが、そこはぐっとこらえて、足首がチラ見えするベージュのチノパンのようなものとカーキのワイシャツを選択する。
引き締まったお腹もチラ見えして実に可愛い。
それにサンダルタイプのブーツをセレクト。
ドチャクソ可愛いくてかっこいい。
「ふむ…!これが君の好みなんだな!どうだ?私は君好みの女になったか!?」
「うぅん…。からかおうかとおもってたけどこれは無理だわ…。綺麗すぎるしカッコいい。」
「ではまた私の勝ちだな!」
何の勝負だ。
「では次は私の下着を選んでくれ!」
「それだけは勘弁して…!」
店員さんに助けを請う視線を向ける。
「よくお似合いのカップルですねー。
いいじゃないですかー下着くらい選んであげてもー。
いっそノーパンでもカッコ良さそうですしその人ー。」
店員さんの顔がチベットスナギツネになっている。
そして俺たちはカップルじゃない。
「わかったぞ!ノーパンだな!店員さんアドバイスありがとう!」
空気が固まったのがわかった。
道行く人の足が止まり俺に視線が注がれているのもわかった。
だがこいつがあっさりとノーパン至上主義に目覚めたのはわからなかった。
「それはダメだ!下着も見に行くぞ!!」
視線を店員に向ける。
(計画通り…)と言う言葉が似合いそうなニヤリ…顔をしている。
お、お前!はめやがったなぁああ!
そして俺は渋々と下着選びに付き合わされる羽目になるのであった。
自分の下着ですらろくに選んだことないのに、そんな俺に女の下着をえらべってぇのかよ。
そしてこの子は冗談が通じないタイプだ。
穴あき下着とかいいんじゃない?とか言ったら遠慮なく選びかねないレベルで…。
はぁ…。次回へ続く話が下着選びってどんな引きだよ…。
と思いつつ俺は尺不足を恨むことにした。
なんだかんだでこの世界に来てからまともに街を見て歩いてなかったしな。
この西の国の果てにあるこの都市はこれでもかなりの大都市に当たるらしい。
市場に商店街に露店街、屋台村的な感じの場所やカフェやバーの集まる通りなどいろいろなもので構成されている大都市だ。
その中央にギルドがあり、都市の果てに城と城を中心とした職人と研究者が集う城下町があると言うのがこの世界の大都市の主な特徴である。
ひとまず、俺は先ほどまでいたカフェ街から露店街へと移動する。
ハンドメイドの材料として革紐を手に入れたかったからだ。
ただやはり革紐だけと言うのは需要的なものもあるのかなかなかに見つからない。
俺は、すでに誰かがアクセとして作ったものを分解して材料にするとかそう言うのはあまり好きではないのだ。
ふーむ…。これは誰かにやっぱついてきてもらって案内してもらうべきだったか…。
ひとまず俺は革紐を編んだものを売ってるおばちゃんに、自分でこう言うのを作りたいんだけど材料はどこに行けば手に入るかを尋ねてみた。
聞いてみると材料の手に入れ方は様々らしい。
ギルドを通して材料になるモンスターの討伐を依頼→モンスターから剥いだ皮をギルド直結の加工業者や腕利きの職人が皮細工の材料として加工→そこから材料を買い取って服や防具やアクセをつくる業者や職人→さらにそれを売る露天商
みたいなのが主な流れらしく、ギルド周辺の工場を当たってみるのがお勧めと言われた。
ただ、すぐにギルドに戻るのもつまらないなぁと思った俺はその足で商店街へと向かう。
商店街はこの世界特有の一般人向けの服や道具を主に取り扱っている店が並んでいる。
時計屋もいくつかあるが、当然ながらこの世界の時計は手巻きタイプのばかりだ。
値段は少々張る。
それに良くも悪くも俺の世界の観点からすればヴィンテージデザインばかりだ。
当然といえば当然なのだが、これは俺の趣味にはあまりあってない。
しかし、この世界はガラスの加工技術も凄いのか所々にショーウインドウみたいな感じで色々と展示している店もある。
あとは、大鳥用のアクセサリーや荷馬車の専門店なんてものもあった。
こう言うところは異世界らしいな。
そして専門店の大鳥もまた人懐っこい。
興味深げに見ていると、店員よりも大鳥が寄ってきて\アイヨ?/といってくるくらいだ。
こいつらは実に愛らしい。
そういえばこの世界には愛玩動物としての犬や猫は居るのだろうか…。などと言う興味も湧いてきた。
俺は商店街をそのまま練り歩く。
すると、その先でこっちで言う大型デパート的な3階建の建物に出くわした。
「おお…。建築技術も結構優れてんだな…。
こんな建物が…。」
面白そうなので入ってみる。
中に入ると家具屋とか服屋とか靴屋がメインでチョロチョロと宝石屋や時計屋、飲食店が入っていた。
こう言うところもまるで俺の世界のデパートそのままだ。
流石に屋上遊園地はないけど…。
ただ、この世界の遊びを楽しめる遊技場的なのはあったりした。
主にこっちで言うトランプ系のゲームがメインさったが…。
それで勝って専用のメダルを集めると、その枚数に応じて好きな景品と交換できる仕組みだ。
ぬいぐるみとかもある。
「ぬいぐるみなぁ…。ゲーセンではよく取ったな。
そう言えば、流石にフィギュア的なものは見かけないな。」
あとは活版印刷技術も確立されてないのか、図書館はあっても本屋らしい本屋もなかった。
精々、俺の推しの冒険者の絵を描きました!的なイラスト屋がいたくらいだ。
このデパート的なところでも「あの有名絵師が描いた冒険者〇〇の絵」みたいなのはあった。
ちなみにいわゆる薄い本はなかった。
ちょっぴり期待したけど…。
あとはおもちゃ屋的なものも見かけた。
と言っても昭和初期のようなブリキや木で出来たおもちゃがメインだが…。
その途中できらびやかなお店を見かける。
ドールショップだ。
陶器製の可愛らしく愛らしい球体関節人形が所狭しと並んでいる。
よくあるフランス人形や日本人形のような気持ち悪い感じじゃなく、それはもう天使のような可愛さのドール達が並んでいた。
「美しいなぁ…。」
俺はこう言う人の手が生み出した芸術が好きなのだ。
料理然り手作り家具然りハンドメイド然り…。
同じものは生まれないと言うところが実に良い。
たとえ同じ作り方でも料理だって多少は味が毎日変わるのだ。
「ふふ。お手にとって見て見ますか?この子達からもあなたに抱き上げられて見たいと言う気持ちを感じます。」
これまたお美しい、金髪にホワイトロリータな服をお召しになったドールショップの店員さんが声をかけてくる。
「初めてお見かけになるお客様ですね。
純粋な黒髪…。さぞ高貴なお方なのでしょうか…。
それに変わったお召し物…。もしかしてあなたが、今街で噂になってる…。」
そうそうそう。
「勇者様ですね?」
そっちじゃない。
「えっと、大賢者の方です…。勇者様に倒された方ですね。」
「これは失礼を…。あなたの噂も聞き及んでおります。
あぁ、だからこの子達もあなたに抱かれたいのですね。
モノを創り出す手は彼女達に取っては親のような温もりですから。」
どうぞと比較的小さなドールを差し出され、俺はその子を両手で優しく受け取る。
ちっちゃ…きゃわわ…癒されるぅ…。
とほっこりしていると…
「人間相手は良いが人形相手の浮気は許さぬぞ主様よ!!」
カバンからおいなりちゃん(ちびさいずのまま)が飛び出してきた。
「!? ドールがしゃべってる…。
これが…賢者様の魔法…。私たちドールマスターの夢である自我を持つドールをも生み出せるなんて…!」
店員さんが感動に打ち震えている…。
「あー…えーっと…。うちの子も抱いてみます?」
「是非に!!」
店員さんは空中浮遊していたおいなりちゃんを優しく抱きとめてなでなでしていた。
「ふぉぉ…ふぉぉおうっ…こやつの手も…たまらぬのぅ…。女神のような優しさを感じる…。」
「うふふっ。嬉しいです。ここにいる子たちは私が生み出した子なんです。
どうやら皆も貴女を歓迎しているようですね。」
微笑みながらおいなりちゃんをなでなでする店員さん。
とても嬉しそうに撫でている姿がまた美しい。
「とても良いものを見せて頂きました。」
店員さんがそっと俺の肩においなりちゃんを乗せて来たので、俺もドールを店員さんに返す。
「私はここで、この子達を迎えてくれるステキな方を探しているのです。
貴方はその資格を十分に持っていると言えるでしょう。
お迎えしたくなったらいつでも来てくださいね。」
俺がお迎えに来たのではなく、見に来ただけであることはよくわかっていたようだ。
俺はドールショップを後にし、またあてもなくデパートの中を歩き回る。
特に何か目的があるわけでもなくただ見て回りたい好奇心が俺の足を動かす。
しかし、空想の中の異世界の文明ってのはなんでこうも中世的なのが多いのか…。
普通なら異世界でも機械的なものを使った文明があっても良いところだろう。
そんなふうに思っていたが、この世界は魔力をうまく使った俺の世界にはない道具もいくつかはあった。
きっと俺の世界にいたような文明を生み出す知恵のあるものが現れなかっただけなんだろう。
そこにさえ気付くものが現れたら世界の文明は大きく発展する。
俺の知識を使えば、この世界にはきっとたくさんの文明の変化が起こってしまうだろう…。
蒸気機関車が電車に変わり、エネルギー資源が変化し、炭鉱夫が仕事をなくすような事態だって起こり得るだろう。
よく、フィクションの世界の異世界人は世界を変化させるような規模のとんでも無い事をやらかしている。
よくよく思うけど、これって許されるのか…?
日本にゃ郷に入っては郷に従えという言葉がある。
その世界に存在するものを、存在するルールで使うのが正しい気がするんだけどなぁ…。
まぁこの世界にないもの持ち込んで無双してた俺が言えたもんじゃないけど。
ふぅ…。やっぱ1人の方が色々と考え事するには捗るな…。
しかし、こうやって少しづつこの世界についても知っていかないとだな…。
やっぱ外を歩くのは大事だ。
「おやぁ?おやおやおやおや!そこを行くは賢ちゃんじゃないか!さっきぶりだな!」
「すみません。どちら様でしょうか。多分人違いです。近付かないでくださぁあああ!」
近づくなと言い切る前に一瞬で間合いを詰められた。
瞬歩の無駄使いだぞお前!
「なんだ急に他人行儀になって!さっきお互いにお互いを気持ちよく叩き合った仲じゃないか!」
「その言い回しやめろ!あと賢ちゃん言うな!」
「あはは!では賢者と呼ぼう!」
「むしろさっきまでそう呼んでたよね…?
んで?勇者様はここでなにを?」
おお!っと何か思い出したように手をポンっと叩く勇者ちゃん。
「うむ!下着と普段着を見にきたんだ!
私も清い乙女だからな!服くらい可愛いものを着ないといけないと君と戦って思ったんだ!」
「俺がなぜきっかけになったかは触れたくないけどいい考えだと思うようん。」
「なので、君好みの私の下着と普段着を選んでくれ!」
「絶対やだ!」
俺は脱兎のごとくその場から逃げようとするが、すぐに瞬歩で回り込まれた。
「私には服を一緒に選んでくれる友も異性もいないのでな!君は適任だ!選んでくれ!」
「拒否権って知ってる?」
「知らん!」
ですよねぇ…。
俺は諦めて買い物に付き合うことにした。
だが、女の子の服選びか…。
この子、アホだけど見た目は完璧だし、その辺は楽しめそうだ…。
うーむ…しかし服か…。
スカートとかよりパンツルックな服装が似合いそうだけど、そもそも俺も自分の服は店員さん任せな方だ。
着こなしを教えるようなセンスはない。
「おお!これが都会の服屋か!私の村とはレベルが違うぞ!」
高級デパートに田舎者を連れてきたときみたいな反応だ…。
「すみません…。とりあえずこちらの方に服を見繕ってやってください…。」
俺は店員さんに彼女を任せた隙を見て逃走を図る。
しかしまわりこまれてしまった!
「一緒に見てくれ!なんなら君の前で脱いでも良いぞ!」
「それやったら縁切るぞ…。」
「それは困るな!仕方ない!試着室で着替えよう!」
お前、どこで脱ぐ気だったんだ!?
服屋の店員さんも若干引いている…。
そして俺の前で勇者ちゃんのファッションショーが始まる。
店員さんも何着てもお似合いです~♪とお決まりのセリフでおだてている。
が、本当に勇者ちゃんは何着てもよく似合う。
可愛らしくてかっこいいのだ。
俺的には和服とか着せてみたくなるな…。
「なぁ大賢者!どの服が一番君の好みだ!?
私は君の好みの服が着たい!!」
そんなもの、この世界にはないよ。
といっていじめてやっても良かったが、そこはぐっとこらえて、足首がチラ見えするベージュのチノパンのようなものとカーキのワイシャツを選択する。
引き締まったお腹もチラ見えして実に可愛い。
それにサンダルタイプのブーツをセレクト。
ドチャクソ可愛いくてかっこいい。
「ふむ…!これが君の好みなんだな!どうだ?私は君好みの女になったか!?」
「うぅん…。からかおうかとおもってたけどこれは無理だわ…。綺麗すぎるしカッコいい。」
「ではまた私の勝ちだな!」
何の勝負だ。
「では次は私の下着を選んでくれ!」
「それだけは勘弁して…!」
店員さんに助けを請う視線を向ける。
「よくお似合いのカップルですねー。
いいじゃないですかー下着くらい選んであげてもー。
いっそノーパンでもカッコ良さそうですしその人ー。」
店員さんの顔がチベットスナギツネになっている。
そして俺たちはカップルじゃない。
「わかったぞ!ノーパンだな!店員さんアドバイスありがとう!」
空気が固まったのがわかった。
道行く人の足が止まり俺に視線が注がれているのもわかった。
だがこいつがあっさりとノーパン至上主義に目覚めたのはわからなかった。
「それはダメだ!下着も見に行くぞ!!」
視線を店員に向ける。
(計画通り…)と言う言葉が似合いそうなニヤリ…顔をしている。
お、お前!はめやがったなぁああ!
そして俺は渋々と下着選びに付き合わされる羽目になるのであった。
自分の下着ですらろくに選んだことないのに、そんな俺に女の下着をえらべってぇのかよ。
そしてこの子は冗談が通じないタイプだ。
穴あき下着とかいいんじゃない?とか言ったら遠慮なく選びかねないレベルで…。
はぁ…。次回へ続く話が下着選びってどんな引きだよ…。
と思いつつ俺は尺不足を恨むことにした。
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